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雨上がりの夜2

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馬車から宿の方を見ると、雨上がりの夜空に黒い煙が上っているのがみえる。

「侯爵、『2人を伯爵邸へ』とアーロ様が仰っていましたが、どうなさいますか?」
「いや、警察署へ向かう。迷惑はかけたくない。」
「かしこまりました。」

何故このタイミングで火事が起こったのかしら…。もし付け火だったなら、私が港の事に首を突っ込んだ事が原因かもしれない。

「ごめんなさい…。トーマが来るのを待っていれば、こんな事にはならなかったのに…。」

無茶な行動をとる犯人がいるかもしれないとは思っていたけど、無差別に人を殺してしまうような方法をとるなんて考えもしなかったわ。
私のせいで全く関係のない誰かが亡くなってたらと思うと怖い。

「ルーナは事件と関係ない。この話は着いてからにしよう。」

そう言って、トーマが私の肩を抱き寄せた。

気付かなかったけれど、私は震えていた。


・・・・



ルーナはこの事件のせいで付け火が起こったと思っているんだろうが、恐らく違う。

この火事はルーナと俺の2人を狙っていたんだ。

偶然なのかどうかははっきりしないが、ここに俺達がいるのを知った誰かが火を付けた。

宿は煉瓦作りで、今日は豪雨だった。外から火を付けるのは難しい。宿を燃やすのが目的であれば、今日を選ぶわけがない。
1階2階には兵や警官がいるから火が出ればすぐに消し止められるし、捕まるリスクも高い。もし口封じが目的だったなら、クリムとルーナが話している時に火を付けるだろう。

おそらく、火がつけられたのは俺達が3階に移った直後だ。3階は部屋数も少ないし、廊下に人はいなかった。火を付けてもなかなか気付かれないだろう。
外壁は煉瓦でも、建物内は燃えやすい物が山ほどある。油でもまけば簡単に炎は広がる。

現に、外から見た時、一番燃えていたのは3階だった。

何度も戦線に立った経験のあるパウロだからこそ俺達を助けにくる事が出来たが、そうでなければ誰も対処出来なかっただろう。
俺とルーナは確実に死んでいた。

リスクを負っても俺達を殺したい人間…。
辺境伯に関係があるとしか思えない。

今、護衛長がいないのは何故か。
辺境に行っているはずだ。

軍を動かしてないなら、辺境伯を真正面から捕らえるつもりは無いのだろう。
辺境伯が死ぬか捕まるかするまで、ルーナを
100%安全な所へ預けないと…。
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