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一章/炎の巨神、現る
コックピットで唇を・三
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「だけど、徹……」
「濡れた赤い目を、僕は忘れていない」
徹は当夜の薄く開いている唇を指でなぞる。近づいてくる徹の顔に当夜は目を丸くし、口をぎゅっと引き絞った。
徹の唇が触れてくる。さらりとした感触で、不思議と不快感はない。
「んんっ……」
べろっと唇を舌で舐められた当夜は目を強く閉じ、いやいやと首を横に振った。徹は一度口を離したが、今度は当夜の顎を掴む。
「あっ、なに?」
「口を開くんだ」
唇に親指を強く当てられた当夜は困惑しつつも、徹の言う通りに口を開いた。徹はさらに輸血パックを横に置き、身体を反転して向かい合って座るようにと促す。当夜は徹に腰を抱かれつつも体勢を変えた。
「腕は上げられるか?」
「え? う、うん」
確認をした徹は当夜の腕を上げさせて、自分の首に回させる。
「なあ、なんか……変じゃないか?」
「なにがだ?」
こんな風に向かい合って膝の上に座るのは恥ずかしいと言えない当夜は、口を噛んで下を向いた。
「こら、下を向くな。キスができない」
だが、徹はそれを許さず、当夜の両頬に手を当てて上を向かせる。当夜の唇にかぶりつくようにキスをしかける。開けさせた当夜の口に舌をもぐりこませ、逃げようとする舌を擦り合わせた。歯列をなぞり、上顎を舐めると、当夜はビクビクと震える。胸元に手を滑らせ、服の上から胸の尖りを摘まんだ。
「ぁ、徹……ダメ」
キスの間に当夜が言うと、徹は服の裾から手を差し込んで直に触れる。舌を強く擦り合わられた当夜はこく、と喉を鳴らした。はあ、と息を丸く吐き出して二人の口が離れた。飲み込み切れなかった唾液が当夜の顎からつうっと流れていく。徹は当夜の赤く塗れた口や顎を指で拭った。
「と、とお」
「好きだ」
太ももに当てていた手をするすると上げていく徹の手を、当夜が手を握って止める。
「好きだから、お前を危険な目に合わせたくないんだ」
「そんなの、俺だってそうだ」
「お前と僕とでは、意味が違う」
「違わない」
徹の胸に縋りつくように訴える当夜の腰を掴んで持ち上げ、足の狭間を膝で擦りつけた。あう! と大きな声を出した当夜はさらに顔を赤くさせ、口で手を塞ぐ。徹は腰から尻にと手を下して、揉んだ。
「小さくて、柔らかいな」
「あっ、お前さっきの聞いて……!?」
「聞いていたから助けたんだろう」
唇を噛んで恥ずかしがる当夜の姿に、徹は唾を飲み込んだ。
「僕は、お前とまぐわりたい」
「まぐ……っ?」
真面目そうな顔で徹が伝えると、当夜はぽかんと徹を見上げた。
「あ、うん……いいよ」
「は?」
「うん、だから今はダメだけど、いいって」
徹が当夜を凝視する。やはり、どこか無防備な姿をしている。
「と、当」
「聞こえますー? とーおーるーくーんっ!」
ヤタドゥーエの通信回線を勝手に繋いで話しかけてきたのは、雅臣だ。
「映像繋いでないんでえ、お話してもらってもいいですよねえ」
徹は深くため息を吐いて、天井にある回線ボタンを押す。
「なんです、雅臣さん」
「わあ不機嫌な声! ごめんねー邪魔しちゃって」
「いえ。何の用ですか」
「もう十時になるから、二人共帰ろう? 僕が車出すよー」
二人は顔を見合わせると、当夜が頷いた。
「分かりました、すぐに下に行きます」
「はーい、あっじゃあ玄関で待ってるよー」
回線が向こうから切れたため、徹はヤタドゥーエのハッチを開ける。
「帰ろう、当夜」
うんと返す当夜の腹に輸血パックをのせ、横抱きにする。
「徹、俺歩けるぞ」
「僕がこうしたいんだ」
そう言われた当夜は大人しく徹に身を任せた。スタッフが口を開き、呆然と見守る中、徹は涼しげな顔で歩いていく。
「鏡子さんすみません、そろそろ帰ります」
「あら、徹くん……」
部下に指示を与えつつ己の仕事をこなしていた鏡子の所に顔を出すと、彼女もまた驚愕した。
「と、当夜くん。今日はゆっくり休んでね」
「はい、ありがとうございます」
お先に失礼しますと頭を下げた徹と一緒に当夜も下げる。徹は手を振る鏡子にもう一度頭を下げてホールを下りていき、廊下に出た。クネクネと曲がりくねり、何度も角を曲がる複雑な道順を歩いていき、玄関を出る。
「待ってたよー、二人共!」
玄関に黒いシャープなラインの車を停め、両手を振っている雅臣の所まで歩いていくと、徹は彼に当夜を押し付けた。
「え、なに。どうしたの?」
雅臣は目を白黒させながらも当夜を受けとり、徹を見る。
「僕は電車で帰りますので、当夜をお願いします」
「えっ、ちゃんと二人共乗れるよ?」
「いえ、いいんです。……当夜」
腑に落ちない顔をしている当夜に徹は目線を合わせた。
「俺も歩いて帰る」
「それはダメだ」
ぶうっと頬を膨らませる当夜に徹は目を和ませて笑う。
「お前とはしばらく話さない」
「……は?」
「お前が戦わないと決めるまで、僕はお前とは関わらない」
そう言った徹は雅臣に頭を下げて挨拶をしてから、二人の横を通って階段を下りていった。
「なんで?」
「え、君ら仲直りできてなかったの?」
「分かんない……」
当夜は雅臣の腕に抱えられたまま、呟いた。
「濡れた赤い目を、僕は忘れていない」
徹は当夜の薄く開いている唇を指でなぞる。近づいてくる徹の顔に当夜は目を丸くし、口をぎゅっと引き絞った。
徹の唇が触れてくる。さらりとした感触で、不思議と不快感はない。
「んんっ……」
べろっと唇を舌で舐められた当夜は目を強く閉じ、いやいやと首を横に振った。徹は一度口を離したが、今度は当夜の顎を掴む。
「あっ、なに?」
「口を開くんだ」
唇に親指を強く当てられた当夜は困惑しつつも、徹の言う通りに口を開いた。徹はさらに輸血パックを横に置き、身体を反転して向かい合って座るようにと促す。当夜は徹に腰を抱かれつつも体勢を変えた。
「腕は上げられるか?」
「え? う、うん」
確認をした徹は当夜の腕を上げさせて、自分の首に回させる。
「なあ、なんか……変じゃないか?」
「なにがだ?」
こんな風に向かい合って膝の上に座るのは恥ずかしいと言えない当夜は、口を噛んで下を向いた。
「こら、下を向くな。キスができない」
だが、徹はそれを許さず、当夜の両頬に手を当てて上を向かせる。当夜の唇にかぶりつくようにキスをしかける。開けさせた当夜の口に舌をもぐりこませ、逃げようとする舌を擦り合わせた。歯列をなぞり、上顎を舐めると、当夜はビクビクと震える。胸元に手を滑らせ、服の上から胸の尖りを摘まんだ。
「ぁ、徹……ダメ」
キスの間に当夜が言うと、徹は服の裾から手を差し込んで直に触れる。舌を強く擦り合わられた当夜はこく、と喉を鳴らした。はあ、と息を丸く吐き出して二人の口が離れた。飲み込み切れなかった唾液が当夜の顎からつうっと流れていく。徹は当夜の赤く塗れた口や顎を指で拭った。
「と、とお」
「好きだ」
太ももに当てていた手をするすると上げていく徹の手を、当夜が手を握って止める。
「好きだから、お前を危険な目に合わせたくないんだ」
「そんなの、俺だってそうだ」
「お前と僕とでは、意味が違う」
「違わない」
徹の胸に縋りつくように訴える当夜の腰を掴んで持ち上げ、足の狭間を膝で擦りつけた。あう! と大きな声を出した当夜はさらに顔を赤くさせ、口で手を塞ぐ。徹は腰から尻にと手を下して、揉んだ。
「小さくて、柔らかいな」
「あっ、お前さっきの聞いて……!?」
「聞いていたから助けたんだろう」
唇を噛んで恥ずかしがる当夜の姿に、徹は唾を飲み込んだ。
「僕は、お前とまぐわりたい」
「まぐ……っ?」
真面目そうな顔で徹が伝えると、当夜はぽかんと徹を見上げた。
「あ、うん……いいよ」
「は?」
「うん、だから今はダメだけど、いいって」
徹が当夜を凝視する。やはり、どこか無防備な姿をしている。
「と、当」
「聞こえますー? とーおーるーくーんっ!」
ヤタドゥーエの通信回線を勝手に繋いで話しかけてきたのは、雅臣だ。
「映像繋いでないんでえ、お話してもらってもいいですよねえ」
徹は深くため息を吐いて、天井にある回線ボタンを押す。
「なんです、雅臣さん」
「わあ不機嫌な声! ごめんねー邪魔しちゃって」
「いえ。何の用ですか」
「もう十時になるから、二人共帰ろう? 僕が車出すよー」
二人は顔を見合わせると、当夜が頷いた。
「分かりました、すぐに下に行きます」
「はーい、あっじゃあ玄関で待ってるよー」
回線が向こうから切れたため、徹はヤタドゥーエのハッチを開ける。
「帰ろう、当夜」
うんと返す当夜の腹に輸血パックをのせ、横抱きにする。
「徹、俺歩けるぞ」
「僕がこうしたいんだ」
そう言われた当夜は大人しく徹に身を任せた。スタッフが口を開き、呆然と見守る中、徹は涼しげな顔で歩いていく。
「鏡子さんすみません、そろそろ帰ります」
「あら、徹くん……」
部下に指示を与えつつ己の仕事をこなしていた鏡子の所に顔を出すと、彼女もまた驚愕した。
「と、当夜くん。今日はゆっくり休んでね」
「はい、ありがとうございます」
お先に失礼しますと頭を下げた徹と一緒に当夜も下げる。徹は手を振る鏡子にもう一度頭を下げてホールを下りていき、廊下に出た。クネクネと曲がりくねり、何度も角を曲がる複雑な道順を歩いていき、玄関を出る。
「待ってたよー、二人共!」
玄関に黒いシャープなラインの車を停め、両手を振っている雅臣の所まで歩いていくと、徹は彼に当夜を押し付けた。
「え、なに。どうしたの?」
雅臣は目を白黒させながらも当夜を受けとり、徹を見る。
「僕は電車で帰りますので、当夜をお願いします」
「えっ、ちゃんと二人共乗れるよ?」
「いえ、いいんです。……当夜」
腑に落ちない顔をしている当夜に徹は目線を合わせた。
「俺も歩いて帰る」
「それはダメだ」
ぶうっと頬を膨らませる当夜に徹は目を和ませて笑う。
「お前とはしばらく話さない」
「……は?」
「お前が戦わないと決めるまで、僕はお前とは関わらない」
そう言った徹は雅臣に頭を下げて挨拶をしてから、二人の横を通って階段を下りていった。
「なんで?」
「え、君ら仲直りできてなかったの?」
「分かんない……」
当夜は雅臣の腕に抱えられたまま、呟いた。
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