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第五話「初めての気持ち」(Side:武藤)
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最近柏木の様子が変だ。
以前から問題行動ばっかりの変な奴ではあったが、あれだけしつこく絡んできていたのに、二週間くらい前から突如ぱったりとそれがなくなったのだ。
昼休みに屋上に行ってもいないし、かと言って学校を休んでいるわけでもないらしい。
――もしかして、避けられているのか?
だとしたら僕は、あいつに何かをしてしまったのだろうか。
もともと友達の少ない僕にとって、あんな風に直接的に親愛の情を向けてくる人間は稀だった。だからこそ、柏木とはこれからもずっと仲良くできればと思っていたのに。
どうしたら、また以前のような関係性に戻れるのだろうか。こんなことを相談できる友達すらいない僕は、情けないことだが、生徒会の後輩女子、新倉に相談してみることにした。
「なるほど……。先輩の話をまとめると、今までめっちゃくちゃ自分に懐いてきてた子に急に距離を置かれて寂しい、ってことですね?」
「いや、僕は決して寂しいわけじゃ……」
「だったら避けられてる理由を直接聞いたらいいのに、それもできてないじゃないですか?」
……流石は演劇部のエースだ。自分の主張はハッキリ言うタイプらしい。だが、新倉の言うことは間違ってはいない。事実、僕はもやもやした気持ちを抱えたまま、なんの行動も起こせていないのだ。
「まぁでも、わかりますよ。先輩の気持ち。ていうか、私からしたらもう答え出てるようなもんですけど」
「どういうことだ? 新倉にはどうすればいいのか、もうわかっているのか?」
「はい。あのね、先輩は、その子に恋してるんですよ。だから思い切って気持ちを伝えるべきです」
「こ、恋!? 僕が、か、柏木に!?」
「あ、柏木さんっていう子なんですね?」
「いや違うなんでもない。忘れてくれ頼む」
ニヤリと笑う新倉に、慌てて取り繕う。
「ふふ、図星なんですね。大丈夫、安心してください。誰にも言いませんから。先輩にはお世話になってるし、私、先輩の恋、応援しますよ!」
そう言って目をキラキラと輝かせた新倉は、その場で僕に柏木へと連絡させると、そのまま当日のシミュレーションをしだした。
――僕が、柏木を、好き? そんなまさか。
だけど、胸の中にこびりつくこのもやもやは、味わったことがない感情だった。
もしもこれを恋心と呼ぶのならば、確かめなければいけない。自分の気持ちも、柏木の気持ちも……。
以前から問題行動ばっかりの変な奴ではあったが、あれだけしつこく絡んできていたのに、二週間くらい前から突如ぱったりとそれがなくなったのだ。
昼休みに屋上に行ってもいないし、かと言って学校を休んでいるわけでもないらしい。
――もしかして、避けられているのか?
だとしたら僕は、あいつに何かをしてしまったのだろうか。
もともと友達の少ない僕にとって、あんな風に直接的に親愛の情を向けてくる人間は稀だった。だからこそ、柏木とはこれからもずっと仲良くできればと思っていたのに。
どうしたら、また以前のような関係性に戻れるのだろうか。こんなことを相談できる友達すらいない僕は、情けないことだが、生徒会の後輩女子、新倉に相談してみることにした。
「なるほど……。先輩の話をまとめると、今までめっちゃくちゃ自分に懐いてきてた子に急に距離を置かれて寂しい、ってことですね?」
「いや、僕は決して寂しいわけじゃ……」
「だったら避けられてる理由を直接聞いたらいいのに、それもできてないじゃないですか?」
……流石は演劇部のエースだ。自分の主張はハッキリ言うタイプらしい。だが、新倉の言うことは間違ってはいない。事実、僕はもやもやした気持ちを抱えたまま、なんの行動も起こせていないのだ。
「まぁでも、わかりますよ。先輩の気持ち。ていうか、私からしたらもう答え出てるようなもんですけど」
「どういうことだ? 新倉にはどうすればいいのか、もうわかっているのか?」
「はい。あのね、先輩は、その子に恋してるんですよ。だから思い切って気持ちを伝えるべきです」
「こ、恋!? 僕が、か、柏木に!?」
「あ、柏木さんっていう子なんですね?」
「いや違うなんでもない。忘れてくれ頼む」
ニヤリと笑う新倉に、慌てて取り繕う。
「ふふ、図星なんですね。大丈夫、安心してください。誰にも言いませんから。先輩にはお世話になってるし、私、先輩の恋、応援しますよ!」
そう言って目をキラキラと輝かせた新倉は、その場で僕に柏木へと連絡させると、そのまま当日のシミュレーションをしだした。
――僕が、柏木を、好き? そんなまさか。
だけど、胸の中にこびりつくこのもやもやは、味わったことがない感情だった。
もしもこれを恋心と呼ぶのならば、確かめなければいけない。自分の気持ちも、柏木の気持ちも……。
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