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50・お腹が痛い!
しおりを挟む蒼くなったり、赤くなったり。
今度は何ですか、真っ白じゃありませんか。
リリアを黙らせたのは、いいものの、突然、意表をついて手紙を出すのは、ちょっと、やり過ぎだったのでしょうか?
しかし、何はともあれ、手紙の内容を確認しなければ先に進みません。
何の事は無い、押し花の件も、試す試さないなどとは、私たちの勝手な解釈で、普通に『この押し花は』と、書かれているのではないでしょうか?
「リリア、手紙を読んでみて」
「…………」
予想外の事を言われて固まるリリアです。
「読んでみてよ」
重ねて催促すると、リリアはぎこちない動きで、たたまれた手紙を開こうとしますが、それ以前に掴む事すらできません。
仕方ありませんので、私が開いてリリアの前に置いてあげました。
「お嬢、無理です!」
リリアは弾かれたように顔を背けました。
何を言ってるのですかこの娘は、だらしが無いのにも程があります。
まあ、『恋文』など、貰った事はおろか、見た事も無い私が言うのも何なのですが、その気持ちも分からなくはありません。
しかし、この手紙が『恋文』では無いにしても、リリア宛に来たものを私が先に読む訳にもいきません。
「リリア、読みなさい」
「ま~た、こんな時だけ主人面するんだから」
呟くように言っていますが、ギリギリ聞こえるように言っているのは、お見通しですよ。
「なーに、ブツブツ言ってるの、往生際悪いわよ。サッサと読みなさい」
リリア、泣きそうです!
リリアのこんなにも弱りはてた姿、初めて見ました。
リリア、顔が蕩けそうです!
リリアのこんなにも弛んだ姿、初めて見ました。
頭、痛くなってきました。
本気で殴ってやりたくなったのは、いつ以来でしょうか、随分と昔の事です。
薄らんでいた『ドス黒い物』の影が、色濃くなってきたような気がします。
「なんて書いてあったの?」
「それは言えません!」
完全に人格が崩壊しています!
先ほどの殊勝さは何処に行ってしまったのでしょうか。
あれ? 私も人の事は言えないようです。
怒っている最中に、突然嬉しくなってしまいました。
リリアが、泣いたり、怒ったり、困ったり、喜んだり、不安になったり、そして、笑ったり。
私の近侍となって以来、子供の頃の感情表現が鳴りを潜め、いつも、何処か緊張をほぐすことなく過ごしていたリリアが、これ程までも感情を露わにしてくれている事が、嬉しくてたまらないのです。
「ふっ」
含み笑いが漏れてしまいました。
もう止まりません。
堰を切ったかの様に笑い出してしまいます。
「お嬢! どうしました!?」
リリアの言葉も、私を止められませんでした。
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