生贄は内緒の恋をする

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 ヒバリが復帰してから、宮廷魔術師やその他学者達が諸手を挙げて喜んだ。そのお祭り騒ぎは城内はおろか、城下町にまで感染し、本物のお祭りになった。
 城下町の人間は、何が起こったのか判らないが王城の人間がとち狂ったように騒いでいるから便乗しておけと、ある程度の認識でお祭りを開催した。その一つは、第二王子殿下が守っていた“眠りの塔”から最愛の人が解放されたということ、そしてさらに第二王子がこの国の守護神の加護を婚約者と共に受けたこと。
 第二王子は来年には臣籍降下し、王位継承権も放棄してグラヴァンディア次期公爵として婿に入るらしい。
 第二王子を王太子へと圧を掛けるものがいたそうだが全て排除され、第二王子殿下…イーグルが最愛たるグラヴァンディア公爵家嫡男であるヒバリと添い遂げ、王太子を補佐する事を生涯誓った。
 そんな控え目なイーグルの見目の良さと、兄弟を想う姿、愛する者を一番と考えた姿が評価され、市井ではイーグルの生涯を一途な愛として劇場では連日上演され、他国ではこの国の愛に触れた吟遊詩人がイーグルの愛の尊さについて歌い評判になった。

「そんなものではないのだが…」

 褐色の肌にダークブロンドのクルクルと跳ねたウルフカットの髪。瞳は王族が持つ黄金色。切れ長の瞳は、目の前に存在する最愛を見て、熱に浮かされている。頭のてっぺんから、指先、つま先まで色香がたっぷり詰まった第二王子殿下、イーグルは婚約者のヒバリをこれでもかと見つめ続けている。

「良いではありませんか。疎まれるよりは、好かれている方が政策としてもやりやすいですし。僕としては、そんな尊い方が未来の旦那様だなんて…ふふ…少々くすぐったくありますね」

「ヒ、ヒバリ…っ!!」

 ダークブラウンの髪に、この国唯一といっていい程美しい紫水晶と呼ばれる稀有な瞳を持ち、大人になり魔力を調節できるようになったヒバリはスラリと華奢で、絶世の美形として名高い美貌を所持している。
 ヒバリが眠る塔を守るという使命から己を研磨していたイーグルとは身長も体重も最早太刀打ちできない。なんなら、片手で持ち運びされてしまうような差がついている。
 そんなイーグルが感極まった声を上げ、ヒバリに抱き着いてきたものだからヒバリは息を詰め、その抱擁の強さになんとか耐えようとした。しかし、すぐに音を上げイーグルの腕を叩いてギブアップを告げた。

「も、申し訳ない…。ヒバリが呉れる言葉ひとつが嬉しくて、ヒバリが…そこに居ることが嬉しくて…つい…」

 イーグルと婚約をしたのが四歳の時。そしてそこからヒバリは魔術研究に没頭し、そんなヒバリに遠慮したイーグルが婚約を白紙にしていつでも再度婚約が戻せるよう準備をしていたらしい。ずっとヒバリがイーグルの元に戻るよう待っていたのだが、魔女に呪いを掛けられ婚約が更に伸びて、留めがヒバリが生贄であったと知らされたイーグルの心はズタボロだった。
 ズタボロのイーグルはヒバリが少しでも離れることをとても嫌がり、ヒバリの一門一句に涙し感動し前後不覚になる。
 自分は病んでいるのか…と思い悩んだが、ヒバリフリークの学者たちは「それはヒバリ様の理解者になる第一歩です」なんて無責任なことを言ったものだから当然のこととして受け止めてしまった。

「習うより慣れよと言いますから。イーグル様。僕の存在に慣れて、貴方の隣に僕が居ることが当然であると自覚してくださいね」

「ヒバリッ!!」

 ニコニコとヒバリが朗らかに笑って言えば、またイーグルは涙を浮かべてヒバリを抱きしめる。それがこの二人のルーティーンだった。







 四年眠っていたというのヒバリはアラダージュ王国の情勢にとても詳しかった。それどころか、四年前より更に知識が深くなり魔力の温存、最大値の上昇、幼少期の魔力過多の危険性を論文として発表した。
 その筋の学者たちは涎をたらさんばかりにヒバリを称賛し、矢張り魔力、魔術についてはヒバリの右に出るものはいないと実感をした。

「どうして、近況すら知っているのだ?」

 ヒバリは“眠りの塔”で四年間眠っていた。それなのに、ヒバリは公爵家の情勢や国の政の穴を的確についてその対策を練り上げた。

「どうしてでしょう。眠りながら、ずっと本を読んでいた記憶があるのですが…」

 キョトンと桜色の唇に細い指を押し当て、ヒバリが小首を傾げた。
 “眠りの塔”が王立図書館に在った時、図書館内で夜、司書が多数目撃をした“図書館の麗人”はもしかしたらヒバリなのではないかとイーグルは思ったた。当初ヒバリは肥満体型で、図書館の麗人とはかけ離れたシルエット故に同一視されていなかった。古い建物だからそういうこともあるかもしれないとイーグルは流していた。それを確認すれば、もっと早くにヒバリを近くに実感できたというのに。
 悔しさにグッと唇を噛んでいたイーグルを他所に、ヒバリは思い出し笑いをしてイーグルの手をとった。

「イーグル様がリーゼントオーシュの花を僕に毎日贈ってくださっていたのも、知っているんですよ」

「っ! ~~~~~~~~っ!!」

 幸せが堪えきれず満面の笑顔でヒバリが言うものだから、イーグルは思わず奇怪な悲鳴を上げてしまった。仕方ない。ヒバリが全方面に可愛すぎるのだから、仕方ない。
 ヒバリの華奢な胸板に自身の額を擦りつつ、もう駄目だと悟った。ここまで持った理性を褒め称えたい。






「あっ…イーグルさまっ…」

 イーグルは暴れ狂う自身の息子をとりあえず無視して理性を繋ぎとめた。ヒバリを押し倒した男が何を言っているのかと嗤われるだろうが、致し方ない事だ。
 あまりにもヒバリが可愛すぎた。
 イーグルはヒバリ不足で十数年を生きてきた。ヒバリが眠りから覚めても数年は様子を見ようと思っていたのに、当人であるヒバリから与えた分だけ愛情を返されたらイーグルのイーグルは臨機状態になって当然だろう。
 小さいヒバリの唇を覆うように吸い、薄い舌を自身の舌で吸い巻き付けた。

「んんっ…」

「ヒバリ…かわいい…」

 寝具に押し倒したヒバリに抵抗は一切ない。それどころか、イーグルの分厚い肩に腕を回し、拙いながらに口付けを返そうと舌を動かすヒバリに下半身がすぐに暴発しそうになった。
 服を一枚一枚確認するように脱がし、アラダージュ国民にはない白い肌の絹のような滑らかで柔らかい触り心地にイーグルはブワリと興奮を覚えた。
 深いキスを何度も交わし、ヒバリの華奢な身体を撫でまわし至る所に自身の唇を当て、その柔らかな甘い肌に酔いしれた。
 ピンク色の乳首に理性を溶かしかけ、ヒバリのヒバリが手ごろなサイズでやんわりと勃起しているのに理性が飛んでしまった。
 ヒバリのを口に含み、可愛らしい悲鳴を聞きながら後孔に指を這わせた所、そこが濡れていることに気づいた。通常であれば香油で濡らして慣らしていくのだが、イーグルは小首を傾げ後孔に指を含ませた所引き攣れる様子はなく容易に指を飲み込んだ。

「…もしかして…これが加護か?」

「あっ…あっ…」

 ニュクニュクと指を動かして具合を確かめてみたが、痛みは感じていないようだ。それどころか、指を動かすのがイイらしく小さく身体を震わせている。
 ヒバリのナカは柔らかくて指をキュウキュウと締めてくる。とりあえず三本挿入して余裕があるくらいまで慣らさないと、イーグルの長物は厳しいだろう。

「ひぃ…あっ…あっ…」

 指を三本バラバラに動かして、拡げても余裕があるくらいまで時間をかけて慣らした結果、ヒバリの身体はイーグルがつけたキスマークだらけになり、イーグルの唾液でベトベトになっていた。一度達したヒバリの精液を零すことなく飲み込み、しつこく舐めて吸って気付いたらヒバリはぐったりとしていた。
 あまり動くことを好まないヒバリには大層な運動になっているのだろう。次、射精したら寝落ちそうな雰囲気があったので出来るだけ刺激しないように後孔をほぐすことに専念した。

「いーぐる、さまぁ…あぁっ…」

 指を抜いて、イーグルがバッキバキにそそり勃った自身を慣れたそこに押し当てると、ヒバリが小さく息を吐いた。
 グッと先端を埋め込めば、短くヒバリが啼いた。
 既にキュウキュウと吸われ締め付けられ、初めての経験に三擦りする前に出してしまいそうな快楽にグッと堪える。ニュグ、と奥へ奥へと進め、トン、と奥に当たった所で息を吐いた。とんでもないヨさに汗が噴き出てボタボタと下に居るヒバリに落ちている。

「うんっ…あっ…あっ…」

「ヒバリッ…」

 ヒバリに打ち込んだ熱く滾る杭を抜いて、再度打ち込めば奥に当たるのがいいのか勢いよく肌をぶつけるように叩けば背を反らせてヒバリが快感に悶える。
 パンッパンッと奥を叩いて、何度か堪えたものの耐え切れずスグにヒバリのナカに出してしまった。

「うぁっ…あン…あぁぁっ、あつい、イーグルさまぁぁぁっ、おく、きもち、いいっ…!」

 狙いすましたように奥がイーグルに吸い付く。精液を一滴たりとも逃さないようにナカが収縮してキュウゥゥとイーグルを締め付けてくる。出来るだけ奥に精液をこすり付けたくて、腰を思いきり擦りつけた。

「あっ…また、おっき…あぁぁっああぁっ!」

 出したばかりなのに、イーグルは既に自身が臨機状態であるのに気付いた。すぐに腰を振り、いろんな角度から奥を突いた。

「あっ、まって…ぼく、イって…あぁぁっ、あぁっ、」

 ブルブルと震えるヒバリの愛らしい唇を貪り、ほっそりとした両足を抱え上げ奥に何度も精液を放った。水音が激しくなり、飲み込み切れなくなった精液が抜き差しの度にシーツに散っていく。
 ヒバリも大きな射精はないけれど、何度もイっているらしくヒバリの薄い腹には精液溜まりが出来ている。

「いーぐるしゃまぁ、ぼく、もー…むり、れ…あぁっ」

 腰をひたすらに振り続けていたイーグルがヒバリのギブアップに漸く我に返った時、寝台の上はとんでもないことになっていた。
 シーツは二人の汗と精液とその他色んなもので汚れ、イーグルの精液で少しだけヒバリの腹が膨らんでいるようだった。お互いにベトベトで、イーグルは慌てて浄化の魔法をかけ眠りに落ちるヒバリとヒバリの周りに掛けた。

 ヒバリが可愛くて盛ってしまったが、後でグラヴァンディア公爵に怒られそうだ。しかし、ヒバリ不足だったイーグルはこれでやっとで満足した。
 怒られると覚悟したグラヴァンディア公爵は成人したのだから二人に任せると言われてしまった。満足はしたが、それからというものヒバリの色よい返事があれば閨事に引っ張り込むようになった。

「ヒバリ…大好きだ…愛している。どれだけ抱いても足りないんだっ!」

 既に何度か達してぐったりとしているヒバリをうつ伏せにして腰だけを上げさせて、ズパン! と奥を突く。

「あっ…僕も、だいすきですっ、あぁぁっ、あン…あぁっ、すごい、イーグルさまぁっ」

 ストイックなヒバリが閨ではとんでもなく乱れる姿が堪らなくイイ。
 イーグルの凶暴なまでの長物にヒンヒン啼かされ、奥に出される精液の熱さに浮かされイーグルの名を呼び絶頂する。
 その壮絶な色香と愛らしさにヤられ、イーグルは性行為を覚えたての猿のように腰を振る。きちんと公私は分けているし、なんなら夜の激しさを他に悟られないよう振舞うことも出来ている。

 今日もイーグルの激しさに耐え切れず先に落ちてしまったヒバリを甲斐甲斐しくお世話して、安眠できるように寝具を整える。ここら辺は魔法が使えるイーグルには簡単なものだ。
 抱く側であり体力もあるイーグルに毎晩しつこく求められ、大変だろうがヒバリは決してイーグルを拒まない。落ちる最後の最後までイーグルに愛を伝えてくる。それが堪らずイーグルの愛撫がしつこくなる。
 甘やかされている自覚がたんまりあるイーグルは幸せで、眠っているヒバリの愛らしい唇に吸い付いた。


++++

後日談が書きあがり次第また載せます。
本編は終わりです。ここまでお付き合いありがとうございました!
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