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秘密の森

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「秘密の森?」
「はい、アイクが『明日行くんだ!』ってウキウキしてたんだけど、知ってる?」
「あ…ああ…」
何だか微妙な返事ね…。
「どんな所かは聞かないわ。アイクが私を驚かせようって楽しみにしてるから。」


まずい…。
あの森にはリタンから続く川が流れてる。川を見て何か思い出すかもしれない。
くそっ!何を軽々しく誘ってるんだっ!7才の俺!!

「アンドリュー様?」
「ああ、うん。何でもない。…そうだドロシー。」
「はい。」
「髪はいつからのばしてるんだ?」
「髪?3年くらいかな。…自分の事をあまり気にしなかったから。」
「気にしない?」
「いつか何処かに逃げないといけないかもしれないから、変装するなら長い髪の方が便利だし。」
「…もうそんな事はないから。楽しむ為に生きるんだ。」
「ふふ、アンドリュー様は優しいね。」
「…大人のアイクも俺そっくりだぞ。」
「アンドリュー様は『嫌な奴』ではないわ。」
「嫌な奴?」
「ノートンがアイクは『嫌な奴だ』とか『女性を平等に好きじゃない』とか『嫌な奴だから、酷い事を言われても気にするな』って、助言をくれたわ。」


ノートン、殺す…。


「ハハ…そんな事ないよ。今のアイクの延長上にいるから。」
「最近、悪知恵がついてきたわ。『今日は人参を食べなくていい日にする』とかね。そんなのないって言ったら、『もともと食べなくていい日だ』とか、言い返してくるようになったの。」

「…そういえば今日は『人参を食べなくていい日』だったな。」

「子供の時から本当にあった日なの?」

「ああ。アイクが決めてた…。」

…何でそんな日にしたんだ?父上もダージリンも、そんなもの絶対に許さないのに…。俺は7才で1度ドロシーに会ってたりするのか…?するわけないよな。今の記憶に無いんだから。
まぁいい、今はドロシーが俺を好きになるように頑張らないと。


「いつも本を読んでいるが、何か手がかりはあったか?」

「ううん、ない。昼は靴を作るけど、何の情報もないとただ作ってるだけになってしまうしね。あと、時々読めない字があるの。後でダージリンさんに聞いてみるんだけど、見た事のない文字だって。」

「ダージリンは3ヵ国語くらいは話せる…。なのに知らない…ソレッぽいな。」
「3ヵ国語も話せるの?」
「ノートンも話せるし、俺は5ヵ国語をマスターしてる。」
「すごい……王太子の影って大変なんだね。」
「それほどでもない。で、読めない文字ってどれだ?」

私は古い本を3冊、アンドリュー様に渡した。

「解らない所に栞を挟んでいるから…」

隣に座って本を読むアンドリュー様の顔。いつも笑ってたり焦ってたりするけど、真面目な横顔は凄く格好いい…。もともと綺麗な顔立ちだし、そりゃそうだよね。

「アイクが20才になって本を読んでたら、そんな顔になるんだね。」
「ん?」
「今日ね、アイクがベッドにゴロンとしながら本を読んでいたんだけど、凄く可愛かったわ。それが大人になるとアンドリュー様と同じ顔になるのかと思ってね。」
「今の俺は?可愛い?」
「…可愛くはないけど。」
「だったら、どう思う?」
「え?どうって…格好いい…んだと思う。」
「思う…。それはドロシーの意見?それとも客観的に見ただけ?」
「客観的…かな。」
「ドロシーの意見しかいらない。」
「…素敵だと思うよ?」
「何故最後に疑問符がつくんだ。」
「何故って…」
「ふふ、まぁいい。また今度聞くから。それより、読めたぞ。」
「ホントっ!?何て書いてあるのっ?」
「ドロシーは俺を好きになる。」
「……」
「冗談だ。まず1冊目『魔術の7つ道具は諸刃の剣』…やっと答えに近づいてきた。」

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