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憂さ晴らし

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第二王子の事を考えて食堂まで来たけれど、後悔しかない。

何故ミネルバが同席してるの…。
私はまわりから哀れみの視線を向けられてるしね。

「マフィネス様、貴方はこの状況を知ってて私を呼びに来たのよね?」
「ああ…」
「第二王子の話、あれは嘘なのね。同情を買えば私が付いてくると。」
「あれは本当だ。」
「そう。では、玉座についた時に証明して貰う事にするわ。兄弟共に笑い者になる日が楽しみね。」


第二王子を心配する私の気持ちを踏みにじるような事をするなんて、酷いよね。
本当にオルセンが社交不安症なら、マフィネスが守れば良いのよ。悪役令嬢に任せるんじゃなくてね。

「シュナ様、食べないのですか?」

ミネルバに『シュナ』と呼ぶ事を許可した覚えはないんだけど。まぁ、いいけどさ。

「朝から婚約者に殺されかけたので、食欲も起こりませんわ。」

手の腫れは全然ひいていない。それどころか、指先や手首まで紫になってきてるんだよね。
医師に診て貰った方がいいかも。

「シュナ…、いい加減にしろ。」
「……」

ここで私がアレックスに何か言い返せば、ミネルバがしゃしゃり出てきて茶番の幕開けだよね。
面倒だし、無視しよ。

「私、午後の授業は休みます。食欲もございませんので、退席致しますわ。」

食堂をでて思い出したけど、帰りたくてもネロが迎えに来るまではどこにもいけないんだった。
どこか時間を潰せる所はないかな。

そうだ!
図書室に行こう!
街の本屋より学校の図書室の方が本は多いし、もしかしたら魔王召喚の事がわかるかもしれない!

この学校の図書室、泰子わたしが通ってた高校の講堂の2倍以上はあるよね。おまけに2階もあるし…。
この中から魔法の本を探すって、めちゃくちゃ大変なんじゃないかな。でも、司書に『魔法の本を探して』なんて言えないしね。

入り口に近い本棚には人気のある本が置かれてるだろうし、奥の棚から探そう。

ん?
図書室の半分を過ぎた辺りで、何やら声がする。

「そこを通してください…」
「えー、どうしよっかなぁー。」

本と本の隙間から覗くと、華奢な女子生徒に男2人が言い寄っている。
女の子は貴族じゃないみたいだし、逆らえないって解っててやってるんだよね。

小心者のクズ男。
今、私の憂さを晴らすにちょうど良い人材発見。
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