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第1話 初めてのラブレター

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「「お前、モテて羨ましいよな」




昼休憩、屋上で昼食を取っていたら、横に座る、烏丸からすま 隼人はやとが弁当をつまみながら、真剣な顔でそんなことを言う。




「どこが?」




平凡で地味で陰キャの俺のどこにモテ要素があるのか? わからないので聞いてみる。




「隠したって無駄だぞ。モテ男。 お前あの5人といつも一緒に登下校してるじゃねーか」




あいつらが頼んでもない処か断っているのに毎日ご丁寧に迎えに来るんだよ。俺が小学生の時に遅刻ばっかりしているのを見兼ねた如月が迎えに来るようになったのが始まりだったな。いつまで子供扱いするんだか。




「あいつらとはただの幼馴染って何度も話しただろ?」




「ただの幼馴染は毎日一緒に居たり、抱き付いたりしねぇよ」




「それは幼馴染の俺だから相手が遠慮がしないだけ」




昔はよくプロレスごっことかした名残だろ多分。俺を異性として意識していないから平気そうな顔でベタベタ触って来るだけだ。ペットみたいに思われてるんかな。 




「ふーん、お前って鈍感なのな」 




隼人はぼそっと意味ありげな言葉を零して卵焼きを口に含んだ。




休憩が残り僅かになると、俺と隼人は誰にもバレないようにこっそりと階段を下りていく。屋上の立ち入りは本来禁止されているのでバレれば面倒な事になるのだ。だが、そのおかげで幼馴染達にバレずにゆっくりと昼食を取れている。以前昼休憩に隼人と飯を食ってたら5人がそろって教室に弁当持参して来た時は危うくおかずを喉に詰まらせるとこだった。声が聞こえて直ぐに撤退できたからいいものを。




それから屋上という最高な昼食スポットを見つけるにはかなり苦労した。なんせ鍵がしまってるからな。隼人がクリップ取り出してピッキング始めた時は俺も驚いた。難点があるとすれば今は暑いくらいか。




★★★




授業が終わり、帰り支度をする。今日は割とゆっくりである。如月は朝はともかく放課後は基本部活があるから教室まで迎えに来ない。他の4人は迎えに来るというより、待っているタイプなので俺はゆっくりと今日どうやって4人を切り抜けて帰るか模索中だ。




俺は机の中を漁りながら、忘れ物がないかを念入りにチェックする。




がさっ




ん? 見覚えのない感触が手の平を刺激する。俺はそれを掴み机の中から取り出す。




「なんだこれ」




思わずそんな心の声が漏れた。 ハガキサイズの封筒の真ん中にはハートのシールが貼り付けてあり、俺の名前が綴ってある。




あぁ、もしやこれか俗に言うラブレターというものか。




――――――え?




ラブレター? ラブレターってなんだっけ? ――――ぷしゅぅ――




俺の思考は停止する。そんな俺を見ていた隼人が俺の肩に手を置いた。




「どうした青葉?」




「なぁ、隼人。 ラブレターってなんだっけ?」




「はぁ、何いってんだ?」




「ラブレターだよ!!」




「ラブレターって言えば……異性への想いを綴る手紙だろ」




「だよな!」




「それがどうした?」




「どうやら俺にもきたみたいだぞ!」




「何が?」




「モテ期」




★★★




俺はあれから直ぐに封筒を開封して中身を確認した。そこには受取人のこちらが恥ずかしくなるほどの相手からの想いが綴られていた。差出人の名前は  春野はるの 静枝しずえ なんと俺と同じクラスの女子だった。




俺がラブレターを開いた時には春野さんは既におらず、手紙には今日の16時に体育館裏に来てほしいと書いてあった。




そして俺は少し早いが体育館裏で待機している。




春野さんといえば、いつも教室で一人で読者をしている事が多い物静かな女子だ。口数も少なく大人しい雰囲気を身に纏っており、幼馴染みの5人と違い目立つことのない地味なタイプだが、だからこそ俺には最適な相手なのかも知れない。







「あの! 青葉君!」




突然、俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。間違いない春野さんの声だ。俺は春野さんの方に視線をやると、彼女は恥ずかしそうに頬を紅潮させて、もじもじとしている。




「春野さん、こんにちは」




「う、うん。こんにちは。 来てくれたって事は――――」




春野さんがそう言い掛けた時、遮るように物陰から聞き覚えのある声が聞こえてくる。




「ちょ、ちょっと押さないでよ! バレちゃうじゃない!」




「いいから、もう少し詰めなさい。あなたは小さいのだからできるでしょう?」




「どういう意味よ!!」




「そのまま意味なのだけれど」




「二人共、こんな場所で喧嘩しないで!」




「私も、見えない。もっと寄って」




「こ、これ以上は無理だって――――きゃっ」




桃野が物陰から倒れ込んだ、それに次いで他の4人も足を縺れさせて倒れ込み姿を見せる。




「えっ!?」




春野さんが驚愕している。それはそうだ。




「……お前等、何してる?」




部活中の筈の如月までいる。わざわざ見物する為に抜け出してきたのか。




「ちょっと灯! あんた汗臭いのよ!」




桃野が如月に対して文句を言う。




「ごめんね! バスケ抜け出して来たから」




やっぱりか。




「おい、聞こえてるのか?」




「聞こえているわ。 それよりも雄一郎君まさかその子と付き合うつもりかしら?」




相須は立ち上がり、砂埃を払いながら聞いてくる。他の4人もぞろぞろと立ち上がり、じっと俺を見つめる。




なんで質問した俺が逆に聞き返されているんだ。それに俺が誰と付き合うなんて関係ないだろう。




「あんたが女子と付き合える訳ないじゃない! ふんっ!」




「なっ――――!?」




今の言葉はさすがにカチンッと来たぞ。言ってやる。元々俺はその為に来たんだから。さすがに恋人が出来ればこいつらも気を使って今まで見たいにベタベタくっつくようなことはなくなるはずだ。距離を置くにはいい機会だ。聞かせてやる俺の返事を。




「あぁ、付き合うよ。 これからよろしく春野さん」




「「「「「えっ」」」」」




5人の声が一斉に重なった。




「あっ…はい…よろしくお願いします……」

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