上 下
244 / 303

公爵夫人2

しおりを挟む
馬車で出発して5分ほどで公爵邸に到着。
目と鼻の先だった…。

「お待ちしておりました。どうぞ此方へ。」

キリッとした年配のメイド長を筆頭に、使用人がずらりと並んで私達を迎えてくれた。
こういうの、馴れなくて緊張するわ。

「ルーナお姉様!!」
「わっ!?」

客間に入ったとたん、アイリス様が私に飛び付いてきた。その勢いで、バスケットにいれていた手作りの花が落ちてしまった。

「このお花、お母様に?」
「はい」

花って解って貰えて良かった。第一関門突破よ。

「昔はお庭に植えたので、今回は直接お渡ししようと思って。」
「嬉しい!お母様、見て!!このボロボロのお花!!」

ボロボロのお花…、間違えてないけど、その名前は切ないわ。

「アイリス、お話は席についてからにしなさい。失礼でしょう。皆さん、来てくれてありがとう。どうぞ、こちらへ。」

クラリス様が、笑顔で私達を迎えてくれた。

「ごめんなさいね。わたくしから会いに行ければ良かったのだけど。」
「お気になさらないでください。ベッドから起きて生活出来るているようで、安心しました。」
「ふふ、ありがとう。」

少し痩せてはいるけれど、元気そうで良かった。それでも辛いはずだし、病が悪化しないとは言い切れない。夫人の負担にならないように話を進めないとね。

「クラリス様、このボロボロの花…、受け取って頂けますか。私が作った『夜に咲く朝顔』です。本来なら、もっと気の利いた物を用意すべきなのですが、これしか思い付かなかったので。」
「また、この花を見れる日が来るなんて、とても嬉しいわ。」

こんなに喜んで貰えるなんて、きっと特別な事があったんだわ。何故私は憶えていないのかしら…。本当に申し訳ない。

「クラリス様、その花を見つけた時の状況を教えて頂けませんか?妻は『秘密だ』と言って教えてくれないもので。」

トーマ、ナイスアシストよ!
私が秘密にしてるって事にしてくれれば、忘れてた事を知られずに内容を知る事が出来るもの。

「このお花を見つけた日は『庭に花を植えて逃げた犯人は誰だ?』って、邸はちょっとした騒動になったわね。」
「妻が何かご迷惑をおかけしたのでしょうか…。」
「いいえ、ルーナさんはこっそり花をお庭に植えただけよ。それ以外、何もしていないの。」
「どうして犯人がルーナだと解ったのですか?」
「医師のランプ先生が『その花はスコット伯爵のご令嬢が作ったものだ』って、大笑いしながら教えてくれたのよ。伯爵に急用が出来て、ランプ先生がホイットマン様の邸からルーナさんを送り届ける事になったらしいの。その途中に邸へ寄ったから、お庭に植えたんだろうって。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない

猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。 まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。 ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。 財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。 なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。 ※このお話は、日常系のギャグです。 ※小説家になろう様にも掲載しています。 ※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。

他人の人生押し付けられたけど自由に生きます

鳥類
ファンタジー
『辛い人生なんて冗談じゃ無いわ! 楽に生きたいの!』 開いた扉の向こうから聞こえた怒声、訳のわからないままに奪われた私のカード、そして押し付けられた黒いカード…。 よくわからないまま試練の多い人生を押し付けられた私が、うすらぼんやり残る前世の記憶とともに、それなりに努力しながら生きていく話。 ※注意事項※ 幼児虐待表現があります。ご不快に感じる方は開くのをおやめください。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

男爵令嬢が『無能』だなんて一体誰か言ったのか。 〜誰も無視できない小国を作りましょう。〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「たかが一男爵家の分際で、一々口を挟むなよ?」  そんな言葉を皮切りに、王太子殿下から色々と言われました。  曰く、「我が家は王族の温情で、辛うじて貴族をやれている」のだとか。  当然の事を言っただけだと思いますが、どうやら『でしゃばるな』という事らしいです。  そうですか。  ならばそのような温情、賜らなくとも結構ですよ?  私達、『領』から『国』になりますね?  これは、そんな感じで始まった異世界領地改革……ならぬ、建国&急成長物語。 ※現在、3日に一回更新です。

異世界でフローライフを 〜誤って召喚されたんだけど!〜

はくまい
ファンタジー
ひょんなことから異世界へと転生した少女、江西奏は、全く知らない場所で目が覚めた。 目の前には小さなお家と、周囲には森が広がっている。 家の中には一通の手紙。そこにはこの世界を救ってほしいということが書かれていた。 この世界は十人の魔女によって支配されていて、奏は最後に召喚されたのだが、宛先に奏の名前ではなく、別の人の名前が書かれていて……。 「人違いじゃないかー!」 ……奏の叫びももう神には届かない。 家の外、柵の向こう側では聞いたこともないような獣の叫ぶ声も響く世界。 戻る手だてもないまま、奏はこの家の中で使えそうなものを探していく。 植物に愛された奏の異世界新生活が、始まろうとしていた。

無能とされた双子の姉は、妹から逃げようと思う~追放はこれまでで一番素敵な贈り物

ゆうぎり
ファンタジー
私リディアーヌの不幸は双子の姉として生まれてしまった事だろう。 妹のマリアーヌは王太子の婚約者。 我が公爵家は妹を中心に回る。 何をするにも妹優先。 勿論淑女教育も勉強も魔術もだ。 そして、面倒事は全て私に回ってくる。 勉強も魔術も課題の提出は全て代わりに私が片付けた。 両親に訴えても、将来公爵家を継ぎ妹を支える立場だと聞き入れて貰えない。 気がつけば私は勉強に関してだけは、王太子妃教育も次期公爵家教育も修了していた。 そう勉強だけは…… 魔術の実技に関しては無能扱い。 この魔術に頼っている国では私は何をしても無能扱いだった。 だから突然罪を着せられ国を追放された時には喜んで従った。 さあ、どこに行こうか。 ※ゆるゆる設定です。 ※2021.9.9 HOTランキング入りしました。ありがとうございます。

使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。気長に待っててください。月2くらいで更新したいとは思ってます。

処理中です...