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49・私の方が偉いのです。

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「如何、思います?」

 ここで、リリアの問い掛けに『如何、思います、って?』などと返すのは、先ほどからオウム返しをしてばかりいるので、考えが浅すぎると思われるのもしゃくですし、かといって『花言葉は、きっと、、よ』などと言ったら、本気で怒り狂いだしそうです。
 取りあえず、うつむき、顎に手を当て、難しい顔をして、考えている振りをして、誤魔化すことにしておきます。

「エド小父様が、何の意図も無く、この押し花を同封したとは考えにくいです」

 しめしめ、リリアが大真面目に一人語りを始めましたので、一応、大きく頷いておきます。
 
 リリアが、そっと机の上に押し花を置きました。
 例えは悪いですが、その表情、仕草は、まるで棺に花を添える時の様な厳粛さなのですが、それが尚更、滑稽に見えてしまい、吹き出しそうになるのを、必死でこらえました。

 エドの意図はともかく、この押し花、いえ、香草が少なくとも私の知る限りでは、領内で流通しているとは思えません
 どこからどうやって入手した物かは知りませんが、気候風土さえ合えば栽培すことも可能でしょうから、エドに頼んで譲ってもらう……。
 待てよ?
 あの、商魂たくましいエドが、これ程の香りのする香草に、ましてや、専門の食材に関する事に指をくわえている筈が有りません。
 仮に栽培が困難だとしても、乾燥させ押し花にしても、これだけの芳香です。
 何処が産地かは分かりませんが、船舶輸送などエドにとっては、お手の物。
 お菓子作りの材料に良し、お肉料理にも合いそうですし、お酒やオリーブ油に浸けこんでも、煎じてお茶にして、なお良しです。
 例の焼き菓子の香料に使う?
 それとも、焼き菓子に合うお茶?

「それを、わざわざ、新規事業の書簡に入れて送ってきたという事は、言外に私たちを試している?」

 知らず知らずのうちに、言葉にしてしまいました。

「何を仰っているのですか、試されているのは、『私たち』では無くて『私』ですよ」

(むっきー! リリアが偉そうだ!)

「違うわよ! エドも、さすがに私に宛てて書くのは不敬だと思ったのよ」

「いいえ、それならば宛名無しにしたはずです。わざわざ私に宛てた封筒なのですから」

(むっきー! ますます、リリアが偉そうだ!)

 リリアは忘れてしまっているようですね。
 私が強力な武器を手にしているいる事を。

「はい、リリア、これ、お手紙」

 封筒から、折りたたまれた『紙』を取り出し、リリアの前に叩きつけるようにして置きました。

 ほ~ら、黙りこくりやがった。
  
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