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18・考えてみても始まらないのですけど。

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「お疲れ様でした」

「はい、さきちゃん、お疲れ様」

 店頭の看板は忘れずに下げてありますので、カウンターで珈琲を淹れます。
 美味しい珈琲の淹れ方に関して様々な意見がありますが、私が飲むときはサイフォンを使っています。
 私の個人的な趣味なのですが、アルコールランプにマッチで火をともす時の『ポッ』という微かな音、揺らぐ炎を見ているのも好きですし『コポコポ』と沸騰する音を聞き、珈琲の香りが立ち昇って来ると心が安らぎます。

 まったりと珈琲を飲みながら彼女たちの事を考えます。

 あの3人娘が悪事に加担しているとは、とても考えられませんので、悪いようにはならないと思いますが、何にしろ、人間離れした超常的な能力を持っている事は、この目で実際に見た事ですから疑う余地はありません。
 記憶の断片をつなげ合わせれば、彼女たちの正体が朧気おぼろげながら見えて来るものがありました。

 リコが一番分かり易い気がします。
『イタリア系』『白子の浄化』『ロザリオ』『崇高なる守護者』ローマカトリックとは食前の祈りが違っように思えますが、どちらにしろ宗教関係、『神職者』『聖女』『賢者』『異端審問官』『祓魔師エクソシスト』『白魔導士』浮かぶのは、こういった呼び名です。
 ハルは物理攻撃で得物ぶきが『聖剣』と呼ばれるような物なのでしょうか、ガラス片で怪我をしなかったですから『神の加護』とやらを得ている『聖騎士』なのかもしれません。。
 マリは『独鈷どっこ』はインド系? 『濃紫の煙』『邪神』からすると『悪魔に魂を譲り渡した魔女』『黒魔導士』水戸駅の売店に行ったのは『転移魔法』と考えるのはちょっと出来過ぎですか。
 厨房の裏口に何かしらの仕掛けがあるのかもしれません。

 3人が同じ制服を着ているという事は特殊能力者を集めた『学校』いえ『学園』の方がそれらしいですかね『処理班』があるという事は大規模な組織だったものに違いありません。

 異様に真っ赤な夕陽も怪しいですね。
 何らかの理由で繋がってしまった『異世界』『別次元』『魔界』そういった類のものかもしれません。

 ハルの来訪、黒い影との遭遇『偶然』とは考えにくいですね『必然』なのでしょう。
 
 私は『』のか『』のか。
 
 悪の秘密結社の改造人間? もっと霊的なものでしょうね、切りつけられて粒子化するぐらいですから、『魔物』『妖怪』『霊魂』『怪物』と言ったたぐいの物ですか。
 あのニジマスは、まさか『人喰い魚』なんてことはありませんよね?
 う~ん、何だか吐き気がしてきました。

 すっかり冷え切った珈琲を一息で飲み干すと。


 扉の鈴の音が響きました。
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