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空中庭園での凶事と画策する後宮妃

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空中庭園くうちゅうていえんでの凶事きょうじ

しくも、皇妃こうひロゼッタが毒を盛られるも、賢明けんめい皇妃こうひ自身により、さいわいにしてことなきを得ている。

皇妃こうひロゼッタを毒殺によりき者にしようと画策かくさくしたのは、同じ後宮妃こうきゅひの一人。

いち後宮妃こうきゅうひ」と呼ばれる者。

後宮を訪れる皇帝から“伽姫とぎひめ”としてを「後宮の三妃さんひ」と呼び、今回はその内の一人が画策かくさく

皇帝の寵愛ちょうあいが全ての後宮妃こうきゅうひには、夜伽よとぎに召され、恩寵おんちょうをその身に受けてこそ。

身に受ける寵愛ちょうあいの程で、後宮内での優位性を保つ後宮妃こうきゅうひらは、夜伽よとぎに召されれば、その謝意しゃいとして金品さえも授与される為に、やはり優位に立ちたいのは当然。

オルラ王女が皇妃こうひとして迎え入れられる以前は、日々後宮へと訪れていた皇帝リカルド。それが今やなしのつぶて。誰も夜伽よとぎに召さない。

もはや捨て置かれている後宮妃こうきゅうひら。

数多あまたいる後宮妃こうきゅうひらには、皇帝のちょうを独り占めし、さらには御子おこまでもうけた皇妃こうひロゼッタを歓迎するどころか、ただの苛立いらだたしい存在でしかない。

おなご悋気りんきには果てがない。

ーまさに、それが凶行きょうこうに及ぶ一因いちいん


今時分いまじぶんは、皇宮こうぐうの〈皇帝の寝所〉。

空中庭園くうちゅうていえんでの残酷ざんこくなやり取りを見せない為に、オルラ王女を故意こいに眠らせた皇帝リカルド。

いまだ深い眠りに落ちるオルラ王女のかたわらへと腰をえ、その美しい黄金の髪を一房ひとふぃさ手に取り、そっと口付けを落とす。

「ロゼッタ、おまえが無事で良かった……」

そして、そのやわらかなほほへも口付ける。

皇帝リカルドの好むオルラ王女の黄金の髪は、一度もはさみを入れることなく、長く長く伸ばされている。

美しい黄金の髪を短く切ることをいとう皇帝リカルドは、オルラ王女の髪の一本でさえいとおしいむ。

実際、とぎで乱れるオルラ王女の黄金の髪が、汗ばむ肌にまとわりつくさまは、なまめかしくも美しい。

美しい皇帝の薔薇ばらロゼッタをいろどる黄金の髪は、もはやそれ自体が黄金の装飾そうしょく

「美しいロゼッタ……おまえの全てはのものー……忘れるな」

皇帝リカルドは、寝台に沈むオルラ王女へと静かな声音こわねで告げる。

「おまえに害を成そうとした羽虫はむしを、ぐにでも片付けて来るー……今しばらくは、ゆっくりと眠れー……」

足音一つなく、寝台から立ち上がる皇帝リカルド。

側に控える腹心ふくしんルイスを伴い、いち後宮妃こうきゅひがすでにとらわれている〈罪人牢ざいにんろう〉へと向かう。
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