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4. 愛しい弟
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時計の針はもうすぐ18時を指そうとしている。けれど、愛しい弟は一向に姿を見せる気配がない。
どうしたもんかと、腕を組んではため息をつき、俺は天を仰いだ。
「母さん、チャユは?18時までに帰ってくる約束でしょう」
「そうねぇ、遅いわねぇ」
ほほほ…と母さんはのんきに笑いながら、口にご飯を運んでゆく。俺は苛立っていた。
弟によく似たその愛らしい顔立ちを見ると、弟の人の良さはこの人譲りなのだろうな…と。俺は前妻の子で、チャユとは異母兄弟。彼はそれを知らない。
弟は身体が弱かった。それゆえ、父さんの期待は俺に重くのしかかった…そう思い込んでいたが、いつしか気づいてしまった。父さんは母さんにだけは弱いらしい。その顔によく似た弟のことも、思うようにはできなかったのだろう。
まだ幼い弟を突き飛ばしてやろうと、俺はズカズカ近寄っていった。
『に、兄さん…ゆっくり休んだ方がいいよ。顔がお化けみたいになってる…』
弟は俺のただならぬ雰囲気に何か感じ取ったようだ。いつもなら『兄さん!遊んでくれるの?』と慌ただしく駆け寄って来るところを、グッとこらえた様子だった。
それがなんとも痛ましく、胸に堪えた。俺だけが辛い思いをしているわけじゃない…この子と共に手を取り、歩んでいきたい。そう強く願ったのだ。
それからは、弟のことを心の底から可愛いと思うようになった。兄さん兄さんと無邪気に懐いてくれる姿に、心の濁りが浄化され、優しい気持ちになれた。
世界の中心は父さんだったのだ。それが弟に置き換わり、俺は救われた。弟のいない人生なんて考えられない。この子がそばにいてくれたら、他にはもう何もいらない。
そのためには、地元への就職を父さんに許してもらうべく、恥を忍んで土下座をしたというものだ。
「母さんは心配じゃないんですか?チャユときたら、ここのところずっとこんな調子だ」
俺の言葉に対し、「友達と盛り上がっているのかもねぇ……今日は女の子もいるみたい。ひょっとして、ひょっとしたりして。きゃっ、うふふ」と母さんは楽しそうに笑う。俺は愕然とした。
「かっ、母さん、そんな…チャユは俺のことが好きなんですよ。そんなの、ありえませんから」
「はいはい カヌ、あなたが弟のことを溺愛しているのはよーく分かりますけどね、ちょっと度が過ぎますよ?いつもチャユにべったり…今に鬱陶しがられるわよ」
「そんなことありませんよ。チャユだって、兄さん兄さんってすごく嬉しそうだ」
「…カヌ、あなたは人の話を素直に聞けないところがある…カヌのために母さんは言っているのよ」
「分かりました…すみません。じゃあ俺はチャユを迎えに行ってきます。相手の家に迷惑をかけてはいけませんからね」
これ以上何も言われないよう、"迷惑"という言葉を強調して席を立ち上がる。母さんは口を開きかけたが、そのまま送り出してくれた。
その友達とやらの家に行くと、弟はひどく驚いたような顔をしていた。ちらちらと友の顔を見ながら、「ごめん…もう帰る。また今度」といかにも帰りたくなさそうな足取りでこちらまでやって来た。
「チャユ、もう夕飯の時間だからさっさと帰ってこないと駄目だろ」
外を歩きながら、俺はわざとらしく詰め寄った。しきりに距離を取りたがる弟の、小さくて華奢な手を迎えにいく。弟は動揺したようで、「こっ、ここは外だぞっ」と振り払おうとしてきたが、そうはさせない。
「チャユ、明日から楽しい春休みだなぁ」
本当に楽しみだ。楽しい楽しい、春休み。
けれど弟は、「っ…に、兄さん…おっ、オレ…もう、嫌だよ…」と。
「何がだ?兄ちゃんも最後の春休みなんだ。一緒にいられるな」
「オレ…オレ…兄さんとあんなことはもうしたくない…!」
「なんでだよ。すごく気持ち良さそうにしていたじゃないか、この前のチャユは」
そう、この前のこと。弟は完全に腰を抜かしていた。抱き抱えると小刻みに震えていて、抵抗してこない。可愛い……俺の弟はこんなにも可愛い。
ただ、あんまり軽いのでちょっと心配になってしまった。そっとベッドに寝かしつけ、「チャユ、もっと食わなきゃ駄目だぞ」と口付けをする。弟の薄い唇が愛おしい。昔から毎晩、彼が寝付いてからしていたものだ。
身にまとっているトレーナーを脱がせてやると、そこには白く傷ひとつない身体があった。目を奪われ、惚けてしまう。宝石のようだ。
「すごく…綺麗だ」
これから始まる秘め事に、胸が高鳴り悲鳴を上げている。ずっと、ずっとこの時を待ち侘びていたのだ。
弟の可愛らしい乳房に吸い付くと、小さなうめき声が聞こえてきた。ちらりと上を覗けば、「い、いや、それやだ、気持ち悪い」と首を横に振っている。
服の上から弟の慎ましやかなそれを鷲掴み、「お前のことを愛しているんだ。大好きだよ、チャユ」と俺は愛を告げた。
チャユ、俺の可愛いチャユ、お前はこの先ずーっと兄ちゃんと一緒だぞ。俺以外となんて許さないからな。
どうしたもんかと、腕を組んではため息をつき、俺は天を仰いだ。
「母さん、チャユは?18時までに帰ってくる約束でしょう」
「そうねぇ、遅いわねぇ」
ほほほ…と母さんはのんきに笑いながら、口にご飯を運んでゆく。俺は苛立っていた。
弟によく似たその愛らしい顔立ちを見ると、弟の人の良さはこの人譲りなのだろうな…と。俺は前妻の子で、チャユとは異母兄弟。彼はそれを知らない。
弟は身体が弱かった。それゆえ、父さんの期待は俺に重くのしかかった…そう思い込んでいたが、いつしか気づいてしまった。父さんは母さんにだけは弱いらしい。その顔によく似た弟のことも、思うようにはできなかったのだろう。
まだ幼い弟を突き飛ばしてやろうと、俺はズカズカ近寄っていった。
『に、兄さん…ゆっくり休んだ方がいいよ。顔がお化けみたいになってる…』
弟は俺のただならぬ雰囲気に何か感じ取ったようだ。いつもなら『兄さん!遊んでくれるの?』と慌ただしく駆け寄って来るところを、グッとこらえた様子だった。
それがなんとも痛ましく、胸に堪えた。俺だけが辛い思いをしているわけじゃない…この子と共に手を取り、歩んでいきたい。そう強く願ったのだ。
それからは、弟のことを心の底から可愛いと思うようになった。兄さん兄さんと無邪気に懐いてくれる姿に、心の濁りが浄化され、優しい気持ちになれた。
世界の中心は父さんだったのだ。それが弟に置き換わり、俺は救われた。弟のいない人生なんて考えられない。この子がそばにいてくれたら、他にはもう何もいらない。
そのためには、地元への就職を父さんに許してもらうべく、恥を忍んで土下座をしたというものだ。
「母さんは心配じゃないんですか?チャユときたら、ここのところずっとこんな調子だ」
俺の言葉に対し、「友達と盛り上がっているのかもねぇ……今日は女の子もいるみたい。ひょっとして、ひょっとしたりして。きゃっ、うふふ」と母さんは楽しそうに笑う。俺は愕然とした。
「かっ、母さん、そんな…チャユは俺のことが好きなんですよ。そんなの、ありえませんから」
「はいはい カヌ、あなたが弟のことを溺愛しているのはよーく分かりますけどね、ちょっと度が過ぎますよ?いつもチャユにべったり…今に鬱陶しがられるわよ」
「そんなことありませんよ。チャユだって、兄さん兄さんってすごく嬉しそうだ」
「…カヌ、あなたは人の話を素直に聞けないところがある…カヌのために母さんは言っているのよ」
「分かりました…すみません。じゃあ俺はチャユを迎えに行ってきます。相手の家に迷惑をかけてはいけませんからね」
これ以上何も言われないよう、"迷惑"という言葉を強調して席を立ち上がる。母さんは口を開きかけたが、そのまま送り出してくれた。
その友達とやらの家に行くと、弟はひどく驚いたような顔をしていた。ちらちらと友の顔を見ながら、「ごめん…もう帰る。また今度」といかにも帰りたくなさそうな足取りでこちらまでやって来た。
「チャユ、もう夕飯の時間だからさっさと帰ってこないと駄目だろ」
外を歩きながら、俺はわざとらしく詰め寄った。しきりに距離を取りたがる弟の、小さくて華奢な手を迎えにいく。弟は動揺したようで、「こっ、ここは外だぞっ」と振り払おうとしてきたが、そうはさせない。
「チャユ、明日から楽しい春休みだなぁ」
本当に楽しみだ。楽しい楽しい、春休み。
けれど弟は、「っ…に、兄さん…おっ、オレ…もう、嫌だよ…」と。
「何がだ?兄ちゃんも最後の春休みなんだ。一緒にいられるな」
「オレ…オレ…兄さんとあんなことはもうしたくない…!」
「なんでだよ。すごく気持ち良さそうにしていたじゃないか、この前のチャユは」
そう、この前のこと。弟は完全に腰を抜かしていた。抱き抱えると小刻みに震えていて、抵抗してこない。可愛い……俺の弟はこんなにも可愛い。
ただ、あんまり軽いのでちょっと心配になってしまった。そっとベッドに寝かしつけ、「チャユ、もっと食わなきゃ駄目だぞ」と口付けをする。弟の薄い唇が愛おしい。昔から毎晩、彼が寝付いてからしていたものだ。
身にまとっているトレーナーを脱がせてやると、そこには白く傷ひとつない身体があった。目を奪われ、惚けてしまう。宝石のようだ。
「すごく…綺麗だ」
これから始まる秘め事に、胸が高鳴り悲鳴を上げている。ずっと、ずっとこの時を待ち侘びていたのだ。
弟の可愛らしい乳房に吸い付くと、小さなうめき声が聞こえてきた。ちらりと上を覗けば、「い、いや、それやだ、気持ち悪い」と首を横に振っている。
服の上から弟の慎ましやかなそれを鷲掴み、「お前のことを愛しているんだ。大好きだよ、チャユ」と俺は愛を告げた。
チャユ、俺の可愛いチャユ、お前はこの先ずーっと兄ちゃんと一緒だぞ。俺以外となんて許さないからな。
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