君はぼくの婚約者

まめだだ

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涙味のキスを繰り返して、互いの服を脱がし合い、全身を撫で辿られる。

はじめて見る直孝の大きく膨れた中心にオレは驚き慄いたが、直孝も直孝で、すでにどろどろに泥濘んでいるオレの後ろに触れてぎょっとしていた。


「もうこんななのか」

「ぬ、濡れやすいんだよ、オレ…」


ローションを使わなくても十分なほど滴るそこに自分がオメガであることを自覚する。

発情期でもそうじゃなくても、欲情するとすぐに後ろが濡れた。でもそこに触れるのは自分でも抵抗があって、身体はすでに直孝だけを求めていたのだとわかる。


「直孝、きて」


足の間に直孝を招く。
アルファのそれは直視できないくらい大きくて覚悟を決めるが、苦しくとも案外柔軟に飲み込むことができた。


「は……っ、智史…!」


番の雄が自分の上で喘いでいるだけで陶然とする。

直孝を受け入れた腹を上から撫でてオレはうっとりと目を細めた。番と肌を重ねる安心感がこれほどのものとは。


……直孝はオレにすべておさめたところで早々に極めてしまったのだけれども。


ずっとオレだけを求めて経験がなかったせいだ、と赤い顔であわあわ言い訳をするのがかわいくて、オレも「童貞なら仕方ないよな」とか余計なフォローをして墓穴を掘って。


「…どういうことだ?智史は違うのか?」

「え?あ、いやその、」

「挿入はしていないと言ってただろう」


それが後ろは未使用だが前は使ったことがある、と自白したときの直孝の形相といったら。


「なるほどなるほど。おまえは女が好きだったもんな。オメガ相手なら同じようなものか」

「待…!ちょっ、ちがうから!」

「頼むから言い訳はもっと上手にしてくれ」


ずしりと覆いかぶさって真上から見下ろす直孝が壮絶に笑った。


「智史はまだイケてないもんな。次はもっとがんばるから」

「あ……っ!」


暴発したくせにまだ大きい雄をぐいぐい奥に押し込んでくる。注がれた精液がまたちょうどよく滑りをよくして直孝を勢いづかせる。


「智史の期待に応えないと、な」

「頼んでなっ、あ、あぁっ、あ、あ、んんー!」


それからは体位を変えて何度も何度も、積年の恨みを晴らすように挑まれて、オレはひんひん泣いてよがった。とんでもない一夜だった。



***
ロマンチックには程遠いオレたちの初体験だったが、童貞を卒業した直孝は、元々男前だったがますます男振りが上がった。アルファとしての貫禄もついてきた。

オレもオレで色気がでたと言われるようになった。気恥ずかしくて仕方ないが、それ以上にオメガの衝動が強くなってしまった。
直孝がそばにいないと落ち着かない。他人の匂いをさせていたら不安定になって涙がでてくる。
拒否反応なのか、いままで使っていた抑制剤の副反応もひどく出るようになった。


まだ番になったわけじゃない、ただ直孝と触れ合っただけでこうとは。オレは自分自身に戸惑い動揺したが、直孝はじめ周囲から言わせるとこれが普通らしい。


『番になるアルファがそばにいて、平気でいられるオメガなんていやしないよ』とは主治医の談。

直孝からも『オレが隣にいても智史が平然としてたら、自信なくす…』としょんぼり言われて、きゅんきゅんしてしまった。ついでに後ろが濡れた。


オレはオメガだからこれが普通らしい。

そもそもオメガのオレがこれだけ長い間アルファの直孝から離れていられたことも異常らしい。頻繁にオンラインで顔を合わせていたとはいえ、画面越しでは匂いや体温は伝わらない。

次の発情期にはもっと強い反動が出ると思う、と医者に予告されてしまった。オレは緊張に息をつめたが、直孝は生唾を飲み込んでいた。なんでだ。


何をどうしようとオレはオメガだし、直孝はオレのアルファだ。それが自覚できただけでもよかったのだと思う。
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