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メビウス

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第6章 夢と混沌の祭典

第26話 天才姉弟

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「……へぇ、案外耐えられるもんだ」

『何とプレアデス、スキルの発動も許されない絶体絶命の中、煌の必殺技を耐えきったぁぁ!!』

「嘘、まさか素の耐久力で耐えたの!?さっきと違って、出力限界まで引き上げたのに!?」

「いや、流石にあれをまともに食らってたらヤバかったよ……さっき、いかなるスキルの使用を封じると言ってたよね?じゃあ、スキル以外なら?」

「…………ッ!まさか!?」

勘付いたようだな。流石は天才のお姉様。でも、創造力がものを言うこの世界でだけは……僕だって負けてはいない!

「じゃ、答え合わせをしようか!!コマンド入力、防御攻撃変換ガード・トゥ・アタック!」

宣言した瞬間、身体中に巡る青白い光の筋が、沸騰したような赤に変色した。これは……結構便利かも!!

「【宝石片弾ジェム・ブラスト】!」

突っ込む……と見せかけて、フェイントの遠距離攻撃。煌が回避しそうな所に宝石の置き射撃だ。

「ッ危なっ!?」

うわ、あれを避けるか……?どんな動体視力してるんだよ。

「掠っただけでこのダメージ……なるほど、さっきから妙な機能を使ってると思ったら、それスキルじゃないのね」

「流石、この短時間で見極めたか。そう、これが僕の発明品にして心臓……『ブリリアント・コア』の特別機能さ」

そう言って、胸の光り輝く球体を見せびらかす。ついでに言うと、胸部に装備した装甲はこれを胸の中央に埋め込めるように構造を改変させてある。お陰で特殊装備枠が1つ節約できた。

……まあ、だからってこの狭いフィールドで『機械竜の翼』なんか使えないけど。引っ掛けるものも少ないから『空間機動ベルト』の出番もあんまりなさそうだし。

「またあんたは……厄介なもの作ってくれたわねぇ。昔からそう……工作とかイタズラとか、そういう悪知恵は誰にも負けなかったものね」

「はっ、まるで僕がクソガキだったって言いたげだね?」

「そう言ってるのよ!!」

煌が突っ込んで来る。これは……また格闘攻撃か?いや、でも彼女がそんな見え透いた攻撃を何度も仕掛けるはずが。

「!?」

何だ、指輪から光が伸びている?仕込み刀のようなものか?だとすると、普通に攻撃を受けるのは危ない!

「【ルーンソード】!」

「迎え撃て、【レヴァテイン】!!」

目には目を、剣には剣を、だ。にしても、攻撃力増強状態で互角か……!向こうのフィジカルも、大概おかしい。

『煌とプレアデス、激しい剣戟の応酬だ!!』

「その程度……?」

「いや……本命はこっちだ!」

不意打ちの、火炎放射!!

「うわっ!?」

慌てて身を引く煌。撤退の判断が早い……初見殺しだったのに、殆どダメージを与えられなかった。でも、少しでも掠ったなら上々だ。

「《火傷》!?やってくれたわね……」

「状態異常なら、どれだけ攻撃を避けられようと関係ないからね!」

「ふふ、でも残念。あたしに状態異常は実質無意味よ。【メディエーション】!」

その瞬間、煌のアバターから炎のエフェクトが消えた。状態異常の回復効果か?

「あれ、火傷になって、ない……?」

僕が《火傷》に?ああ、てことは状態異常の交換か。そういえば、ハニハニ戦でも使ってたな。見た目から効果が殆ど分からなかったがそういうことだったのか。ハニハニが戦意を失ったのも何となく頷ける。《毒》無効の装備、作ってあげればよかったな。

「残念、僕に《火傷》は効かないんだ」

「……流石、対策済みってわけね」

いや、まあ、たまたまそうなっただけなんだけどね……?

にしても、どうしたものか。状態異常を交換するスキルがあるなら、《火傷》の定数ダメージでじわじわ攻めるやり方は使えない。僕に他の状態異常がかかれば話は別だが……現状、僕のスキルで他に自分にかけられる状態異常は【幻影化ファントマイム】の《呪い》くらいか?だが、流石に1分間装備無効はリスクが高すぎるし、移してもらうにも時間がシビアだ。

「コマンド入力、攻撃速度変換アタック・トゥ・スピード!」

今度は赤い光が淡い緑色に輝きだす。『ブリリアント・コア』の説明文には明記されていなかったが、攻撃や防御「など」と記載してあったからまぁ行けるだろう、みたいなノリだったのだが……どうやら問題なく発動できたみたいだ。今までになく身体が軽い。

「速さを補ったのね!それでも、あたしに攻撃は当たらないわ!」

くそっ、とはいえ素早さを上げてもダメか!やっぱり、攻撃そのものの速度を上げるしかない……でも、武器がハンマーではそれは難しい。どうしても、モーションが大振りになってしまうからだ。【レヴァテイン】なら当てられるかもしれないけど、ずっと刃を出し続けてMPが持つかどうか……!

何かあと一つ、攻撃を確実に当てられる要素があれば……。

「ちょこまかと……そろそろ鬱陶しいわよ!【コンジャンクション】!!」

「うっ……!」 

「【グランド・クロス】!!」

あれ?何故か今回はスキルを使えるみたいだ。それなら……今度こそ。

「敵の攻撃を喰らい尽くせ、【暴食グラトニー】!!」

その瞬間、コアが展開する。内部の蒼粒石が飛び出し、空中に静止する。中心に位置する輝晶石に、全ての攻撃エネルギーを変換し集約するために。

『これは!前回猛威を奮ったプレアデスの切り札、圧倒的な防御力を誇る【暴食グラトニー】だ!!さぁ今回も完璧な防御を見せてくれるのか!?それとも、煌がこの盾を打ち破るのか!?』

攻撃が衝突する。レオンの攻撃と比べたら威力は低いけど……それでも、結構な大出力だ!気を強く保たないと、一気に打ち破られそうだ!!

「ぐっ……流石に、これだけじゃ受け切れないか!!」

追加で数個、蒼粒石を追加。しかしそれでも、最初にレオンに使った時よりは、確実にエネルギーを節約して、高い出力を出せている。それが分かっただけでも十分な収穫だ!

「吸収完了!カウンターキャノン!!」

『プレアデスの防御が上回った!そしてすかさずカウンター攻撃が炸裂!!……しかし煌、流石の反応速度でこれを回避!!』

…………うん、知ってた。

「…………?何だ、今のは?」

言語化するのは難しいけれど……スターフィールドが揺らいだ、そんな感じの、違和感。さっきスキルを発動できずに【グランド・クロス】を受けた時は、この手ごたえはなかった。何故だろう、確証はないけど、上手く使えば一気に勝負を決められそうな……そんな予感がする。

落ち着け、違いを分析するんだ。今の攻撃にあって、さっきのにはなかったもの……それは、僕のスキルだ。【暴食グラトニー】によって攻撃を吸収したことが原因?いや、それならもっと前に違和感が出たはず。じゃあ、カウンター攻撃か?でも、あれは相手の攻撃をほぼそのままの形で跳ね返すものであって……今回の場合、【グランド・クロス】をそのまま撃ち返しているようなものだ。そこに違いは……。

「…………付加エンチャントの錬金術?」

そうだ、カウンターを撃つのに使ったのは噴炎する竜骨牙の戦槌ブーストファング・ドラゴハンマー。あれには、火属性付加エンチャントの錬成陣が使われている。てことは、あのカウンター攻撃にも恐らく火属性が乗っていたことになる。とすると、違いは炎か。

炎……光の柱……重力…………あれ?これってまさか。

「これだぁぁ!!」

「うわっびっくりした!何よ、突然大きな声あげて!?」

「分かったんだよ……スターフィールドの、攻略法!!」
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