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22・安請け合いして、大丈夫なのですか?

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『シニゾコナイ、カミヨコシヤガレ!』

 また、何を突然。

「マリはこの紙が欲しいのですか?」
「うん」
「魚じゃなくて?」
「うん」
「分かりました。何枚ぐらいですか、私が頼んでみますから」
「三十枚」
「なぁ、俺もこれ頼んでいいか」
「時間がないと言っているでしょう、私だって我慢しているのです」

 横から余計な口を挟まないで欲しいです。

『店主さん、すみません。外国の娘なもので言葉がまだ良く分からないものですから』
『あ~気にするでない、かみよこせ、とはこれの事か』

 お爺さん一掴みの紙を持ち出してきました。

『はい、お願いできますか』
『まぁ、譲ってやらん事も無いが、高いぞ』
「おい、ロキエル、この爺さんもったいつけて、ぼったくるつもりじゃないか、やっちまおう」

 どうして勇者のくせして、こんなに乱暴なのでしょうか、お年寄りなのに、正に相手構わずですね。

「良いから黙っていて下さい」
『何じゃ、このロクデナシ野郎は、何を言っておるんじゃ』

 はい、確かにロクデナシ野郎です。

『いえ、何でもないです。それでお幾らで譲って頂けるのでしょうか』
『そこのお嬢ちゃんが使うのかのう?』
『えぇ、そうですが』
『なら、ただでええ』
『え!?』
「おい、益々怪しいぞ、今度はタダでいいなんてよ。やっちまう……ぶふへふぉ!」

 やっちまいました。
 マリとお爺さんが喜んでいます。なによりです。

『ところで、このお嬢ちゃん日本人じゃろ?』

 私はマリを抱きかかえるようにして一歩後ずさり、右拳に力を籠めます。

 倒れ込んでいた勇者が跳ね起きて、布にまかれた魔剣を、一歩踏み込んで突き付けます。

『おい爺さんどいう事だ、何か知っているのか?』

 勇者が、底籠りする、辺りを震わすような声で訊ねました。

『ふおっふお、こんな爺相手に、大の男が警戒する必要もあるまい、儂には日本人の恩人がおったのじゃよ。黒髪、黒眼、おまけに、そのでな、その、お嬢ちゃんも料理人じゃろ。まぁ、秘密にして欲しいなら黙っておるが』
『いや、言いふらされても困るが、特に秘密という訳でもない。おったと言う事は昔の話か?』
『もう、何十年も昔の話じゃ』

 お爺さんが、過ぎた昔を懐かしむような、遠い目をして語り始めました。

『表通りで料理店をやっていたのじゃが、あまりうまくいかずな。店を売り払う事も考えていたところに、日本人の料理人と偶然に知り合ったのじゃ、そして、この紙包みを教わった。売り始めると、たちまち名物料理になって繁盛し始めたのじゃが、戦乱で店を失い、仕方なくここで商売を始めたのじゃ。常連さんもいて生活には困らないが、お客さんを喜ばせたいという気持ちは失っておらん。自分なりに研究はしているがなかなか難しい。暇なとき、いつでも良い、新しい料理を教えて欲しいのじゃ』

「マリどう思う?」

 お爺さんの話を、マリに通訳すると、無い胸反らして言います。

「かんたん! マリにまかせろ!」
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