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三章/夏歌えど、冬踊らず
楽園じゃない場所・一
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「技能講習?」
徹の家に帰ってきてシャワーを浴びて出てきた当夜が、肩にかけたタオルで顔を拭う。間の抜けた声に、徹が何事かと体ごとそちらに向く。
耳に当て、肩で抑えて固定させたスマートフォンから鏡子のそうなのよ、という申し訳なさそうな声が返ってきた。
「新しく入った子が上手く操縦できないみたいで。鉄神はその子にしか情報の開示も操作もさせないから、私たちも様子を見ながら探り探り教えるしかないのよ」
「へ~っ、面白そう」
目をキラキラと輝かせる当夜に、鏡子の小さな笑い声が届く。
「参加してみる?」
うんっと言う前に、横から伸びてきた手がスマートフォンを取り上げる。
「お断りします」
当夜のスマートフォンを手に入れた徹がそう淡々と返すと、当夜はおいっと叫ぶ。
「なんで徹が勝手に決めるんだよ!?」
「この間のことで痛感したからな。お前を放置するのは良くない。戦わせるのはもっと良くない」
アクガミならまだしも、人を怪我させるようなことはさせないし、これは躾の一環だという言葉に、鏡子が躾……と驚愕したような、引いたような声を出した。
「そういうわけで、」
「俺がやりたいことは俺が決める。徹にそんな権限ない」
強い力で奪い返されたスマートフォンに、徹は目を丸くさせる。
「鏡子ちゃん、参加するよ」
「ありがとう。当夜くんならそう言ってくれると思ったの」
嬉しいわという声に徹が不平を申し立てる前に、鏡子はところで、と話を切り出した。
「そろそろ学期末のテストだけど、二人は大丈夫?」
難しいようなら出動はなしにするわという提案に、当夜は全然へーきっと明るい調子で首を振る。
「俺、勉強したことないから」
そう率直に言うと、隣の徹が苦虫を噛んだような顔になる。徹も徹で頭は良いはずなのだが、”ちゃんとする”ことで結果を出してきた努力型の人間であるため、当夜までとはいかない。
そもそも部活動が盛んではあるが、美里ヶ原高校は成績重視の進学校なのだ。一年生の頃からこんなことにかまけて成績を落とすわけにはいかなかった。
「とにかく、学業優先よ」
徹くんは呼ばないことにするわ、と断言された徹ははいと頷いた。
徹の家に帰ってきてシャワーを浴びて出てきた当夜が、肩にかけたタオルで顔を拭う。間の抜けた声に、徹が何事かと体ごとそちらに向く。
耳に当て、肩で抑えて固定させたスマートフォンから鏡子のそうなのよ、という申し訳なさそうな声が返ってきた。
「新しく入った子が上手く操縦できないみたいで。鉄神はその子にしか情報の開示も操作もさせないから、私たちも様子を見ながら探り探り教えるしかないのよ」
「へ~っ、面白そう」
目をキラキラと輝かせる当夜に、鏡子の小さな笑い声が届く。
「参加してみる?」
うんっと言う前に、横から伸びてきた手がスマートフォンを取り上げる。
「お断りします」
当夜のスマートフォンを手に入れた徹がそう淡々と返すと、当夜はおいっと叫ぶ。
「なんで徹が勝手に決めるんだよ!?」
「この間のことで痛感したからな。お前を放置するのは良くない。戦わせるのはもっと良くない」
アクガミならまだしも、人を怪我させるようなことはさせないし、これは躾の一環だという言葉に、鏡子が躾……と驚愕したような、引いたような声を出した。
「そういうわけで、」
「俺がやりたいことは俺が決める。徹にそんな権限ない」
強い力で奪い返されたスマートフォンに、徹は目を丸くさせる。
「鏡子ちゃん、参加するよ」
「ありがとう。当夜くんならそう言ってくれると思ったの」
嬉しいわという声に徹が不平を申し立てる前に、鏡子はところで、と話を切り出した。
「そろそろ学期末のテストだけど、二人は大丈夫?」
難しいようなら出動はなしにするわという提案に、当夜は全然へーきっと明るい調子で首を振る。
「俺、勉強したことないから」
そう率直に言うと、隣の徹が苦虫を噛んだような顔になる。徹も徹で頭は良いはずなのだが、”ちゃんとする”ことで結果を出してきた努力型の人間であるため、当夜までとはいかない。
そもそも部活動が盛んではあるが、美里ヶ原高校は成績重視の進学校なのだ。一年生の頃からこんなことにかまけて成績を落とすわけにはいかなかった。
「とにかく、学業優先よ」
徹くんは呼ばないことにするわ、と断言された徹ははいと頷いた。
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