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54・ピザ談義。

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『キニスルナ、マカセヤガレ!』

 調理部の方々が、それはもう大満足で「ゴチソウサマデシタ」と、日本語で挨拶して、後片付けを手伝うというのを、マリが固辞しました。
 皆さん口々に『戻って、早速、色々と試してみるか!』と、意気揚々と開発室を後にしたのですが、

『あぁ、総料理長。ちょっとお話が、お時間頂けますか?』

 と、魔王様が総料理長を呼び止めました。

『ロキエルさん、此処では何ですから、執務室をお借りします』

 魔王様は私と給仕長に目配せをすると席を立ちました。

「マリさん、皆さんとお話したい事があるから、後はお任せしても宜しいですか?」

「わかったー! だいじょーぶ」

 マリに一言断りを入れて、皆で開発室を後にして、執務室へと……なぜ勇者までついて来る!?
 応接席に腰掛けると、早速、魔王様が話し始めます。

『ロキエルさんと給仕長の『想い』は想いとして、後ほど個別にじっくりお話する機会を設けますが、さて、本題はピザ店の事なのです。給仕長の御尽力、ココ様の御助力、そして素晴らしく優秀なスタッフの確保によって、出店の障害は一切なくなりました。設営から運営まで、給仕長にお任せして、私が口出ししようとは思いませんが、少々懸念が有りまして』

 懸念? 

『私が強権をもってして、独断専行するつもりは毛頭ありません。ここに居る方々の総員の同意を以って決定事項としていきたいと思うのですが、これから申し上げる事は、くれぐれも御内密に、特にマリさんには』

 はい、はい、分かりました。間違いないです。

『魔王様、僭越ながら申し上げておきますが「ウル・ニクダラケ・スペシャル」は、原価的に厳しいものがありますので、メニューに入れる予定はございません』

 さすが給仕長です。私に先んじて断言しました。

『……………ぇ』

『え~!? 何でですかぁ~、あの素晴らしいピザを、もう食べられないのですかぁ~、ココはあれが一番好きですぅ~』

 愕然として固まっている魔王様に代わって、ココ様が私のお乳の上でジタバタして、猛抗議です。その抗議に背を押されるように、魔王様が我が意を得たりと、口を開きます。

『給仕長。そう仰りますが……』

 が、魔王様の言葉をさえぎって、給仕長が捲くし立てます。

『ならば、申し上げますが、ピザというお料理は、みんなでワイワイ一杯やりながら、手軽に気軽に、肩肘張らずに食べてこそ真価を発揮するお料理ではありませんか? それを懐を気にしながらなど言語道断。安価で提供してこそ、世を席巻できると思いますが』

 給仕長の正論に魔王様は、ぐぅの音も上げられません。
 だが、しかし、そんな事で引き下がるようなココ様ではありません。

『給仕長ちゃん、それは考え違いというものですぅ~。原価割れでとは言いませんが、例え利益率を下げてでも、看板メニュー、売れ筋商品を創るのは必須ですよぉ~』

『いいえ、ココ様。当面は「ピザ」を認知、浸透させていく為の、看板メニューとして「マリスペシャル」二品で十二分です』

『そもそも、当面などという考え方が間違えですぅ~。店舗の食材の収容や、製作能力の許容範囲外キャパシティーオーバーだというならいざ知らず、商品の選択肢を増やすのに、障壁デメリットなど有りませんよぉ~』

『それこそ、お考え違いです。「ピザ」を認知させたうえで、新商品として、適正価格、適正価格でですよ、大々的な宣伝活動キャンペーンを行って、何せ魔王城ここには肉好きが多いですから『お! 新商品か。ちょっと高いけど美味そうだな』と購買意欲をそそり、売り上げを飛躍的に伸ばして、ガッポ……オ、オホン……失礼。効果的に活用してしかるべきかと』

 ガッポ!? この女、思わず本音が出ましたね!
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