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王子が悪い男2
しおりを挟むボナースに2人を送った後、俺は聞いた。
「…クリフ、来週ニーナに会って何をするつもりだった?」
「エドワードがニーナと話していた件を進めようとしただけだ。」
「婚約破棄か…」
「その話があった事を俺は聞いてない。わざとか?」
「……そうだ。」
「悪いが出来る所まで話は進める。」
「しなくていい。」
「『婚約は破棄するつもりだ』と言ってなかったか?」
「…妹だった場合だ。」
「ありえないだろうが、先手は打たせてもらう。陛下がなかなか真実を言わなければ間に合わないかもしれない。だから最悪の事態に備える。」
「クールに言うか?」
「それが1番効率的だ。家督を継がずに働く変人は、家名も仕事も超一流だからな。」
「俺には敗ける。」
「……張り合うな。」
「ニーナは妹じゃない。」
「俺だって思ってるさ。『家族』という言葉を聞かなかった事にして、冷静に考えよう。陛下はニーナと何処かで会った事があるのか?可能性はパーティーだ。」
「そうは言っても、他国の要人を招いたり招待される場で、子供が来ていても王公族くらいでだ。伯爵が子供を連れて来れるような場じゃない。」
「なら何処でニーナの存在を知った?」
「…そこが怖い所なんだ。わざわざ探すという行動をとるのに、理由が見当たらない。」
「はぁ…。陛下は何故会ってくれないんだ?」
「それが解るなら苦労はしない。」
今日1日の仕事を今から片付けないといけないし、頬は叩かれるし、良い事がない。
「悪い男とは俺の事か…?」
「それしか無いだろ。今のお前はボナースの子達の敵だ。」
「……」
自業自得ではあるが。『悪い男』って言い方酷くないか…。
・・・・
最近、週2日は泊まりでマール君のもとへ来る事になって、さらに毎日が楽しいわ。相変わらず『虫』には悩まされ中だけれどね。
「ニナ、ちょっといいかい?」
「はい。」
伯爵に呼ばれるなんて、何かしら。
「この前の水路の話が今回まとまりそうでね。是非また通訳をしてほしい。」
どう考えても役に立ってるとは思わないけど…、水路を増やすって大きな仕事だし成功してほしいわ。
「私でお役に立てる事があるのなら、お手伝いさせて頂きます。」
「有り難う。」
「日は、いつでしょうか?」
「明日なんだ。急にすまないね。」
明日って急すぎる…。
とりあえず、失敗しないようにしなきゃ。クール様がいれば、きっと大丈夫だよね。
次の日
会議は伯爵邸ではなく、別の場所で行われる。それは別に構わないのよ。けど、私の問題はそこではないの。
「ボナースの件、本当にありがとうございました。エドワード王太子様。」
どうして貴方がいるのよ。
「いや、当然の事をしたまで。本来はこちらが謝るべきだ。」
「お気遣い感謝いたします。」
「また経過を伝えるよ。ところで、伯爵は何処にいるかわかる?」
「いえ…さっきまではいたのですが。今日はエドワード様も会議にご出席ですか?」
「ああ、おそらく今年の我が国最大の利をもたらす事業がこれだ。それくらい大事な場だからね。」
そんなに凄い話を何となく通訳してたなんて…。相手がクール様でよかった!
「まあ、クール・テイラーを連れてる時点で相手が本気なのはわかる。伯爵は取引には向いているが駆け引きには弱い。こちらも本気を出すなら今日だ。ちょっと頑張ってみるよ。」
…不覚にも少し格好いいと思ってしまったわ。
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