上 下
16 / 32

鷹狩2

しおりを挟む
「もしよかったら、2ヶ月後に王家主催の狩猟大会に出場してみませんか?それは鷹狩りではないので、楽しめると思いますよ」
「男性が出場するものでしょう?」
「女性の出場も許可されていますよ。地元の大会には毎年出場していましたよね?」
「ええ、無理矢理にね」
「もしかして、狩りは嫌いですか?」
「いいえ、好きよ」

 私を大会に出場させてた理由が、気に食わないだけ。
『流れ弾に当たって死ねばいいのに』って、父が大会出場者に言ってたのを聞いてしまったのよね。暗に『私を殺せ』と命令してたのよ。だから私は、誰にも追って来れないような山奥に入って、狩りをするようになった。

「リアム様は出場するの?」
「はい、ライリー王子に命令されるので」

 私とリアムが話していると、鷹匠のおじさんが教えてくれた。

「ライリー王子はこの国1番の狩りの名手で、それに肩を並べるのがハンストン様なのです」
「それは凄いわね」

 ライリーはリアムがいないと張り合いがない。それくらい2人は回りと差があるって事だよね。
 けど、私も狩りには結構自信はあるのよね。――これは使えるかもしれない。

「リアム様、私と勝負しませんか?」
「勝負?」
「狩猟大会で私が1位になったら、ハリーに会わせてください」
「それは出来ません」
「病がうつるからですか?」
「そうです」

 その嘘には、しっかり騙されてあげるわよ。
 別に、ハリーに会いたくてもちかけた勝負じゃない。これは、伯爵代理の期限が決まらなかった時のための保険だもの。

「わかりました。では、私が勝ったらハリーと離婚させてください」
「は……?」
「ハリーに会えないまま、伯爵家で1人寂しく仕事だけをして生きていくなんて耐えられません。離婚してくれないのであれば、私は今すぐ家を出て、修道女になります」
「……」

 すぐに『駄目です』って言われると思ったのに、リアムからは返事がない。

「……兄が好きなんですか?」
「ええ。だから会わせてと言ってるのよ」
「ですが、離婚したら兄には二度と会えませんよ」
「病の間、ハリーに会えないのだから、いっそ離婚した方が諦めがつきます。財産も、何も要求しません」
「女性が1人で生きていけるはずがないでしょう」
「それはリアム様が気にする事ではありません。答えはこの勝負を受けるか否かです」
「……解りました。その勝負、受けます」
「ありがとうございます」

 この勝負に勝てば、私は確実に伯爵邸から逃げられるわ。

「受けますが、こちらも条件を課します」
「何でしょう?」

 どうせ、『二度とハリーに会いたいと言うな』とか『真面目に働け』だよね。

「私が優勝したら、結婚してください」

 ……聞き間違いかしら。今『結婚』って聞こえたのだけど。

「リアム様も冗談が言えるのですね」
「冗談ではありません」

 冗談であるべきでしょ……。

「重婚は重罪です。私は捕まりたくありません」
「もちろん、兄と離婚して貰います」
「……」

 何を言ってるの、この人……。

「私が優勝してハリーと離婚。それを止める為に勝負を受けるのですよね?」
「はい」
「リアム様が優勝して、私が誰かと結婚した場合でも、ハリーと離婚するのは変わらないと思いますが……」

 勝負をする意味がなくなるよね?

「私の条件は『クレアの結婚』です」

 もしかして、リアムは私を追い出したいのかしら。でも、理由があって追い出せない。私がハリーのいない間に別の男と浮気をして、離婚させられて再婚…って事にしたいのかも。伯爵家には出来るだけ汚名を着せないためにね。

「もし負けた場合、私の次の結婚相手は誰になるのですか?」
「……え?……今ので解りませんか?」
「相手のお名前、言いましたか?」
「言ってませんが……」

 ボソボソ言いながら、リアムが少し悄気しょげてるように見えるのは気のせいかしら。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

君を愛することは無いと言うのならさっさと離婚して頂けますか

砂礫レキ
恋愛
十九歳のマリアンは、かなり年上だが美男子のフェリクスに一目惚れをした。 そして公爵である父に頼み伯爵の彼と去年結婚したのだ。 しかし彼は妻を愛することは無いと毎日宣言し、マリアンは泣きながら暮らしていた。 ある日転んだことが切っ掛けでマリアンは自分が二十五歳の日本人女性だった記憶を取り戻す。 そして三十歳になるフェリクスが今まで独身だったことも含め、彼を地雷男だと認識した。 「君を愛することはない」「いちいち言わなくて結構ですよ、それより離婚して頂けます?」 別人のように冷たくなった新妻にフェリクスは呆然とする。別人のように冷たくなった新妻にフェリクスは呆然とする。 そして離婚について動くマリアンに何故かフェリクスの弟のラウルが接近してきた。 

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ

曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。 婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。 美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。 そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……? ――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

処理中です...