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「……私は何を書けば良いのかしら。」

クララが答えてくれるはずもないけれど、弱音をはくくらいかまわないよね。帰りたいとか言って困らせてる訳でもないし。

「シンシア様をジブリール様ご自身にして書いてみてはいかがですか?」
「それだと、私の日記になるだけよ。あの拗らせ……じゃなくて、素敵な王太子殿下が求めているのは、シアとの恋物語よ。」

ハッピーエンドにしたというのに、ボツだなんて……酷すぎるわ!
悲恋でもいいの?もしかして、それで恋を諦める?
それはないわね。シアを探すとか、馬鹿げた事を言っているのだから。

この際、設定を少し変えよう。

本来なら再会するのは戦場になる村なのよね。そこで王子と再会するけれど、王子は変装しているシアに気付かない。
…っというストーリーだけど、そうなると拗らせ男は戦に行く事になる。普通、第一王子が戦場に行くなんてありえない。
この案はボツよ。

何とかシアに出会える可能性のある状況になるように考えるのよ。

……有力貴族の公爵家の娘にしよう。
それなら、拗らせ男と会う事も不自然ではないし、もちろん結婚も出来るわ。
シアの設定だけ変えて、話は考えていた通りに進めよう。


カポネには有力貴族は3つの公爵家だけれど、私の物語は4つある。

狼の紋章を持つ公爵家。

狼の紋章、ウェルシーアンは没落して今は途絶えた血筋だけれど、実は細々と生きていて王の首を狙ってる…というのを今から書き始めるつもりだったけど、シアはその一族の生き残りって事にしよう。

王を殺す為にシアを道具として使われるのが嫌で、産みの親が妹に娘を託た……。

なんか、良い感じだわ!

敵対する2人が結ばれる!庶民と王子の設定は崩れてしまうけれど、拗らせ男は納得するわよ。
物語の中の国の状勢が書かれているし、最後はハッピーエンド!
文句なしよ。


気になるのは、この国の有力貴族である3つの公爵家の紋章のモチーフが、私の小説と同じという事。

鷹、蛇、薔薇…同じなのよね。
家名は違うけれど、驚いたわ。クララに教えて貰った時に、もう1つないか聞いてしまったくらいにね。

書いてボツになるのは嫌だから、予めあらすじを拗らせ男に確認させればいいかも。

サラサラっとあらすじを書いてノートを提出すると、次の日また呼び出される事になった。
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