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55・ピザ談義、おかわり。
しおりを挟む銭儲けと、食い意地。
欲と欲のぶつかり合いは、激しさを増すばかりで結論など出る筈も無く、またもや殺伐とした雰囲気になって来ました。
『まぁ、まぁ、ココ様も、給仕長も、ここは商業的見地から総料理長にご意見をうかがって……』
私が、そう仲立ちすると、総料理長は一瞬、ものすごーい嫌な顔をしましたが、
『私は、どちらかといえば、どちらかといえばですよ。給仕長の意見に賛同いたしますな』
『あ゛!、総料理長ちゃんは、内輪の身びいきをするの!?』
『いえ、いえ、滅相も無い。決してそのような事ではございません。私の個人的見解として申し上げたまでの事です』
ココ様のドスの効いた口調に、及び腰になって返す総料理長でしたが、
『なぁ、ロキエル。俺は魔王城内の事に関しては、あくまでも傍聴者だからな』
ん? 勇者が突然、柄にもなく殊勝な事を言い出しました。普段は頼んでもいないのに横から口を出すくせに……あれれ? 皆さん、何でしょう? 私をじっと見つめて……。
は! いけません。賛否二対二じゃありませんか。私の意見で決定するという事ですか? この状況で? 私には荷が重すぎます。
『こういう事案は、多数決で決めるべきでは無いと思います。魔王様も冒頭に『総員の同意』と、仰ったではありませんか』
『しかし、議論が平行線になってしまいましたから』
魔王さまが口調は普段通り丁寧ながらも、有無を言わさぬ、もの凄い威圧感を醸し出していやがります。
ちょっとイラッとしてしまいましたので、ここは伝家の宝刀を抜き放つとしましょう。
『では、マリに意見を聞いてみましょう』
『いや、ロキエルさん。それこそ私が冒頭に申し上げたではありませんか『マリさんには内密に』と』
『確かに魔王様はそう仰りましたが、随分と可笑しな話ですね? 創ったのはウルちゃんとはいえ、そもそもピザの発案者であるマリの意見を聞くのに何の不都合が?』
私がシレッと取り澄ました顔で言うと、魔王様は押し黙ってしまいましたが、ココ様が大反発です。
『何ですかぁ~、魔王ちゃん黙っちゃって、何とか言い返しなさいよ!』
『いや、ココ様。この件を知られると、マリさんの不興を招いてしまうので』
『マリちゃんの、不興?』
『えぇ、私としては、それとなくピザ店のメニューに加えて頂きたいなと。何せマリさん負けず嫌いですから、以前に私が「ウル・ニクダラケ・スペシャル」を褒めたら、お冠で。最悪、お料理を食べさせてくれないなどという事態になりかねませんので』
『何ですってー! それは駄目ですぅ~』
はい、万事解決です。
『ところで給仕長。メニューの選択肢を増やし、チーズの多様性を知らしめる意味でも、原価的にも懐に優しい「ラビスペシャル」を、是非、取り入れて欲しいと思いますが』
『ロキエル様、お言葉を返しますが「ラビスペシャル」も、ブルーチーズが少々お高いようで』
え~!? そりゃねえぜ。
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