初恋をこじらせてる王太子の婚約者候補になりました

小屋4

「兄上？」

シャト王子の不安そうな顔…。見るのは辛いけれど、現実を知ってもらわないとね。

「シャト、俺はジブリールと結婚する事はない。」
「…何故ですか？」

可愛いシャト王子が泣きそうだわ！

「……姉上はリルじゃないと嫌です。」

シャト王子の瞳に涙が溢れてる。……泣き虫なところも可愛い！

「シャト、泣くな。……もしかしたら、可能性は…ある……かもしれない。」
「本当？」
「ああ。」
「絶対？」
「俺はシャトに嘘はつかない。」

……今きっぱり『結婚する事はない』って言ってたのに、よく嘘をつけるわね。
この拗らせ男、弟に弱すぎるわ。

『無理な事は無理』『違う事は違う』『駄目な事は駄目』、ちゃんとしつけないと大変なことになるのに。

こんな役立たずを頼った私が悪いのよ。きちんと説明しよう。

「シャト王子、結婚には陛下や王妃殿下の許可も必要ですし」
「父上と母上に相談してくるー!!」

そう言い残して、シャト王子は部屋を出ていった。

「え……ちょっと…」
「プッ…ククク……」

この男……

「笑ってないで止めてくださいよっ!!」
「許可されるとでも思っているのか？おめでたい女だ。」

いちいち言い方が腹立つのよね。この男は…。

「１つ確認しておきたいのですが、王太子様の婚約者が決まったら、私は実家に帰ってもいいのでしょうか？」

結婚するまでにシア探すと言っても、婚約者が決まった時点で日暮の宮を追い出されるのだし…。

「見つけられなかった時の事を考えるより、見つける方法を考えろ。」
「……左様でございますね。」

小説のヒロインであるシアを見つける方法なんて、あるわけないのよ。

「とりあえず、小説を書け。最低でも１日１ページだ。サボったら執筆専用小屋を作って、そこに詰め込むからな。」

そんな事で私を追い詰めてると思っているのかしら。
私は日暮の宮で虐められているのよ。昨日の朝食以降、食事すら用意されていないもの。その私が小屋で暮らすのを嫌がる訳がないじゃない。

独立した小屋に住めるなんて、ここへ来て最高条件だわ。