上 下
66 / 72

64・丸すぎます!

しおりを挟む
 
「はらへったー!」

「あらあら、大変。この瓦礫を片付けなくちゃ。さあさ、お仕事、お仕事、忙しいわ~」

 マリの一言に慌てて、お仕事のお手伝い開始です。マリにジト目で見られても気にせず、賄いを食べる権利を獲得です。

「ウルに『マカナイ、ツクリヤガレ!』って、言ってある!」

 と、マリが言うので、みんな揃って開発室に向かいました。
 まーた、マリが無茶振りを言っていやがる、とも思いましたが、ウルちゃんなら美味しい物を作ってくれるに違いありません。楽しみです。

 開発室ではウルちゃんを取り囲んで、皆さん和気あいあいとお仕事に励んでいました。

『ウル! マカナイ、デキタカ?』
『できてるっス!』

 マリの問い掛けに、ウルちゃんがイソイソと運んできてくれたのは、大皿に山盛りになった……あれ? 何だかどこかで見たような?……ビックリです!
 どう見てもハンバーガー!? 
 マリが教えたのかと思い、尋ねようとすると……マリの眼が真ん丸だ!!
 マリも驚いた顔をしているのですから、マリがウルちゃんにハンバーガーを教えた訳では無いという事です。

『……コレ? ウルちゃんが作ったの!?』
『……っス?』

 何故、マリと私が驚いているのか理由が分から無いのか、耳をピクピクさせて、小首を傾げるウルちゃん。可愛すぎます。

『ねえ、ウルちゃん。コレなんて言うお料理?』

 念の為尋ねてみると、

『ホットドック改ウルスペシャル、っス!』
『腸詰用に作った牛肉のミンチが余ったので、ウルさんが炭火で直に焙ってパンに挟んだのです。同じ材料でも調理法を変えると、風味が全然違ってくるものですね。勉強になります』

 腰に手を当て、言い切った感を醸し出しているウルちゃんに代わって、若手の調理師さんが説明してくれました。

『まあ、とにかく頂きましょう』

 私とマリの驚きなど意にも介さず、私達を押しのけて横から手を伸ばして来やがったのは言わずもがな、突然現れた魔王様です。

『あ! 魔王様。それはココ様のっス!』
『……へ?』
『まあ、ウル。わざわざ、わたくしの為に作って下さったの? 感激だわ』

 あ! ココ様が魔王様を突き飛ばしやがった。
 しかし魔王様、突き飛ばされて、たたらを踏みながらも食い下がります。

『ウルさん。何故ココ様だけに!?』
『魔王様の分も有るっス?』
『いやいや、ココ様がお手にしたのだけ、見た目が違う気がしますが?』
『マリ様に教わったっス!『オイシーカオ、シテイヤガルカ!』って』

 あー、なるほど。好みは人それぞれ、極力その人の好みに合ったお料理をお出しするという事ですね。確かにココ様がお手にしたハンバーガーだけ、やけにパテが分厚いし、厚切りのベーコンがバンズからはみ出しています。

『ウルさん。私もお肉大好きなのですが』
『……?』

 魔王様、尚も食い下がります。しかし、ウルちゃんは尻尾をクルリと丸めて『えっ? そうなんスか?』と言わんばかりです。
 魔王様、ガックリと肩を落として、しょんぼりしちゃっています。

 何だか可哀想になって来ちゃいました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

神様に転生させてもらった元社畜はチート能力で異世界に革命をおこす。賢者の石の無限魔力と召喚術の組み合わせって最強では!?

不死じゃない不死鳥(ただのニワトリ)
ファンタジー
●あらすじ ブラック企業に勤め過労死してしまった、斉藤タクマ。36歳。彼は神様によってチート能力をもらい異世界に転生をさせてもらう。 賢者の石による魔力無限と、万能な召喚獣を呼べる召喚術。この二つのチートを使いつつ、危機に瀕した猫人族達の村を発展させていく物語。だんだんと村は発展していき他の町とも交易をはじめゆくゆくは大きな大国に!? フェンリルにスライム、猫耳少女、エルフにグータラ娘などいろいろ登場人物に振り回されながらも異世界を楽しんでいきたいと思います。 タイトル変えました。 旧題、賢者の石による無限魔力+最強召喚術による、異世界のんびりスローライフ。~猫人族の村はいずれ大国へと成り上がる~ ※R15は保険です。異世界転生、内政モノです。 あまりシリアスにするつもりもありません。 またタンタンと進みますのでよろしくお願いします。 感想、お気に入りをいただけると執筆の励みになります。 よろしくお願いします。 想像以上に多くの方に読んでいただけており、戸惑っております。本当にありがとうございます。 ※カクヨムさんでも連載はじめました。

アラフォー料理人が始める異世界スローライフ

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
ある日突然、異世界転移してしまった料理人のタツマ。 わけもわからないまま、異世界で生活を送り……次第に自分のやりたいこと、したかったことを思い出す。 それは料理を通して皆を笑顔にすること、自分がしてもらったように貧しい子達にお腹いっぱいになって貰うことだった。 男は異世界にて、フェンリルや仲間たちと共に穏やかなに過ごしていく。 いずれ、最強の料理人と呼ばれるその日まで。

自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名
ファンタジー
★2024年9月19日に2巻発売&コミカライズ化決定!(web版とは設定が異なる部分があります) 🔷第16回ファンタジー小説大賞。5/3207位で『特別賞』を受賞しました!!応援ありがとうございます(*^_^*) 💛小説家になろう累計PV1,830万以上達成!! ※感想欄を読まれる方は、申し訳ありませんがネタバレが多いのでご注意下さい<m(__)m>    スーパーの帰り道、突然異世界へ転移させられた、椎名 沙良(しいな さら)48歳。  残された封筒には【詫び状】と書かれており、自分がカルドサリ王国のハンフリー公爵家、リーシャ・ハンフリー、第一令嬢12歳となっているのを知る。  いきなり異世界で他人とし生きる事になったが、現状が非常によろしくない。  リーシャの母親は既に亡くなっており、後妻に虐待され納屋で監禁生活を送っていたからだ。  どうにか家庭環境を改善しようと、与えられた4つの能力(ホーム・アイテムBOX・マッピング・召喚)を使用し、早々に公爵家を出て冒険者となる。  虐待されていたため貧弱な体と体力しかないが、冒険者となり自由を手にし頑張っていく。  F級冒険者となった初日の稼ぎは、肉(角ウサギ)の配達料・鉄貨2枚(200円)。  それでもE級に上がるため200回頑張る。  同じ年頃の子供達に、からかわれたりしながらも着実に依頼をこなす日々。  チートな能力(ホームで自宅に帰れる)を隠しながら、町で路上生活をしている子供達を助けていく事に。  冒険者で稼いだお金で家を購入し、住む所を与え子供達を笑顔にする。  そんな彼女の行いを見守っていた冒険者や町人達は……。  やがて支援は町中から届くようになった。  F級冒険者からC級冒険者へと、地球から勝手に召喚した兄の椎名 賢也(しいな けんや)50歳と共に頑張り続け、4年半後ダンジョンへと進む。  ダンジョンの最終深部。  ダンジョンマスターとして再会した兄の親友(享年45)旭 尚人(あさひ なおと)も加わり、ついに3人で迷宮都市へ。  テイムした仲間のシルバー(シルバーウルフ)・ハニー(ハニービー)・フォレスト(迷宮タイガー)と一緒に楽しくダンジョン攻略中。  どこか気が抜けて心温まる? そんな冒険です。  残念ながら恋愛要素は皆無です。

異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く

りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とし、愛犬ルナと共に異世界に転生したタケル。神から授かった『等価交換』スキルで、現代のアイテムを異世界で取引し、商売人として成功を目指す。商業ギルドとの取引や店舗経営、そして冒険者としての活動を通じて仲間を増やしながら、タケルは異世界での新たな人生を切り開いていく。商売と冒険、二つの顔を持つ異世界ライフを描く、笑いあり、感動ありの成長ファンタジー!

我儘女に転生したよ

B.Branch
ファンタジー
転生したら、貴族の第二夫人で息子ありでした。 性格は我儘で癇癪持ちのヒステリック女。 夫との関係は冷え切り、みんなに敬遠される存在です。 でも、息子は超可愛いです。 魔法も使えるみたいなので、息子と一緒に楽しく暮らします。

逆行聖女は剣を取る

渡琉兎
ファンタジー
聖女として育てられたアリシアは、国が魔獣に蹂躙されて悲運な死を遂げた。 死ぬ間際、アリシアは本当の自分をひた隠しにして聖女として生きてきた人生を悔やみ、来世では自分らしく生きることを密かに誓う。 しかし、目を覚ますとそこは懐かしい天井で、自分が過去に戻ってきたことを知る。 自分らしく生きると誓ったアリシアだったが、これから起こる最悪の悲劇を防ぐにはどうするべきかを考え、自らが剣を取って最前線に立つべきだと考えた。 未来に起こる悲劇を防ぐにはどうするべきか考えたアリシアは、後方からではなく自らも最前線に立ち、魔獣と戦った仲間を癒す必要があると考え、父親にせがみ剣を学び、女の子らしいことをせずに育っていき、一五歳になる年で聖女の神託を右手の甲に与えられる。 同じ運命を辿ることになるのか、はたまた自らの力で未来を切り開くことができるのか。 聖女アリシアの二度目の人生が、今から始まる。 ※アルファポリス・カクヨム・小説家になろうで投稿しています。

処理中です...