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27.告白のこたえ
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(私、告白したよね!?)
車に乗って数分経ったけれど、先生はなにも言ってこない。ちゃんと目を見て伝えたし、告白されたと分かっているはずなのに。
もしかして、このまま無かった事にするつもりなのだろうか。
(それは嫌だ)
勢いで告白してしまって計画もめちゃくちゃになったけれど、振られることになっても後悔しないって決めたのだから。
「はっきり言ってください」
「──」
同時に声を発したらしく、先生の言葉が聞こえなくて。察した先生がもう一度口を開く。
「わかってるとは思うが、俺は教師でお前は生徒だ。たった一人の生徒を特別扱いするわけにはいかないし、常に周りの目があるから普通の恋人らしいことなんてできないだろう」
想像していた通りのお決まりの台詞が先生の口から告げられる。納得していたつもりだったけれど、やっぱりそんな答えじゃ納得なんて出来るわけがなくて。
確かに私は『生徒』で先生は『先生』だ。でも、生徒や先生である前に、私は『七瀬葵』で先生は『倉田亮介』なのだ。
だから私は、先生の気持ちがはっきり聞きたかった。
望みがないなら、ごまかさないで欲しい。卒業したらいいのかなと希望を持ってしまいそうになる。
私がダメなら、ダメだとそう言って欲しい。そのほうが諦めもつくから。
大丈夫、泣いたりなんてしないから。
(中途半端な優しさはいらないんだよ、先生)
「そんな当たり前のことわかってるよ。でも好きでそうなったわけじゃないし、たまたま好きになった人が先生だっただけだよ。誰にでも分け隔てなく接してる先生だってわかって好きになった。普通の恋人らしいことってなに? 例え色んなこと我慢しないといけなくても、好きな人と恋人になれる以外に幸せなことってあるの? とってつけたような理由なんていらない。生徒としか見られないならそう言えばいい」
「……ははっ」
「先生、ダメならきっぱり──」
先生が不意に笑みをこぼす。なにか笑えることを言っただろうかと思いつつも言葉を続けると。
「だったら付き合うか?」
(…………え)
思わず耳を疑うような言葉が聞こえて、頭が真っ白になる。
「……」
「七瀬、サン?」
「いま……付き合うかって言いました?」
「言ったな」
「あぁ、これ夢ですよね?」
「いや、現実だな」
「現実……現実?」
「なんでそんなに俺の言うことが……あー……いや、そうだよな」
ため息混じりにそう呟いた後、徐に車を路肩に停めた先生が話し出す。
「さっき俺がお前に言ったこと訂正するわ。一番大事なこと言ってないのに『付き合うか』もクソもねぇよな」
「大事なこと?」
「七瀬」
優しい声で名前を呼ばれて、先生と視線が絡み合う。
「俺もお前が好きだよ」
ふっと微笑みながら、そう口にした。
「先生が……私を……好き?」
「あぁ」
「ほんとに?」
「本当だ」
「ほんとのほんとに?」
先生の言葉が夢みたいで信じられなくて、何度も確かめるように言葉を重ねていると。
「……ったく」
先生の手が私の顎をくいっと持ち上げ、軽く上を向かせられる。
「!!!」
(え!? キスされる!? 嘘!?)
先生の顔が近づいてきて思わず目をギュッと瞑ると、柔らかなものが額に触れたのを感じた。目を開けてそれが先生の唇だとわかった瞬間、顔がカッと熱くなる。
唇が触れていたのはほんの一瞬だったけれど、私には時が止まったようにさえ感じられた。
「せ、せせ……」
「これで信じた?」
先生はまるで子供みたいな悪戯な笑顔でそう言って。私は思わず額を両手で押さえながら、首を縦にぶんぶん振ることしか出来なかった。
(キ、キスとかキスとかキスとか)
「で、どうする? 付き合う?」
大人の余裕なのだろうか。私とは正反対の余裕綽々な様子で先生が聞いてくる。好きかと聞いてキスをされて、それは確かにこれ以上ないくらいの真実だけど、どうにも腑に落ちない。
それでも──
(そんなの決まってる)
顔を真っ赤にしたまま頷くと、先生は満足そうに笑みを浮かべた。
車に乗って数分経ったけれど、先生はなにも言ってこない。ちゃんと目を見て伝えたし、告白されたと分かっているはずなのに。
もしかして、このまま無かった事にするつもりなのだろうか。
(それは嫌だ)
勢いで告白してしまって計画もめちゃくちゃになったけれど、振られることになっても後悔しないって決めたのだから。
「はっきり言ってください」
「──」
同時に声を発したらしく、先生の言葉が聞こえなくて。察した先生がもう一度口を開く。
「わかってるとは思うが、俺は教師でお前は生徒だ。たった一人の生徒を特別扱いするわけにはいかないし、常に周りの目があるから普通の恋人らしいことなんてできないだろう」
想像していた通りのお決まりの台詞が先生の口から告げられる。納得していたつもりだったけれど、やっぱりそんな答えじゃ納得なんて出来るわけがなくて。
確かに私は『生徒』で先生は『先生』だ。でも、生徒や先生である前に、私は『七瀬葵』で先生は『倉田亮介』なのだ。
だから私は、先生の気持ちがはっきり聞きたかった。
望みがないなら、ごまかさないで欲しい。卒業したらいいのかなと希望を持ってしまいそうになる。
私がダメなら、ダメだとそう言って欲しい。そのほうが諦めもつくから。
大丈夫、泣いたりなんてしないから。
(中途半端な優しさはいらないんだよ、先生)
「そんな当たり前のことわかってるよ。でも好きでそうなったわけじゃないし、たまたま好きになった人が先生だっただけだよ。誰にでも分け隔てなく接してる先生だってわかって好きになった。普通の恋人らしいことってなに? 例え色んなこと我慢しないといけなくても、好きな人と恋人になれる以外に幸せなことってあるの? とってつけたような理由なんていらない。生徒としか見られないならそう言えばいい」
「……ははっ」
「先生、ダメならきっぱり──」
先生が不意に笑みをこぼす。なにか笑えることを言っただろうかと思いつつも言葉を続けると。
「だったら付き合うか?」
(…………え)
思わず耳を疑うような言葉が聞こえて、頭が真っ白になる。
「……」
「七瀬、サン?」
「いま……付き合うかって言いました?」
「言ったな」
「あぁ、これ夢ですよね?」
「いや、現実だな」
「現実……現実?」
「なんでそんなに俺の言うことが……あー……いや、そうだよな」
ため息混じりにそう呟いた後、徐に車を路肩に停めた先生が話し出す。
「さっき俺がお前に言ったこと訂正するわ。一番大事なこと言ってないのに『付き合うか』もクソもねぇよな」
「大事なこと?」
「七瀬」
優しい声で名前を呼ばれて、先生と視線が絡み合う。
「俺もお前が好きだよ」
ふっと微笑みながら、そう口にした。
「先生が……私を……好き?」
「あぁ」
「ほんとに?」
「本当だ」
「ほんとのほんとに?」
先生の言葉が夢みたいで信じられなくて、何度も確かめるように言葉を重ねていると。
「……ったく」
先生の手が私の顎をくいっと持ち上げ、軽く上を向かせられる。
「!!!」
(え!? キスされる!? 嘘!?)
先生の顔が近づいてきて思わず目をギュッと瞑ると、柔らかなものが額に触れたのを感じた。目を開けてそれが先生の唇だとわかった瞬間、顔がカッと熱くなる。
唇が触れていたのはほんの一瞬だったけれど、私には時が止まったようにさえ感じられた。
「せ、せせ……」
「これで信じた?」
先生はまるで子供みたいな悪戯な笑顔でそう言って。私は思わず額を両手で押さえながら、首を縦にぶんぶん振ることしか出来なかった。
(キ、キスとかキスとかキスとか)
「で、どうする? 付き合う?」
大人の余裕なのだろうか。私とは正反対の余裕綽々な様子で先生が聞いてくる。好きかと聞いてキスをされて、それは確かにこれ以上ないくらいの真実だけど、どうにも腑に落ちない。
それでも──
(そんなの決まってる)
顔を真っ赤にしたまま頷くと、先生は満足そうに笑みを浮かべた。
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