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【中編】悪役令息はモブ生徒に翻弄されました

変態とは変態であるから底が知れない

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前世の記憶にある悪役令息ベリル・フォン・フェリストとは。
光に透き通る銀髪と紫苑の瞳を宿す色白の儚い美少年である。
最初にゲームの主人公であるリズがベリルと出会う際、妖精と見間違えたほど浮世離れした容姿の持ち主だ。
ブレザーの制服である白シャツと黒色のリボンタイをきっちり首元まで着込んでおり、常に黒革の手袋を身に着けている。

十八禁ゲームの主要人物とは思えないほど肌の露出が制限されたキャラであり、物語を一貫して彼が肌を晒すシーンはほとんど無かった。
ベリルに一目惚れしたプレイヤーが血眼になってイベントスチルを回収しても、探せど探せど全ての服が鉄壁の防御を誇っており、全裸どころか上半身も見せてくれないため、ベリル推しは公式に泣かされたとかなんとか。
彼はモブ生徒に命令したり、主人公と攻略対象が行う性交を視姦する役割りの方が大きいゆえの事だった。
そんな彼は、主人公を含めた攻略対象たちをも時には組み敷き、全裸で床に這いつくばる奴隷たちに恥辱の限りをプレゼントする。

記憶によれば…ベリルの犠牲になっていない攻略対象は王族のフランツぐらいだったような気がする。
他の攻略対象はみな、攻めだろうが受けだろうが関係なく、ベリルの靴裏による足コキの餌食になっていた。

(ベリル本人も男なのに、相手の股間にはどれも容赦しなかったな…)

俺自身の感想としてのベリルは、態度がキツく、言葉が鋭く、足グセが悪い悪魔だった。
文化祭でベリルが女装したイベントシーンは正直股間にグッときたが、それ以外は全体を通すと気弱な俺にとって我が強すぎるキャラにはどうも苦手意識をもっていた。
どちらかというと虐げられる主人公の方に感情移入をしてしまったせいでもあるのだが…

(本当にどうすればいいんだ…この俺が、こんなやつになりきらなければいけないなんて…)

これが夢であって欲しいと望んだが、鏡の前で確認した俺自身の姿は悪役令息に間違いなかった。
ただ、猫目がちなつり目は、気持ちだけ目尻がたれているように見えるし、眉はハの字に寄せられていて哀愁が漂っている。

(どうして…どうしてこうなった!?)

パニックによる泣きたい気持ちをぐっと堪えながら唇を噛み締め、俺は鏡の方をキッと睨みつける。
ベリル本来の鋭い目力はどこにもなく、ただ単にプルプル震えながら上目遣いをキープする白色のハムスターみたいなやつがそこにいた。

ゲームの立ち絵では常に他者を見下し、鼻先で笑いながら瞳を細める意味深な悪役の面影はどこにもない。
俺の表情は、あのベリルと全く同じ素材とは考えたくないものだった。
せめて眉を吊り上げて気持ちを引き締めようとしたが、なかなかうまくいかない。
鏡と睨み合った後、深い深い溜め息を吐いた。

その後は特にやることも無く、俺はとぼとぼと男子寮へと帰路につく。
今後の学園生活がどうなるのかという不安で胸がいっぱいだった。
学生寮に帰った俺は自室までたどり着くと鞄を放り、制服姿のままソファに身を投げだして寝転んだ。
寮とはいえ、一人部屋は十分広い。
玄関のドアから向かって正面には、客の応対を行うソファが長机を挟んで向かい合う形で設置され、横の壁際には簡略化したキッチン。
奥の部屋へと続くドアは二つあり、寝室へと続くドアと、もう一つのドアはトイレとバスルームを完備している部屋。

俺は来客用のソファで寝転がったまま、疲れて動けなくなっていた。
大半は精神的なショックである。
頭を真っ白にしたまま、何も考えたくなくなっていた。
しばらくそのまま横になって休んでいたら、来客を知らせるドアのノックが響いた。

「…どうぞ」

ゆっくりと立ち上がり、俺は来客に向けて佇まいを正した。
部屋の入り口までやってきて玄関のドアを開けるとそこには、クラスメイト…ではなく別のクラスの男子生徒が一人いた。

「失礼します」

外見はいかにもモブの男子生徒だが、顔立ちが整っているところが貴族っぽい。
彼は少しそわそわとしたようにこちらを伺うと部屋に入室した。

「何の用だ?」

彼に対して俺は心当たりがない。
要件を問うと、彼は顔を赤らめた。
頬を朱色に染めながら、はぁはぁと荒い息を繰り返す。

(…まずい!)

この気配で男子生徒からヤバさを察した俺は思わず半歩下がって距離をとった。
ここはBLゲームの世界。
いくらこの世界で己のポジションがバリタチのドSだったとしても、甘いフェイスに引き寄せられた輩がいつ襲いかかってこないとも限らないのだ。
ベリル・フォン・フェリストという人物は色白美少年なのだ。
甘い少年フェイスに対して舐めてかかったら中身は化け物だったという人物であり…本性を知らない人間からすれば可愛い受タイプと見間違われる可能性もある。

(喧嘩最弱の俺をなめるなよ)

見たところ彼の体格は俺とそれほどかわらない。
最悪、喧嘩に弱い俺だとしても襲われたところで押し返すこともできそうだと心の中で計算したが緊張は緩めずに対応する。
そんな俺に対して彼は心底待ちきれない様子で己の両足の太腿をすり合わせている。
もしも部屋の外でこんな人間に出会って絡まれたら、俺なら不審者として通報する。

「ベリル様…お願いします、早く…っ」
「早くって…何を?」

息も絶え絶えに言い募る彼に対して意味がわからず、説明を催促する俺。

「この期に及んで焦らしプレイだなんて…あぁ、だめですっ…」
「…。」
「その冷たい目線も最高です…!」

前世の記憶を思い出しながら俺は逡巡する。

(目の前の…こいつはあれか…?)

悪役令息ベリルは学園に入学する前から権力を持つ貴族の子息たちを調教して手駒にしているという設定があった。
学園の裏を支配する影の勢力として、多くの人間を従えているとかなんとか…
それならば、ここへやってきた男子生徒もベリルの支配下にある下僕ということだろうか。

「入学式が終わったらいいよって、仰ったじゃないですかベリル様ぁ」

彼はハァハァと息を荒げたまま、もう耐えれないとばかりに自らのズボンのベルトに手をかけた。
その行動は突然過ぎた。

(ちょっっっっっとまて!!!!!!!!)

停止する言葉は声にならなかった。
それほどまでに男子生徒の行動は早かった。
ベルトを解き、ズボンの金具を緩めると両手で一気に下着ごと引き下ろす。
俺はその光景を見ていることしかできなかった。

視界に入ったのは、男子生徒の性器…ではあったのだが、それ以上に目を引くものがある。
男性器を覆う鉄の檻と黒革のベルト。
世にいう貞操帯というやつだ。
生徒のそれは、鉄の檻の中で窮屈そうに臨戦態勢のまま震えていた。
俺は今現在、何を見せられているのだろうか?
部屋を訪ねてきた男子生徒が、自らのズボンと下着を引き下げて、貞操帯でガチガチになった男性器を眼前に晒した。
これだけでも俺は気を失いそうになったが、極め付けは男子生徒の台詞だ。

「さぁ…約束です…ベリル様自らの手で、この施錠を外してください…!」

だが断る。

なんて言える雰囲気ではなかった。
男子生徒は両手を腰に当てて、股間を前に差し出している。
その股間の付け根には小さな南京錠がついていた。
俺の中にあるベリルとしての知識が囁いている…鍵はキッチンの戸棚にある、と。

(なぜキッチンに???)

疑問は抱いたが、目の前にいる彼との記憶が思い出せない俺にとってベリルの記憶を頼りにキッチンへ向かい、戸棚から南京錠の鍵を取り出した。
前世の記憶を思い出したことによりお互いの記憶が混濁しているのかもしれない。
こんな密室で変態を管理するなんて俺には無理だ。
下僕の扱い方なんて思い出せない。
目の前で繰り広げられる光景に圧倒されるしかなかった。
とりあえず、施錠を解除したら彼にはお帰り願おう。
俺は鍵を手に持つと彼のところまで歩み寄り、屈むと鍵を持っていない方の手で貞操帯に触れた。

「あんっ」

変な声を出すな。
鍵を持っていない方の手で触れただけで、男子生徒は喘いだ。
早く終われとばかりに俺は生徒の前を掴む。

「んふぅ!」
「一々喘ぐな」

今度こそ俺の口から文句が出た。

「あ、あ、あっ、あぁああぁぁ~ぅ」

俺の言葉に対して男子生徒は感極まったのか、腰をカクカクと震わせる。

(やり辛いな…)

男子生徒の腰が震えると鍵が鍵穴に入らないため、もう片手で貞操帯を強く握って震えを押さえる。
やっとのことで鍵が挿入され、カチャンと金属が噛み合った小さな音を残して南京錠が外れた。

(やった!外れた!)

次の瞬間、男性器を覆っていた貞操帯の鉄の檻部分が上に向かって吹き飛んだ。
一体何が起こったのか、その時の俺には理解できなかったが、鍵が外れたことにより自由になった男性器が勃起の力で反り上がり、覆っていた金属部分を天井に打ち上げたのだった。

(そんな事ってある!?)

そして、貞操帯を外すために屈んでいた俺の顔面に向かって狙いを定めたかのように、生徒の男性器から勢いよく白濁が飛び出した。
こんなピタ○ラスイッチなんて嫌だ。
思わずポカンと呆けていた俺の口内に白濁が飛び散り、顔面にぶち撒けられた。

「ゲホッ!ごホッ!!」

青臭いオスの匂いと味に咽ながらその場で俺はうずくまり、口の中に入った精液を吐き出した。
対する男子生徒は、吐精後も腰を震わせながら熱に浮かされた快感に身を任せていた。

「あぁっんあう、はうっ、ベリル様のお顔にっ!ぼくのっ!はぁうっ」

顔についた精液を拭おうとしたが、精神的なショックからはまだ立ち直っていない。
俺の銀髪に絡みつく精液を忌々しそうに手元で拭うと顔を上げる。
そこには…先程達したばかりだというのに、すでに第二波を装填して勃ち上がった男子生徒のイチモツがあった。

(まずいまずいまずいまずい)

思っていた以上に男子生徒の股間と俺の顔までの距離が近い。
本能が警報を鳴らしているのに身体は全然動かない。
男子生徒は興奮状態のまま俺に覆いかぶさってくる。
スローモーションで後ろに倒れる俺と、腹の上へ馬乗りになる勃起した男子生徒。
もうだめだと思った。

「ひっ!」

喉奥で引きつった悲鳴を吐き出すと、俺は後頭部を強かに打ち付ける。
頭の痛みよりも眼前の恐怖に意識が集中し、釘付けになっていた。
両手で暴れようとしても、男子生徒が腰ごと両腕を束ねて跨っているので俺は動けない。

「なんのつもりだ!?」
「ふへへっ…なにも、僕は、ベリル様に挿入したいとか、そのおくちで僕のをぺろぺろ舐めて欲しいなんて贅沢は言いません…恐れ多いですからねっ!」

言いながら男子生徒は俺のブレザーの上着のボタンに手をかけて外す。

「お、おい…よせっ」

今から何が起こるかもわからない恐怖に怯えた。

「お腹を借りますねっ、んふぅっ」

男子生徒は俺の腹の上に跨り、胸からへその部分に勃起した自らの男性器を押し当てて擦り上げた。
制服のシャツの上から、ボタンの引っかかりを男性器の裏で感じながら気持ちよくなっている変態だった。

「はぁ、はぁ、ベリル様っ!べりるっさまぁ!」

シャツの上からでも固くなった男性器の感触がわかる。
腹と胸に擦りながら腰をヘコヘコと前後に動かし男子生徒は喘ぎ続ける。
完全に男子生徒だけが気持ちいいソロプレイをまざまざと見せつけられている状況に陥った。
俺は怖かった。
押し倒されたまま起き上がれないどころか、その腹の上でシーソーをはじめる目の前の男が、何を考えているのかわけがわからなくて泣きたくなった。

「あんっふぅっ、はうっ!」

俺の薄い胸板に股間を押し当ててグリグリと振ると、男子生徒は二度目の射精に打ち震えた。
吐き出された白濁の軌道を避けることもできず、俺は顔面にもう一度男子生徒の精液を食らった。
今度こそ俺は泣いた。
目尻いっぱいに溜めた涙が頬を伝ってこぼれ落ちる。

(怖い)

狂人を目の前にして俺は声もなく泣いた。

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