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一章/炎の巨神、現る
紅蓮の炎から生まれし巨神・二
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「当夜ッ! 当夜あぁー!!」
叫ぶ徹の目に、あのアクガミの姿はもうない。徹はがむしゃらに手足を動かした。
「くそっ、どけ!」
前をふさぐアクガミを片っ端から撃ち、焼き切っていく。モニターに映っている誰かがなにかを叫んでいるらしかったが、徹はそれを全て無視した。
「当夜……っ」
ぽとりと膝の上に涙が一粒落ちる。
「お前をっ、守ると約束したのに。僕は」
涙の滲む目を強く開き、徹は少しでも当夜を見つけようとアクガミを射殺した。
その目に白い羽が見えてくる。光を伴った羽に、徹は目を奪われた。アクガミも羽が落ちてくる空をぼんやりと見上げている。
「なんだ?」
徹がヤタドゥーエを動かし、どこから羽が出てきているのか、敵の攻撃なのかを探る。
「あれか!」
ヤタドゥーエとミカヅチのいる所から五キロ程離れた場所にある高層ビルの近くに、大きな赤黒い鳥がいた。低い鳴き声を出した鳥は羽を閉じる。
『な、なに!? アクガミなの?』
その禍々しさに、四葉が不安そうな声を出した。だが、それを防ぐように右側のモニターに、丸眼鏡をかけた黒髪の男性の姿が映る。
『お二人共、安心してください! 今確認したところ、それはアクガミではありません! 鉄神です! 鉄神が生まれる瞬間ですよッ!』
興奮している男に、四葉がはーっと息を吐いた。
「あんな姿、見たことないよ!」
『私もよ。本当に鉄神なの?』
『ええ! 百パーセント鉄神で間違いありませんね!』
断言された四葉はそれで気が済んだのか、まだぼーっと突っ立ったままのアクガミを倒すために薙刀を振るい、髪のように頭部についている鞭を伸ばして、しこたま叩きつける。
『キョーコちゃんっ! ほらっ、生まれます! 見てますかァッ!?』
『見ていますので、静かにしてあげてください。徹くんたちの妨げになります』
『あっ、そうですねえー。それはすみま』
徹は回線のボタンを切り、レーザーを撃ちながら鳥の方を見た。鳥は羽を広げていて、まるで羽化する卵を守る親鳥のようだ。
「炎に包まれた神が産まれる」
赤い炎が舞い上がり、その中から純白の機体が出てくる。白い翼が夜空に鮮明に浮かび上がった。
白鳥のものと酷似している翼を広げた機体は、ミカヅチと同じく人に近い形をしているが、ミカヅチの頭部が球体なのと比べてこの機体はより人間に近い、輪郭のなだらかな六角形をしている。
関節部の裏と、目の下に入っている切れこみの部分に赤が使われているため、まるで血の涙を流しているかのように見えた。
「武器は――刀だけか?」
身の程の長大な刀を手に持っているのみで、他には武器といえるような装備が見当たらない。
『今日選ばれたばっかの子がアレで戦えるわけがないわ! 二人共急いで!』
再び通信を無理矢理入れてきた鏡子の言葉に徹は頷き、ビームとレーザーを一斉に周囲のアクガミに向かって放つ。
いきなりロボットの中に放り込まれたのに、こんな化け物に接近して刀で切り殺すなどという芸当ができるはずがない。第一、アレよりも連れていかれた当夜の方が問題だ。さっさと捜しにいきたいと徹は思った。
空中に漂うだけだったその機体がふと揺らぐ。
「マズイ! アクガミがッ!」
体を変形して羽を作り出したアクガミが体を上空に持ち上げた。あの機体を狙うつもりなのだろう。徹は機体を上向かせて、レーザーを撃つ。何体か動きの鈍いアクガミは貫けたが、大半のアクガミはレーザーの射程範囲から避けた。
そうしている間にもアクガミは白い機体に近づいていくが、白い機体はまるで迎え撃つかのように体をこちらに向けて刀を正眼に構える。その姿は時代劇で見るような、あまりにも綺麗な型を取っていた。
ヤタドゥーエとミカヅチも追うが、数が多すぎて対処しきれない。
『ちょっと、なんで逃げないの!? 逃げなさいよ!! 逃げなさいってば!』
通信コードが分からず自分の声が届かない相手に四葉が怒鳴る。自分へ向かって叫んでいる人物がいることも知らない白い機体の主は刀を頭上に振り上げ、近寄ってきたアクガミを真っ二つに分断した。次いで寄るアクガミも腹を切りつけ、胸に深々と刺す。
迷いが見て取れない、凛々しいと感嘆の言葉さえ出てしまいそうになる挙動に、徹は息をほうと吐きだした。
『キョーコちゃん、あれ別のトコの応援……?』
『いいえ、そんな話は聞いていないわ』
四葉も呆然とし、観客と化してしまっていたらしい。白い機体は自分の周りにいなくなると、他のアクガミに急接近して瞬く間に切り殺している。
『そんなことより、二人共! もう一段来るわ!』
「今度は何体ですか」
『……二十体よ』
徹はため息を吐いて、操縦桿をぐっと握った。
叫ぶ徹の目に、あのアクガミの姿はもうない。徹はがむしゃらに手足を動かした。
「くそっ、どけ!」
前をふさぐアクガミを片っ端から撃ち、焼き切っていく。モニターに映っている誰かがなにかを叫んでいるらしかったが、徹はそれを全て無視した。
「当夜……っ」
ぽとりと膝の上に涙が一粒落ちる。
「お前をっ、守ると約束したのに。僕は」
涙の滲む目を強く開き、徹は少しでも当夜を見つけようとアクガミを射殺した。
その目に白い羽が見えてくる。光を伴った羽に、徹は目を奪われた。アクガミも羽が落ちてくる空をぼんやりと見上げている。
「なんだ?」
徹がヤタドゥーエを動かし、どこから羽が出てきているのか、敵の攻撃なのかを探る。
「あれか!」
ヤタドゥーエとミカヅチのいる所から五キロ程離れた場所にある高層ビルの近くに、大きな赤黒い鳥がいた。低い鳴き声を出した鳥は羽を閉じる。
『な、なに!? アクガミなの?』
その禍々しさに、四葉が不安そうな声を出した。だが、それを防ぐように右側のモニターに、丸眼鏡をかけた黒髪の男性の姿が映る。
『お二人共、安心してください! 今確認したところ、それはアクガミではありません! 鉄神です! 鉄神が生まれる瞬間ですよッ!』
興奮している男に、四葉がはーっと息を吐いた。
「あんな姿、見たことないよ!」
『私もよ。本当に鉄神なの?』
『ええ! 百パーセント鉄神で間違いありませんね!』
断言された四葉はそれで気が済んだのか、まだぼーっと突っ立ったままのアクガミを倒すために薙刀を振るい、髪のように頭部についている鞭を伸ばして、しこたま叩きつける。
『キョーコちゃんっ! ほらっ、生まれます! 見てますかァッ!?』
『見ていますので、静かにしてあげてください。徹くんたちの妨げになります』
『あっ、そうですねえー。それはすみま』
徹は回線のボタンを切り、レーザーを撃ちながら鳥の方を見た。鳥は羽を広げていて、まるで羽化する卵を守る親鳥のようだ。
「炎に包まれた神が産まれる」
赤い炎が舞い上がり、その中から純白の機体が出てくる。白い翼が夜空に鮮明に浮かび上がった。
白鳥のものと酷似している翼を広げた機体は、ミカヅチと同じく人に近い形をしているが、ミカヅチの頭部が球体なのと比べてこの機体はより人間に近い、輪郭のなだらかな六角形をしている。
関節部の裏と、目の下に入っている切れこみの部分に赤が使われているため、まるで血の涙を流しているかのように見えた。
「武器は――刀だけか?」
身の程の長大な刀を手に持っているのみで、他には武器といえるような装備が見当たらない。
『今日選ばれたばっかの子がアレで戦えるわけがないわ! 二人共急いで!』
再び通信を無理矢理入れてきた鏡子の言葉に徹は頷き、ビームとレーザーを一斉に周囲のアクガミに向かって放つ。
いきなりロボットの中に放り込まれたのに、こんな化け物に接近して刀で切り殺すなどという芸当ができるはずがない。第一、アレよりも連れていかれた当夜の方が問題だ。さっさと捜しにいきたいと徹は思った。
空中に漂うだけだったその機体がふと揺らぐ。
「マズイ! アクガミがッ!」
体を変形して羽を作り出したアクガミが体を上空に持ち上げた。あの機体を狙うつもりなのだろう。徹は機体を上向かせて、レーザーを撃つ。何体か動きの鈍いアクガミは貫けたが、大半のアクガミはレーザーの射程範囲から避けた。
そうしている間にもアクガミは白い機体に近づいていくが、白い機体はまるで迎え撃つかのように体をこちらに向けて刀を正眼に構える。その姿は時代劇で見るような、あまりにも綺麗な型を取っていた。
ヤタドゥーエとミカヅチも追うが、数が多すぎて対処しきれない。
『ちょっと、なんで逃げないの!? 逃げなさいよ!! 逃げなさいってば!』
通信コードが分からず自分の声が届かない相手に四葉が怒鳴る。自分へ向かって叫んでいる人物がいることも知らない白い機体の主は刀を頭上に振り上げ、近寄ってきたアクガミを真っ二つに分断した。次いで寄るアクガミも腹を切りつけ、胸に深々と刺す。
迷いが見て取れない、凛々しいと感嘆の言葉さえ出てしまいそうになる挙動に、徹は息をほうと吐きだした。
『キョーコちゃん、あれ別のトコの応援……?』
『いいえ、そんな話は聞いていないわ』
四葉も呆然とし、観客と化してしまっていたらしい。白い機体は自分の周りにいなくなると、他のアクガミに急接近して瞬く間に切り殺している。
『そんなことより、二人共! もう一段来るわ!』
「今度は何体ですか」
『……二十体よ』
徹はため息を吐いて、操縦桿をぐっと握った。
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