56 / 124
二章/少年よ、明日に向かって走れ!!
地下二階、プール・一
しおりを挟む
「二人共こんにちは! 来るのを待っていたわ」
手元の機械を操作していた鏡子は顔を上げて、二人を視界に入れると笑顔になった。
「あのっ、制服ありがとうございました!」
当夜が頭を下げると、鏡子は手をあわあわと上下に動かして、大丈夫よと言う。
「あなたたち、パイロットのサポートをするのが私たちの仕事なんだから。気にしないで」
ねっと朗らかに微笑みかけられた当夜は、一安心してはいっと大きな声を出した。
「折角来てくれたんだし、当夜くんは今日の内に身体測定と神装のサイズを測りましょう。徹くんはその間どうする?」
「ヤタドゥーエの調節と、ここの仕事を手伝います」
「いつもありがとう。それじゃあ当夜くんはこれを持って、所定の場所へと向かってくれる?」
全て画面に指示が出るからと言って手渡された薄いタブレットを受け取った当夜ははい、と首を縦に振る。
「徹くんも、よろしくね」
「はい。それでは失礼します」
一礼してから格納庫へと続いている階段の方へ歩いていった徹を見送ってから、当夜はタブレットのボタンを押して表示を見る。現在地を表す赤い印と、目的地である青い印を見比べたが、この施設に詳しくないのでイマイチどの場所か見当がつかない。右上に目的地が書いてあったので、それに目を向けるが、
「地下二階……プール?」
さらに分からなくなっただけであった。
行ってみれば分かるだろうと考えた当夜は、指令室の階段を上がり、脇にある二部屋の内、奥の方へと入る。ロッカールームらしき部屋の左奥にあるエレベーターに乗り、地下二回のボタンを押した。
引き上げる音を聞きながら、当夜は息をふうと吐いて壁に肩をもたれかけさせる。慣れていない場所は当夜の精神を擦りきらせていた。
この白に囲まれた、花澄と暮らす病棟に似た施設に、当夜は目を細める。嫌という程見慣れた色は、当夜にとって好ましいものであり、苦手なものであった。
チンッと機械音が鳴ってエレベーターの扉が開いていく。当夜は扉が閉まらない内に出、首を横に傾けた。
「……ほんとに、なんでプール?」
不思議に思いつつも、タブレットに示された通りにプールサイドを横切って更衣室へと入る。その後の指示は表示されなかったため、当夜はどこかに水着が置いてあるのかもしれないと予想して、辺りを見渡した。目に見える所にはないと知り、次はロッカーを片っ端から開けていくが、そこにもない。
当夜は腕を組んで目を閉じ、うーんと唸り声を出す。目を開き、
「ない!」
と言ってみるが、ないものはない。ここに来た意味を当夜は当てられなかった。考えるのにも飽きてきて、当夜はロッカーを背にして座り込む。ひんやりとした感触が心地いい。ほっと息をつき、目を閉じる。
手元の機械を操作していた鏡子は顔を上げて、二人を視界に入れると笑顔になった。
「あのっ、制服ありがとうございました!」
当夜が頭を下げると、鏡子は手をあわあわと上下に動かして、大丈夫よと言う。
「あなたたち、パイロットのサポートをするのが私たちの仕事なんだから。気にしないで」
ねっと朗らかに微笑みかけられた当夜は、一安心してはいっと大きな声を出した。
「折角来てくれたんだし、当夜くんは今日の内に身体測定と神装のサイズを測りましょう。徹くんはその間どうする?」
「ヤタドゥーエの調節と、ここの仕事を手伝います」
「いつもありがとう。それじゃあ当夜くんはこれを持って、所定の場所へと向かってくれる?」
全て画面に指示が出るからと言って手渡された薄いタブレットを受け取った当夜ははい、と首を縦に振る。
「徹くんも、よろしくね」
「はい。それでは失礼します」
一礼してから格納庫へと続いている階段の方へ歩いていった徹を見送ってから、当夜はタブレットのボタンを押して表示を見る。現在地を表す赤い印と、目的地である青い印を見比べたが、この施設に詳しくないのでイマイチどの場所か見当がつかない。右上に目的地が書いてあったので、それに目を向けるが、
「地下二階……プール?」
さらに分からなくなっただけであった。
行ってみれば分かるだろうと考えた当夜は、指令室の階段を上がり、脇にある二部屋の内、奥の方へと入る。ロッカールームらしき部屋の左奥にあるエレベーターに乗り、地下二回のボタンを押した。
引き上げる音を聞きながら、当夜は息をふうと吐いて壁に肩をもたれかけさせる。慣れていない場所は当夜の精神を擦りきらせていた。
この白に囲まれた、花澄と暮らす病棟に似た施設に、当夜は目を細める。嫌という程見慣れた色は、当夜にとって好ましいものであり、苦手なものであった。
チンッと機械音が鳴ってエレベーターの扉が開いていく。当夜は扉が閉まらない内に出、首を横に傾けた。
「……ほんとに、なんでプール?」
不思議に思いつつも、タブレットに示された通りにプールサイドを横切って更衣室へと入る。その後の指示は表示されなかったため、当夜はどこかに水着が置いてあるのかもしれないと予想して、辺りを見渡した。目に見える所にはないと知り、次はロッカーを片っ端から開けていくが、そこにもない。
当夜は腕を組んで目を閉じ、うーんと唸り声を出す。目を開き、
「ない!」
と言ってみるが、ないものはない。ここに来た意味を当夜は当てられなかった。考えるのにも飽きてきて、当夜はロッカーを背にして座り込む。ひんやりとした感触が心地いい。ほっと息をつき、目を閉じる。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
君の恋人
risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。
伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。
もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。
不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。
幸せのカタチ
杏西モジコ
BL
幼馴染の須藤祥太に想いを寄せていた唐木幸介。ある日、祥太に呼び出されると結婚の報告をされ、その長年の想いは告げる前に玉砕する。ショックのあまり、その足でやけ酒に溺れた幸介が翌朝目覚めると、そこは見知らぬ青年、福島律也の自宅だった……。
拗れた片想いになかなか決着をつけられないサラリーマンが、新しい幸せに向かうお話。
ツクチホ短編まとめ
はるば草花
BL
色々な短編。現代やファンタジー。
○保護動物は保護対象。
学園物・ほのぼの。
自分でレビュー。
キャラを愛でたい。SSにあるものと同じ物語。
○会長を中心に世界が回る。
学園物・美人副会長。
自分でレビュー。
キャラ設定がよい。内容は設定を上手くいかせているかは微妙だけど楽しめた。主人公が誰かわからなくなってる。1人暴走したせい。
○隠し事。
学園ファンタジー・獣の力。
自分でレビュー。
短いし、想像通りな話だけど、いいよねこの展開。
○君の為に。
ファンタジー・美形×平凡。
自分でレビュー。
え。そういう感じ?とちょっとだけ意外。
○統べる王と声なき人。
ファンタジー・執着攻め。
自分でレビュー。
文章力がなくて雰囲気の表現が微妙だけど、展開は好き。
○落ちた。
異世界転移ファンタジー・常識が通用しない場所に転移・美形×平凡と美形×美形。
自分でレビュー。
どのキャラも個性があって、世界の設定も面白い。
○野ペンギンと恋。
ほのぼの・美形×平凡・現代学園。
○その後に。
学園ファンタジー。危険な状況になってしまった生徒会長の話。風紀委員長×生徒会長。
.
学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――
天海みつき
BL
族の総長と副総長の恋の話。
アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。
その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。
「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」
学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。
族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。
何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる