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崖の上の古城

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次の日、14時頃に護衛長の邸を出発。
パーティー会場へ向かう私達の護衛は想像してたより少ない。私が港に行った時の方が、前後の馬車の数が多かった気がするわ。
きっと、側にいないだけで、色んな地点に配置されてるよね。

馬車ではトーマもミランダもマイセンもヘンリーも殆んど喋らない。
トーマもミランダもマイセンも、辺境伯に大切な人を殺されたんだから、心中穏やかじゃないよね。『復讐したい』って気持ちが全くない訳がない。いつも冷静な3人だけど、辺境伯を見つけたら抑えられない気持ちが出てくるかもしれない。私なら『直接仇を討ちたい』と考えるもの。

何となくヘンリーに視線を向けると、言いたい事が伝わったのかコクンと頷いた。


何度か休憩を挟んで、私達は会場に着いた。

夕日が城を照らして、オレンジに見える。

「すごい綺麗ね。けど、崖の上に城があるなんて珍しいわ。」

もう、崖の上というか、崖っぷちというレベルだけど。

「昔はここまで崖に近くなかったらしい。築城してから何度も大雨が降って、地形が変わったんだろう。この城の利用は、このパーティーが最後だ。」

……トーマは流石ね。
ここに着いた瞬間から表情が違うわ。さっきまで難しい顔をしていたのに、もう『優しいラッセン侯爵』だもの。

「ここはパーティーの為に作られた城なの?」
「いや、もとは王族が所持していた城だ。『女の泣き声がする』と言って、何代か前の王妃が捨てたという噂だ。」
「お化けの城なの!?」
「残念な事に『泣き声』は谷に強風が吹いた時に起こる音だ。」

そういうのは、先にタネ明かししないでほしいわ…。


外観も綺麗だったけど、会場内はそれ以上だった。
もともと王族の持ち物というだけあって豪華だわ。床や柱は真っ白な大理石、大きなステンドグラス、シャンデリアがいくつもある。

会場を歩いていると、沢山の人が挨拶に来る。
この中に辺境伯の仲間がいてもおかしくないのよね。ランスロット様のお客様にそんな人はいないと思うけど、気を引き締めないと。

挨拶が少し落ち着いた頃、赤毛の男性から話しかけられた。

「ルーナがラッセン侯爵夫人とは、世も末だな。」

なんて失礼な男なの!

「…見ず知らずの男性に、名を呼び捨てにされる覚えはないのだけど。」
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