初恋をこじらせてる王太子の婚約者候補になりました

シンさん

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そんな馬鹿な話があるはずないよね。
婚約者候補なんて、適当に選べるわけじゃないもの。
でも、私が選ばれる理由が思い付かない……。

王太子にこちらから質問するのは失礼だけど、知っておく必要があるわ。

「私はどうして婚約者候補に選ばれたのか、お伺いしてもよろしいでしょうか…?」
「シアを探してもらう。呼んだのはそのためだ。」

予想通り…。

「シアを探すなら、私はマドーレにいた方が役に立つのではないでしょうか?」

『マドーレの娘か?』って聞いてたわけだし。

「命令いただけましたら、すぐにマドーレに帰ってシアをお探しいたします。」

上手くいけば帰れる!
国に帰って、適当に探しているふりをしていればいいのよ。

それにしてもこの人、シンシアを見つけてどうするつもりなのかしら。

シアとレインは、初めて会った日にお互い恋をするのよね。まだ結末まで書いていないけれど、『2人は結婚して、めでたしめでたし』よ。

まさか、そこまで小説と同じにならないわよね。
遠回しに聞いてみよう。

「シアを探す期限はあるのですか?」
「俺が結婚するまでだ。」
「かしこまりました。協力させていただきます。」

…もう結婚する気満々だよね。

この国、大丈夫かしら。
シンシアは平民なのよ。小説を読んでるなら、その辺りも理解してるわよね。
労働者階級の女と王子の結婚なんて、物語だから可能なのよ。何一つ貴族としての教育を受けていない女と、結婚なんて出来ないの!

まぁ、この国がどうなろうと知った事ではないけれど…。
ううん、駄目よ。カポネが傾けばマドーレも共倒れなんだから。

シアを見つけると、マドーレ的にはよくない。でも、探さないわけにはいかない。

こんなの、ど田舎出身伯爵令嬢には荷が重すぎよ。

どうしようかな…。私の想像のシンシアはいないけれど、王太子の出会いは嘘じゃないみたいだし。

「王太子殿下はシアとどこの国で出会ったのですか?」
「この国だ。」

私を呼び寄せた意味はあるの?

この国で出会ってるなら、この国にいるでしょ。平民が国境を越えて旅行や引っ越しなんて、経済的に考えて出来るはずがないのよ。

「ジブリール・マカロン」
「はい。」

何か気に障る事を言ったかしら。
さっきよりも王太子の視線が冷たいのだけど。視線で人を殺せるレベルよ。

「もう1つ……正直に答えろ。これを書いた時、君はどこにいた?」

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