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はじめての外出
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「何ここ…」
想像していたよりも質素ですな…。
洋服とか宝石とか、高級品ばかり扱うお店が建ち並んでいるかと思えば、そんなものは全然ない。
学校の周辺だからこんなもんなのかな…。日本でも学校や病院の周辺には制限があるし、ここもそうなのかも。
10分ほど歩いていると喫茶店っぽいところを見つけた。カフェではなく、レトロな純喫茶な感じがいい!
「いらっしゃいませ」
店内には小さな丸いメガネをかけた中年のおじさんが1人いるだけ。多分、この店のマスター。それ以外にお客は誰もいない。
授業をサボって喫茶店に来る生徒はいないから当然だけどね。
「おじさん、コーヒーをお願い。」
「コーヒー……何でしょうか、それは。」
もしかして、コーヒーを知らないのかな。
中世ヨーロッパからイメージした世界って1巻の後書きに載ってたっけ…。
紅茶文化でコーヒーはこの国に存在しない設定なのね。
「では、紅茶を下さい。」
「はい、すぐに入れてまいります。」
おじさんはペコリと頭を下げてカウンターへ戻っていった。
さて、頭を整理しよう。
この小説はまだ序盤。
今は聖女召喚に失敗したと思われている状態。
聖女は通常『青い泉』から出てくるのだけど、ミネルバは泉から出てこなかった。
何故か召喚と同時に平民の女の子に転生してしまうんだよね。
小説のミネルバは転生者だけど、この物語を知ってる設定でもないから、私と境遇は違う。
けど、それはもう少し様子を見て判断しないと…。
小説のシュナは前世の記憶なんてなかった。少なくとも、そんな設定はなかった。でも、今は泰子の記憶がある。ミネルバにも変化がある可能性は十分ある。
ハンカチと土下座、ストーリー通りに進んでいるだけならいいけど、聖女ミネルバが私と同様に『小説の知識のある転生者』だったら、ややこしい事になるかもしれない。
結末を受け入れられない転生者だっているはずだし…。
ハンカチのシーンから計算すると、私が死ぬのは約2年後…。
ミネルバが私を必要以上に攻撃してくるなら、学校なんて辞めて旅に出るのも良いかもしれない。
高級なホテルに泊まって、美味しいものを食べて。
…でも、もともと回りが山ばかりの町に生まれた私にとって、綺麗な森を見たいとかいう願望は全くない。
海に行ったからって泳げないなら楽しくもない。
旅は止めよう。
「どうぞ。」
おじさんはお茶と一緒に、少し湿ったペーパーナプキンを持ってきてくれた。
血を拭くために持ってきてくれたんだよね。
「ありがとう。」
「こんなもんしかないが、そのままよりましじゃからな。」
おじさんは優しく笑ってカウンターへ戻っていった。
「…美味しい。」
これから毎日、朝はここで過ごそう。
転生2日目にして、有意義な時間の使い方を1つ手に入れてしまった。この調子でどんどん楽しい事を増やそう!
そうだ!
お茶にはお菓子!
「おじさん、何かお菓子はないかしら?」
「んー、妻が生きてた頃は軽食を出してたんじゃが…」
という事は、今はお茶オンリーで勝負してるってことだよね。お客さんが減るのも納得。
けど、ここのお茶は美味しいし、この純喫茶風レトロ癒し空間を絶対に失いたくない。
ここは、侯爵家の力を使おう。
「お菓子職人を連れてくるわ。」
「うちには人を雇う余裕はないんじゃよ。」
「私の家から1人連れてくるだけだから、おじさんが給料を払う必要はないわ。こちらが食材を用意するしキッチンの利用料も払うわ。」
そもそも、私がここを利用したいからであって、おじさんのためでも何でもないからね。私の至福の一時のために、私が死ぬまでは経営を続けてもらわないと。
シュナは何人もパティシエを雇ってる。その1人をここに送り込めば、私は美味しいお菓子が食べれる。出来るなら明日からでも来て欲しい。
となると、この辺にパティシエの住む家がいるわね。空き家を探さないと…。
この世界に不動産屋とかあるのかな?
仲介業者とか…。
とりあえず、それはネロに聞いてみよう。
お茶を飲み終わってから気が付いた事がある。
私、お財布持ってない……。
想像していたよりも質素ですな…。
洋服とか宝石とか、高級品ばかり扱うお店が建ち並んでいるかと思えば、そんなものは全然ない。
学校の周辺だからこんなもんなのかな…。日本でも学校や病院の周辺には制限があるし、ここもそうなのかも。
10分ほど歩いていると喫茶店っぽいところを見つけた。カフェではなく、レトロな純喫茶な感じがいい!
「いらっしゃいませ」
店内には小さな丸いメガネをかけた中年のおじさんが1人いるだけ。多分、この店のマスター。それ以外にお客は誰もいない。
授業をサボって喫茶店に来る生徒はいないから当然だけどね。
「おじさん、コーヒーをお願い。」
「コーヒー……何でしょうか、それは。」
もしかして、コーヒーを知らないのかな。
中世ヨーロッパからイメージした世界って1巻の後書きに載ってたっけ…。
紅茶文化でコーヒーはこの国に存在しない設定なのね。
「では、紅茶を下さい。」
「はい、すぐに入れてまいります。」
おじさんはペコリと頭を下げてカウンターへ戻っていった。
さて、頭を整理しよう。
この小説はまだ序盤。
今は聖女召喚に失敗したと思われている状態。
聖女は通常『青い泉』から出てくるのだけど、ミネルバは泉から出てこなかった。
何故か召喚と同時に平民の女の子に転生してしまうんだよね。
小説のミネルバは転生者だけど、この物語を知ってる設定でもないから、私と境遇は違う。
けど、それはもう少し様子を見て判断しないと…。
小説のシュナは前世の記憶なんてなかった。少なくとも、そんな設定はなかった。でも、今は泰子の記憶がある。ミネルバにも変化がある可能性は十分ある。
ハンカチと土下座、ストーリー通りに進んでいるだけならいいけど、聖女ミネルバが私と同様に『小説の知識のある転生者』だったら、ややこしい事になるかもしれない。
結末を受け入れられない転生者だっているはずだし…。
ハンカチのシーンから計算すると、私が死ぬのは約2年後…。
ミネルバが私を必要以上に攻撃してくるなら、学校なんて辞めて旅に出るのも良いかもしれない。
高級なホテルに泊まって、美味しいものを食べて。
…でも、もともと回りが山ばかりの町に生まれた私にとって、綺麗な森を見たいとかいう願望は全くない。
海に行ったからって泳げないなら楽しくもない。
旅は止めよう。
「どうぞ。」
おじさんはお茶と一緒に、少し湿ったペーパーナプキンを持ってきてくれた。
血を拭くために持ってきてくれたんだよね。
「ありがとう。」
「こんなもんしかないが、そのままよりましじゃからな。」
おじさんは優しく笑ってカウンターへ戻っていった。
「…美味しい。」
これから毎日、朝はここで過ごそう。
転生2日目にして、有意義な時間の使い方を1つ手に入れてしまった。この調子でどんどん楽しい事を増やそう!
そうだ!
お茶にはお菓子!
「おじさん、何かお菓子はないかしら?」
「んー、妻が生きてた頃は軽食を出してたんじゃが…」
という事は、今はお茶オンリーで勝負してるってことだよね。お客さんが減るのも納得。
けど、ここのお茶は美味しいし、この純喫茶風レトロ癒し空間を絶対に失いたくない。
ここは、侯爵家の力を使おう。
「お菓子職人を連れてくるわ。」
「うちには人を雇う余裕はないんじゃよ。」
「私の家から1人連れてくるだけだから、おじさんが給料を払う必要はないわ。こちらが食材を用意するしキッチンの利用料も払うわ。」
そもそも、私がここを利用したいからであって、おじさんのためでも何でもないからね。私の至福の一時のために、私が死ぬまでは経営を続けてもらわないと。
シュナは何人もパティシエを雇ってる。その1人をここに送り込めば、私は美味しいお菓子が食べれる。出来るなら明日からでも来て欲しい。
となると、この辺にパティシエの住む家がいるわね。空き家を探さないと…。
この世界に不動産屋とかあるのかな?
仲介業者とか…。
とりあえず、それはネロに聞いてみよう。
お茶を飲み終わってから気が付いた事がある。
私、お財布持ってない……。
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