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お遣い3

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「ルーナ、ここから逃げるわよ。」

ミランダに腕を捕まれてドアまで走るけれど、シリウスに阻まれた。

私を上座に座らせたのは客だからではなく、こういう時の為だったのね。
入口に近い方なら簡単に逃げられたのに。

「ミランダ・フォスター、お前も逃がすつもりはない。」

そう言って、シリウスが銃を取り出し私達に向けた。

「ミランダ、私の後ろに下がって!!」

私を背に庇うミランダに必死で言うけれど、聞き入れてはくれない。

「ルーナ・ラッセンがいればいい。フォスター、貴様は旦那と同じ所へいくといい。」
「やめてっ!!」

私のせいでミランダが殺される!

「…ルーナ、もう大丈夫よ。」

ミランダが私にボソッと言った。

バンッ

突然大きな音がしたけれど、それは発砲した音じゃなく、部屋のドアが開いた音だった。

部屋の中に入ってきたのは、トーマと護衛長にそっくりな若い男性。

ミランダだけはそっちに気をとられる事もなく、隙を見て銃を持つシリウスの手に回し蹴りを入れた。

「っ!?」

シリウスの持っていた銃は、蹴り飛ばされてゴトンと床に落ちた。

「さすがミランダだね。」

そう言いながら、護衛長似の男性は笑顔で銃を拾っている。
どうしてこの状況で笑えるのよ。…たぶんレオン様だよね。護衛長をそのまま若くした感じだし。

トーマの表情はいつもとあまり変わらないけど、雰囲気が違う。空気が凍てついてる。いつもなら私達にすぐに声をかけてると思うけど、それもない。
…優しいラッセン侯爵を演じてなければ、こんな感じなの?
トーマに会ったらめちゃくちゃ文句を言おうと思っていたけど、反抗しない事にしよう。


「どういうつもりですか?来客中に勝手に部屋に入ってくるなど。」

タヌキジジィの無視して、トーマはミランダに言った。

「ミランダ、ルーナを連れてこっちへ。」
「はい。」

シリウスから隠すようにして、ミランダは私をトーマの元へ連れていってくれた。

「2人とも、怪我は?」
「大丈夫よ。」
「ありません。」

叩かれた事は黙ってよう。夫人がふらつくほどの力を込めて叩き返したなんて、知られたくないし。

「侯爵、よろしいですか?」
「ああ、先に処理してくれ。」
「ありがとうございます。」

処理って、レオン様は何をするのかしら。

「公爵、家宅捜索令状と夫人には逮捕状がでていますので、こちらで身柄を拘束させていただきます。」

レオン様が言うと、部屋の中に男の人が3人入ってきた。それを見た夫人は、急いでタヌキジジィの後ろに隠れた。

「私が一体何をしたっていうの!!」
「公爵邸で雇っていた使用人の家族から、捜索願いがいくつか出ています。」
「辞めた女がどうしてるかなんて、私に関係ないわ!」
「心配しないで下さい。令状は別件ですよ。」
「別件ですって?」
「殺人と死体遺棄。地下室の棺の中の白骨化した女の遺体、厩舎裏には頭蓋が陥没した人骨、その他諸々が埋まっていました。既に確認済みです。」
「そんなもの知らないわよ!私が犯人だという証拠はどこにあるの!」
「今まで公爵邸という厚い壁に覆われていただけで、犯人は解っていたんですよ。ありがたい事に、ラッセン侯爵の後押しで令状が出ました。」

…棺に白骨化した死体、頭蓋骨陥没、その他諸々…、何人も殺してるって事だよね。夫人が殺人鬼と知ってて、トーマは私をここに送り出したって事?
なんて卑劣な男なの!帰ったらすねをおもいっきり蹴ってやるわ!

「レオン・マーフィー、私は捜査の許可はだしていないぞ。」
「我々は閣下のめいがなければ動けないような組織ではありませんので、ご安心下さい。」

『閣下』と呼んでいても、全く敬ってるように見えないのは、レオン様の綺麗すぎる笑顔のせいかしら。

「公爵夫人、行方不明になった使用人が『女』だと、私は一言もいってませんよ。何故解ったのか、それも後でお伺いしますね。」
「…っ!?」
「連れていけ。」

レオン様が命令すると、あっという間に3人は夫人を連れて部屋を出ていった。
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