上 下
21 / 138

実験室3

しおりを挟む
「ルーシー様。本当の事を言ったまでです。それとも、貴女の恋人になった方は、人にどんな態度をとってもいいという事?貴女のお父様にとって大切なのはミリオン侯爵の娘かジョーンズ伯爵のご子息様、どちらかしら。ねぇ?スタン。」
「っ!?」
「あら、真っ青ね。貴方達が振りかざす、くだらない身分というのはそういう物なのでしょう?」
「そんな事ないわ!」

ルーシー様も必死ね。

「貴族に生まれた、ただそれだけ。私達はまだ、責任をもって見合った仕事をしている訳でもない。偉くも何ともないのよ。」

「私達はお友達なのよ。身分なんて関係ないわ。」

「では何故リリー様は薬を受け取れなかったのですか?手が荒れるかもしれないと薬を渡せば『受けとるな』と言っていたわ。貴族の女性は見た目も大事、それを貴女は重々承知でしょう。」

「……っ」

「愛だの恋だの言ったって、損得で考える男もいるのを知っておいた方がいいわよ。ルーシー様。では皆さん、ご退室を。」

「…リズ、悪かった。もう来ないから、このまま部屋は使ってくれ。」
「私に構わないでください。…これをリリー様に。」
渡せなかったぬり薬をセドリックに渡して、私は掃除を始めた。


フラスコも、テストチューブも、シャーレも、ビーカーも、全て割れてしまったわ。
これを集めるのが何れだけ大変か…。お金もかかってしまうし…。

オタクを披露する…
あの人達には何も通じない…。そうじゃなくて、どうでもいいのよ。私は『婚約者』という物体でしかないんだわ。

冷やかしに来て、揚げ句の果てに毒草を折られて、物を壊されて……。

この学校の空気は吐きそうよ。


・・・・



「エリザベスはどうだった?ラッド。」
「少し変わった趣味を持つ子ではありますが、私の見たところ婚約者レース独壇場ですね。」
「そうだね、頭のいい子だよ。狙って人を怒らせる事も出来るしね。それだけ人を観察してる。何より正義感が強い。身分ばかり気にしてる頭のよくない連中は相手にもしてもらえないよ。」
「ロビン様も性格が悪いですね。あの4人の粗捜しをさせつつ、確実にエリザベス様を婚約者にする方向へ進めるんですから…。」
「いい子だから信じてると思うよ。俺が弟の心配をしてるお兄様だって。」
「そこは本当でしょう?」
「そうだよ、だからこそエリザベスが婚約者になってもらわないと。そこまでが俺の完成形だよ。」
「セドリック様は『兄が王太子になるべきだ』と仰ってますよ。」
「ん~、それは駄目だね。俺の可愛い弟は、悪どい事が出来ない。政治には人たらしのずる賢い裏方が必要で、それが俺の役目だよ。」
「何故エリザベス様に目星をつけていたのですか?」
「面白いから。殺人未遂犯を全力で追いかけたり、迷路で迷ったり、何より弟を怒らせたり笑わせたり出来るのは今のところエリザベスだけでしょ。」

「なるほど。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます

葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。 しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。 お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。 二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。 「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」 アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。 「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」 「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」 「どんな約束でも守るわ」 「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」 これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。 ※タイトル通りのご都合主義なお話です。 ※他サイトにも投稿しています。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

【完結】復讐は計画的に~不貞の子を身籠った彼女と殿下の子を身籠った私

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
公爵令嬢であるミリアは、スイッチ国王太子であるウィリアムズ殿下と婚約していた。 10年に及ぶ王太子妃教育も終え、学園卒業と同時に結婚予定であったが、卒業パーティーで婚約破棄を言い渡されてしまう。 婚約者の彼の隣にいたのは、同じ公爵令嬢であるマーガレット様。 その場で、マーガレット様との婚約と、マーガレット様が懐妊したことが公表される。 それだけでも驚くミリアだったが、追い討ちをかけるように不貞の疑いまでかけられてしまいーーーー? 【作者よりみなさまへ】 *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

処理中です...