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六章
その42 作戦会議
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文芸部が復活したとしても、俺達のやることには変わりはない。七不思議の解明こそが、この文芸部の目的であり存在意義だからである。
というわけで、五人が揃った文芸部室での久方ぶりとなる作戦会議が始まったのだった。
いつも通りにホワイトボードがどこからともなく引っ張られてくる。そこに水性マーカーでナツキが軽快な音を立てながら文字を記していった。
『玄関を見守る天使!!』
「いやちょっと待ってくれない?」
ナツキが文字を書き終えたタイミングで、ハルから謎のストップが入った。一体何が疑問だったのだろうか。同じことをナツキも考えていたらしく、ハルに対して可愛らしく首を傾げていたのだった。
「んー?何かおかしなところでもあったかなー」
「おかしいというか……なんでいきなり六つ目の不思議を解明しようとしてるのかなって思っただけよ。五つ目はどうしたのよ?」
そこでフユカがああ、と声を上げた。
「五つ目の不思議なら既に解明しましたよ」
「早っ!私達がいないにもかかわらずに解明できたの!?」
「まあ、いなかったからこそこんなに早く解明できたものとさえ考えているな」
五つ目の不思議を解明したのはほんの数日前の話だ。アメとハルが文芸部に来なくなって、俺とフユカはその寂しさを紛らわすかのように七不思議と向き合っていた。真面目というか真剣というか、それしかやることがなくなったというか。
アハハとアメが苦笑した。
「もしかして僕達がいない方が七不思議解明は捗るのかな?」
「そうじゃない。ただ、あの時は余裕がなかっただけってことさ」
心の余裕。それが今はある。
少し前までは、それが全くといっていいほどに存在していなかった。やりたいことが、やらなければならないことになってしまったかのような感覚だった。俺達の勝手で始めたことなのに、それに苦痛を感じてしまっていた。結果として効率は上がっていたのだが。
「焦って次の不思議にどんどんと挑むよりは、こうやって私達のペースで進んで行く方が断然気持ちが楽ですからね」
「そうだねー」
フユカの言葉に全員が頷いた。
恋人は確かに欲しいが、それは決して急ぐものなんかじゃないと気づかされた。大切なのは、今このなんでもないような時間なのだ。皆で過ごせる、この時間なのだから。
「それじゃあ、作戦会議を再開するよー」
ナツキがそう言って仕切り直した。
「じゃあもう一回確認するけど、既に五つ目の不思議は解明したのよね」
「そうだな。『図書館に閉じ籠もる悪魔』だったが………まあ悪魔だったな」
「悪魔でしたね」
「悪魔だったねー」
「情報が一切伝わってこないんだけど……」
悪魔は悪魔だったのだ。それを話し始めると長くなるのでまたの機会に、ということでアメとハルには納得してもらった。
とりあえず今は、それぞれの不思議に隠されている文字のことだけ伝えることにした。
「ひらがなの『だ』、か……。これでもう五文字集まったわけだけど、軽く推測くらいならできるんじゃないかな?」
アメの意見に反対意見は出るはずもなく、ナツキがホワイトボードに今までに集まった文字をどんどん記入していった。
読みやすい字で書かれた五つの文字。
『あ』『き』『の』『か』『だ』
この文字を見て、皆一様に首を傾げた。
「あきのかだ……?秋に生息している蚊のことなんでしょうか」
「そりゃ確かに『秋の蚊だ』ではあるが、今の段階がそのまま答えってわけでもないだろ」
「そうよね。もしかしたらこの文字を並び替える必要もあるかもしれないし」
「珍しくハルが冴えてるな」
「久しぶりにビンタいっとく?」
勢いよく首を振ってハルから距離をとる。
いっとかない。普通にいっとかない。仲直りしたその日に何が悲しくてビンタをされなければならないのだろうか。ハルは俺に対して躊躇いというものが存在していないので、余計にお断りしたい。
後、ビンタされるのが日常だったみたいな言い方をしているが決してそんなことはない。ビンタされていたのはせいぜい月にニ、三発程度だろう。意外とビンタされてるな俺。
恐怖に震え上がる俺を笑いながらアメが言った。
「とりあえずは次の不思議も解明して、文字を見つけなきゃ始まらないってことだね」
アメの言葉に、ナツキが頷く。
「そういうことー。それで六つ目の不思議を解明するために何をするのかーってことなんだけどー」
「いつも通りに現地に向かうしかないだろうな」
「そうだよねー」
ホワイトボードに『現地に向かう』と記入された。
毎回同じ作戦しか立てていないので第三者から見れば、やってる意味があるのだろうかと思われるだろう。しかし、これは俺達にとって割と重要な活動なのである。こういう時間こそ、楽しいのだから。
今回の作戦会議はこうして終わった。
後何回こういうことができるのだろうと、ふと考えて。また考えてしまわないように、頭の隅に追いやった。
というわけで、五人が揃った文芸部室での久方ぶりとなる作戦会議が始まったのだった。
いつも通りにホワイトボードがどこからともなく引っ張られてくる。そこに水性マーカーでナツキが軽快な音を立てながら文字を記していった。
『玄関を見守る天使!!』
「いやちょっと待ってくれない?」
ナツキが文字を書き終えたタイミングで、ハルから謎のストップが入った。一体何が疑問だったのだろうか。同じことをナツキも考えていたらしく、ハルに対して可愛らしく首を傾げていたのだった。
「んー?何かおかしなところでもあったかなー」
「おかしいというか……なんでいきなり六つ目の不思議を解明しようとしてるのかなって思っただけよ。五つ目はどうしたのよ?」
そこでフユカがああ、と声を上げた。
「五つ目の不思議なら既に解明しましたよ」
「早っ!私達がいないにもかかわらずに解明できたの!?」
「まあ、いなかったからこそこんなに早く解明できたものとさえ考えているな」
五つ目の不思議を解明したのはほんの数日前の話だ。アメとハルが文芸部に来なくなって、俺とフユカはその寂しさを紛らわすかのように七不思議と向き合っていた。真面目というか真剣というか、それしかやることがなくなったというか。
アハハとアメが苦笑した。
「もしかして僕達がいない方が七不思議解明は捗るのかな?」
「そうじゃない。ただ、あの時は余裕がなかっただけってことさ」
心の余裕。それが今はある。
少し前までは、それが全くといっていいほどに存在していなかった。やりたいことが、やらなければならないことになってしまったかのような感覚だった。俺達の勝手で始めたことなのに、それに苦痛を感じてしまっていた。結果として効率は上がっていたのだが。
「焦って次の不思議にどんどんと挑むよりは、こうやって私達のペースで進んで行く方が断然気持ちが楽ですからね」
「そうだねー」
フユカの言葉に全員が頷いた。
恋人は確かに欲しいが、それは決して急ぐものなんかじゃないと気づかされた。大切なのは、今このなんでもないような時間なのだ。皆で過ごせる、この時間なのだから。
「それじゃあ、作戦会議を再開するよー」
ナツキがそう言って仕切り直した。
「じゃあもう一回確認するけど、既に五つ目の不思議は解明したのよね」
「そうだな。『図書館に閉じ籠もる悪魔』だったが………まあ悪魔だったな」
「悪魔でしたね」
「悪魔だったねー」
「情報が一切伝わってこないんだけど……」
悪魔は悪魔だったのだ。それを話し始めると長くなるのでまたの機会に、ということでアメとハルには納得してもらった。
とりあえず今は、それぞれの不思議に隠されている文字のことだけ伝えることにした。
「ひらがなの『だ』、か……。これでもう五文字集まったわけだけど、軽く推測くらいならできるんじゃないかな?」
アメの意見に反対意見は出るはずもなく、ナツキがホワイトボードに今までに集まった文字をどんどん記入していった。
読みやすい字で書かれた五つの文字。
『あ』『き』『の』『か』『だ』
この文字を見て、皆一様に首を傾げた。
「あきのかだ……?秋に生息している蚊のことなんでしょうか」
「そりゃ確かに『秋の蚊だ』ではあるが、今の段階がそのまま答えってわけでもないだろ」
「そうよね。もしかしたらこの文字を並び替える必要もあるかもしれないし」
「珍しくハルが冴えてるな」
「久しぶりにビンタいっとく?」
勢いよく首を振ってハルから距離をとる。
いっとかない。普通にいっとかない。仲直りしたその日に何が悲しくてビンタをされなければならないのだろうか。ハルは俺に対して躊躇いというものが存在していないので、余計にお断りしたい。
後、ビンタされるのが日常だったみたいな言い方をしているが決してそんなことはない。ビンタされていたのはせいぜい月にニ、三発程度だろう。意外とビンタされてるな俺。
恐怖に震え上がる俺を笑いながらアメが言った。
「とりあえずは次の不思議も解明して、文字を見つけなきゃ始まらないってことだね」
アメの言葉に、ナツキが頷く。
「そういうことー。それで六つ目の不思議を解明するために何をするのかーってことなんだけどー」
「いつも通りに現地に向かうしかないだろうな」
「そうだよねー」
ホワイトボードに『現地に向かう』と記入された。
毎回同じ作戦しか立てていないので第三者から見れば、やってる意味があるのだろうかと思われるだろう。しかし、これは俺達にとって割と重要な活動なのである。こういう時間こそ、楽しいのだから。
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