龍の番の生まれ変わり

まめだだ

文字の大きさ
上 下
3 / 4

3

しおりを挟む
そしてオレははじめて石英という人について知ることができた。

石英は生まれつき身体が弱かったそうだ。
人の国で出会った二人は、菫青によってすぐさま龍の里に連れてこられ、病を治すため惜しみなく龍の秘薬を与えられた。


「強い薬は劇薬と同義だ。病は治っても、石英の身体は急激な変化に耐えられなかった」


龍の里の環境もよくなかった。
澄みきった空気も、水も、人である石英には影響が強すぎた。菫青はよかれと思って連れてきた龍の里で、結果的に石英の命の時間を早めてしまったのだ。

それでも石英は菫青の元で数十年ほど生きたらしい。人としては充分だと思うが、千年以上の寿命を持つ龍族からすれば、ほんの一瞬だ。


「番を失った龍族の悲しみは深い。菫青も同様だったけれど、彼は力の強い青龍で、なおかつまだ若かった」


実力主義の龍族の中で、菫青はかなり上の立場にいた。長にと望む声も多く、けれどそれには条件として番がいないとならなかった。


「石英を失ったばかりの菫青には酷だが、周囲は新しい番として婚約者を宛がったんだよ」


それが柘榴だった。白い髪に小柄な柘榴は、容姿が石英に近いという理由で選ばれた。


「魂の色は運命に関係ないの?」

「魂の色はただの好みだね。やさしい子が好きとか、かわいい子がタイプとか、そんな程度かな」

「なんだよ。『この色はまさしく石英殿だ~』とか言われたけど意味ないんじゃん」


口を尖らせるとこめかみに唇を寄せられた。くすぐったくて震える。


「龍族の番は運命じゃない、己が深く愛した者だ。失う悲しみは海より深いが、はじまりは様々。番に種族を問わない代わりに龍族同士の見合いも多いよ。ただし、愛さない限り番にはならない」

「そ、うなんだ」

「菫青の魂の色は青。オレは赤。びっくりするほど相性が悪かったな」


そう言って柘榴はくつりと笑う。

菫青と柘榴の仲があまりに進展しないため、慌てた取り巻きたちが石英の魂を呼び寄せたらしい。そして現れたのがオレだった、と。


「どういうつもりだと婚約者に文句を言いに行ったのに、かわいい輝に出会えるなんて僥倖だった。相性は悪かったけど好みは案外近かったようだ」


上機嫌な柘榴に背後から顎を掴まれ、頬にキスされる。指が口の中に入ってきて、そのまま上から覆い被さるように深く口づけられた。


「んん……ぅ」


感じるところを舐め回され、溢れる唾液を飲み下す。なんだかぽかぽかする。
くたりと柘榴の身体に寄りかかると、やさしく頭を撫でられた。


「輝。輝。」

「……うん」


心地よくて瞼が落ちる。安心する。


「オレの番。誰にも渡さない」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうやら俺は悪役令息らしい🤔

osero
BL
俺は第2王子のことが好きで、嫉妬から編入生をいじめている悪役令息らしい。 でもぶっちゃけ俺、第2王子のこと知らないんだよなー

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

前世である母国の召喚に巻き込まれた俺

るい
BL
 国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

運命の人じゃないけど。

加地トモカズ
BL
 αの性を受けた鷹倫(たかみち)は若くして一流企業の取締役に就任し求婚も絶えない美青年で完璧人間。足りないものは人生の伴侶=運命の番であるΩのみ。  しかし鷹倫が惹かれた人は、運命どころかΩでもないβの電気工事士の苳也(とうや)だった。 ※こちらの作品は「男子高校生マツダくんと主夫のツワブキさん」内で腐女子ズが文化祭に出版した同人誌という設定です。

台風の目はどこだ

あこ
BL
とある学園で生徒会会長を務める本多政輝は、数年に一度起きる原因不明の体調不良により入院をする事に。 政輝の恋人が入院先に居座るのもいつものこと。 そんな入院生活中、二人がいない学園では嵐が吹き荒れていた。 ✔︎ いわゆる全寮制王道学園が舞台 ✔︎ 私の見果てぬ夢である『王道脇』を書こうとしたら、こうなりました(2019/05/11に書きました) ✔︎ 風紀委員会委員長×生徒会会長様 ✔︎ 恋人がいないと充電切れする委員長様 ✔︎ 時々原因不明の体調不良で入院する会長様 ✔︎ 会長様を見守るオカン気味な副会長様 ✔︎ アンチくんや他の役員はかけらほども出てきません。 ✔︎ ギャクになるといいなと思って書きました(目標にしましたが、叶いませんでした)

蔑まれ王子と愛され王子

あぎ
BL
蔑まれ王子と愛され王子 蔑まれ王子 顔が醜いからと城の別邸に幽閉されている。 基本的なことは1人でできる。 父と母にここ何年もあっていない 愛され王子 顔が美しく、次の国大使。 全属性を使える。光魔法も抜かりなく使える 兄として弟のために頑張らないと!と頑張っていたが弟がいなくなっていて病んだ 父と母はこの世界でいちばん大嫌い ※pixiv掲載小説※ 自身の掲載小説のため、オリジナルです

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される

田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた! なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。 婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?! 従者×悪役令息

処理中です...