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39・つい、顔に出てしまうのです。

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(あほらし!)

 どのみち、当分の間は嫁になど行かせずに、コキ使ってやるつもりでですし、リリアの嫁ぎ先など、お父様のお手を煩わせなくとも、私がソノ気になれば掃いて捨てる程見つかりますので、どーでもいーです。 

 …………ん? 逆に、お父様にも根回しして、縁談話を全部ぶっ潰して、一生コキ使ってやりましょう。

「お嬢?」
 
 それはさておき『何もなかった事』にしたにせよ、もう少し詳しい事情を聞いて……止めましょう。
 あの後、赤鬼は如何したのか、気になるところですが、リリアに聞いても私がブッ倒れたのを見て、我を忘れて駆けつけて、周囲の状況などに気を配る余裕など無く、何も分からない事は容易に想像できます。

「ねえ、お嬢!? 何か、もの凄い悪い事、考えていませんでした?」

「な、何、急に、別に悪い事など考えて無いわよ。赤鬼、如何したのかなと思っていただけ」

「本当ですか~? まあ良いですけど。赤鬼はそのまま黙って立ち去って行きました。それにしても、お嬢の気持ちは重々分かるのですが、あの場で赤鬼を見殺しにするという選択は無かったのですか?」

「『見殺し』って、何、その物騒な言い方、やめてよ」

「だって、お嬢が間に入らなければ、先生が討っていましたよ」

「断言できるの? ファス様の腕を疑う訳じゃないけど、赤鬼も、こう、斧槍を軽々と振り回していたじゃない」

 本気で腕を振り回して、リリアを叩いてやろうと思いましたが、いとも簡単に避けられて掠りもしませんでした。

「あれは、馬の勢いを利用した、騎乗してこその騎士の技ですよ。馬から降りたら、速さで先生に敵う訳無いですから」

「万が一という事もあるでしょう」

「無いです! いざとなったら、私が雪崩れ込んで、無茶苦茶してやります。ふんす!」

 乙女にあるまじき鼻息です!

「そりゃあ、心強い事で」

 しかし、リリアは、あながち間違った事を言っている訳ではありません。
 そもそも排除するべき人間として認識していた赤鬼ですから、ファス様が討ち取ったからといって、何の痛痒も無い筈です。
 ファス様が万が一返り討ちにあい、失う事にでもなれば御家にとっての損失ですが、非は赤鬼に有り、仕掛けたのはファス様ですから厳罰は免れても、少なくとも御家に留まるのは許される筈もありません。

 ……ん!? 結局、私の行為は、絶好の機会を逃し、いたずらに赤鬼とファス様に、遺恨を残しただけなのでしょうか。
 私の一時の感情で、御家にとって不利益を招いたという事ですか。

(何やってんだー!)
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