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48_壁の中の死体の真相_二
しおりを挟む「経緯は複雑ですから、順序だてて説明したいと思います」
説明を間違えれば、私は貴人を侮辱した罪で、裁かれることになるだろう。慎重に話を進める必要があった。
「――――まず、発端となったのは、曹貴妃様のご懐妊です」
「それが発端だと? 発端は、翠蘭の懐妊では?」
「二人の懐妊は同じ年です。ですがやはり、発端は曹貴妃様のご懐妊だと言えるでしょう。曹貴妃様は皇子を産んだ功績により、四夫人の位を授かったと聞いております」
「ああ、私が位を授けた」
「・・・・・・・・」
背中に感じる視線のうち、突き刺さるように鋭いのは、曹貴妃様の視線だろう。焼けつくような憎悪を感じる。
「注目すべき点は、曹貴妃様が翠蘭さんの出産を手伝っている部分です。なにせ、翠蘭さんは宮女です。人目を忍んで逢瀬を重ねることはできても、子を産むことは、流れるままには行えません。膨らんでいくお腹を見れば、誰かが懐妊に気づいたでしょう」
「曹貴妃の手を借りなければ、翠蘭は子は産めぬ、か・・・・。だがそもそも、そなたの、〝翠蘭は子供を産んでいた〟という推測は正しいのか?」
陛下は足を組みなおし、頬杖を突く。
「翠蘭が子を産んだという推測は、そなたの、翠蘭の腰骨の歪みが、子を産んだ女人の症状に似ている、という一点だけで成り立っている。それも、断言できるほどの確かな材料ではあるまい」
「おっしゃる通りです」
「そもそも翠蘭が子を産んでいたのなら、その子はどこに行った? 翠蘭の家族は流刑地へ流され、頼れる親族はいなかったはずだ」
「問題は、そこなのです。――――もし、翠蘭さんが子を授かっていたのなら、その子は今、どこにいるのか」
私は深呼吸する。
「・・・・今回の事件の調査のために、俊煕殿下に、病で逝去された莫氏の方々の、くわしい症状を調べてもらいました。その結果、咳や蕁麻疹、高熱などの症状に見舞われた皇子が、それから数年以内にお亡くなりになられていることがわかりました。病の原因は、不明です」
また、群臣はざわめく。敵意が、さらに強まった。
「先帝の時代にも、同じ症状で逝去された皇子や、皇太弟がいらっしゃいます。すべて、お亡くなりになられたのは、咳や蕁麻疹、高熱などの症状が表れてから、数年以内です。・・・・持ち直し、病を克服された方は、一人もいません」
「貴様、何が言いたい!」
――――おそらくこれは、血の病だろう。
先祖から子孫へ、容姿の特徴や能力は、受け継がれていく。
だけど引き継がれるのはそればかりではない。一部、特殊な病なども引き継がれてしまうことがある。
莫氏の男子にも、代々受け継がれてしまう病があるのだろう。
天寿を全うしている方々も多いところを見ると、発症する人とそうではない人に分かれているようだ。おそらくは母方の血が、病を押さえ込むのだろうと思う。
だけどこれは、言ってはならないこと。皇族である莫氏は神聖な存在、帝位を守るため、莫一族の神秘性は守られなければならないからだ。
私ですら気づいたことなのだから、皇宮にいる大医達はとっくに気づいていたはず。だけど、彼らは口を閉ざし続けてきた。
――――だから、血の病などとは、口にしてはならない。
(・・・・難しい)
莫氏の血の病だとは言わないまま、説明を続けなければならない。
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♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
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