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人と妖精

第31話「人の話を聞かない…いや人じゃなかった」

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扉を抜けると階段があり、それを登ると
また檻が廊下の両端にあり中にはボロ服の老若男女が沢山いた
鎖で繋がれて身動きができず、私の姿を見る目には光がない

これって奴隷なのかな
先程の男は奴隷魔法と言っていたが、私のように誘拐された人たちなのかも
だとするなら助けてあげようかな…
この中を無視して行けるほど私図太くないので
いつも周りの目を気にしないくらい図太ければ良かったと思っていたがね

檻に手を掛けようとしたその時
ニャー、と鳴き声が聞こえた

「やっと見つけた、全く世話を掛けさせるわねぇー」

振り向けばそこには黒猫がいた

「猫?」

なぜこんなところに猫?
ていうか今喋ったな?
アルと同じようなものか?

「あなた凄い顔に出るわねー、遊びたくなるカノンの気持ちもわかる気がするわ」

カノン?
彼の知り合いか
てことは…変人だな!

「あ、自己紹介が遅れたわねー、私は精霊のクロノス。クロって呼んでくれれば良いわ。カノンは呼んでくれないけど」

「よろしく、クロ。ところでカノンは?」

「カノン?彼ならまだ牢屋かも。本人、何か待ってるらしくて。その間に嬢ちゃんを探してくれと頼まれたのよ」

なるほど、そういう事か
ならどうしようかな
カノンのところに行くべきか?

「…っとその前に、ここから離れたほうがよさそう。騒ぎを聞きつけて衛兵が来るわ」

耳をピクッと動かしクロは言う
いいねー、猫は好きだから後でモフモフしたい
って衛兵に来られるとまずいな
私、魔物扱いらしいしバレたらこの国に居られなくなる

「こっちよ、ついてきて」

そう言ってクロは来た道を引き返し走り出す
私もそれに急いでついていく

「あ……」

そんな私の後ろで声が聞こえた
足を止め、振り向く
誰かは分からないけど、檻の中で誰かが言ったんだろう
…助けたいけど、私にも事情がある

なので檻を掴んでぶち壊す

「悪い、これくらいしかしてやれない。後は自分達でなんとかしてくれ…もし行くところがなければ禁制の森、ゴブリン村に来るといい」

出来れば来ない方がいいかもしれないが
人間は魔物とは敵らしいからね

そう言って私はすぐにクロの後を追った

更に階段を上がると棚が並ぶ部屋に出た
窓から光が差し込んでいると言うことは
先程までの部屋は地下ということか

「こっちよ、少し目立つけど急がないといけないし」

外に出ると薄暗い狭い道に出た
クロは壁を蹴って建物の屋根に上がる
私もそれに倣って膝を曲げバネのようにジャンプ
ひとっ飛びで屋根に到達し、着地

「カノンはこっちにいるわ」

私が屋根に上がるのを見届けるとまたクロは走り出し、屋根から屋根へと飛び移っていく

いやー、まさか漫画やアニメで見るような事を私もする事になるとは
嬉しいような悲しいような

さて私もついて行かなくては
パーカーのフードを深く被り直し、私もついていく

「待て!悪党!」

その声が聞こえたと同時に何かを視界の端で捉える
私はすぐにその場から飛ぶように離れる
が、予想以上に早く
飛んで首を逸らした所を剣が凄まじい速さで通過する
あと少し遅れていたら危なかった

「貴様…何者だ!私の剣を見抜くとは…」

姿を現したのは鎧を纏う青年だった
青い瞳が特徴的だ

「誰?」

すごくめんどくさそうな予感

「よくぞ聞いてくれた!私の名は…名乗る程の者では無い!」

あっ、めんどくさい
今私の脳内を駆け巡るようにめんどくさいというワードが閃いたぞ

なんだろうこのめんどくささ
女の人が『私何歳に見えます?』って聞いてくる時の感じによく似てる
いるよねー、そういうの
超めんどくさくてぶん投げたくなる

「あの店は裏と繋がっているという噂があり見張っていたのだ!そこから出てきたということは間違いなく悪党!」

説明ありがとうございます
でもテンションが高くてウザいです

「それ、逃げてきた被害者とは思わないの?」

そう聞くと青年は少し考えた
が、バッとこちらを向き

「ならば捕らえた後で聞けばいい!どちらにせよ怪しいからな!」

わー、話を聞かないタイプだこれー!?
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