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学園一斉清掃大会編
5話 触らぬカズミネに祟りなし
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移動時間は約20分。高等部公園が公園エリアの奥に設置されていたのと、公園エリア自体が校舎から離れているもんで、結構時間がかかってしまった。なにはともあれ、佐藤先生御一行の俺達は生徒会室へと辿り着いた。
「………………………」
移動時間中、終始カズミネが無言で怖かった。何でそんなにピリピリしてるんだろ?会長となんかあったのか。痴情のもつれとか。
そんな軽いノリで尋ねたらギロッと睨まれちゃったよぉ。会長良い人そうじゃん。何でそんなに嫌がるのやら。
途中から佐藤先生と俺だけの会話が続いた。おかげで佐藤先生に詳しくなってしまった。誕生日だとか、血液型とか、星座干支好きな食べ物嫌いな食べ物好みのタイプetc……。どうしてくれんだよ。
「さて、ここで私は戻らせてもらうよ」
「佐藤先生も一緒に来てくれるんじゃないんですか?」
「私も清掃活動に励まなければね。それにあの子から頼まれてたのは、連れてくる事だけでついてくる事じゃない」
「そうなんですか」
佐藤先生は自分の見た目に頓着は全然していないし、初対面では大雑把に見られてしまう事が多いのかもしれないが、その実内面はとても几帳面であり律儀だ。たまに悪ノリは酷くなるが、そこも先生の良い所と言えよう。
頼まれた事をきっかり守って去っていく佐藤先生に、手を振って別れを告げる。そして俺は目の前の扉に向き直った。
扉の上には、勿論『生徒会室』と書かれたプレートがある。普段立ち寄らない、高等部校舎の4階にこの生徒会室は存在している。上級生の集う4階の空気に少し緊張しながら、扉へと手を伸ばす。しかし、その前にカズミネが割り込んできた。
「え?え?どうしたカズミネ」
「………僕が開けるよ」
「真っ先にお前が会長の顔を拝みたいって事なのか」
「捻り潰すよ」
「ごめんなさい」
ガチトーンだ。これは触れちゃいけない奴だ。絶望と希望のパンドラボックスより質が悪いぞ。中身、破壊限定じゃんよ。
少しばかり殺気だった様子のカズミネは、ドアノブへを握る。そしてそのまま勢い良く扉を開け放った。バン!とかなりの音が響いた。しかし部屋の中央にいた女性はそれに驚いた様子もなく、こちらの姿を認めると微笑みを返してきた。
「一体何の用なんですか」
「私が用を持っているのは和嶺君じゃなくて、田中君なんですけどね」
「じゃあ言い直します。シュウヤに一体何の用なんですか」
「ふふふ、内緒です」
「シュウヤにも手を出すって言うのなら━━━━」
「いやですねー。そんな事はしませんよ。以前に話し合ったじゃないですか」
そう言って笑みを深める生徒会長。花咲くような笑顔はこちらの気分を明るくしてくれる不思議な力がある。こんな笑顔を毎日見られるカズミネはなんて幸せな奴なんだ。
しかし、二人の会話内容はさっぱりと理解出来ない。カズミネが「シュウヤに手を出すってんなら」って言ったのはわかった。出来れば止めずにガンガン手を出して欲しい。年上美人の会長ならいつでもウェルカムです。
カズミネの表情は未だに固いままだ。なんでこんな暗い表情をしているのかがわからない。この時のカズミネは警戒している顔だぞ。あんな可憐な会長に警戒する理由なんてあるのか?
「話し合いの内容通り、私は暫く大人しくしてますよ。だから田中君と話をしても良いですか?」
「………わかりました」
カズミネが渋々と言った風に俺の隣にまで下がってきた。会長が俺に向かってチョイチョイと手招きしてきたので、反対に俺は会長の前まで歩み寄る。会長席に座っている彼女から見上げられると、より一層美しさが際立つ。顔が赤くならないよう抑えるのに精一杯だ。顔には一切の感情を出すこと無く会話する。俺の得意技だ。
「それで俺に用事とは……?」
「田中君にお願いしたい事があるんです」
「お願い、ですか」
「はい、田中君。君には生徒会が新しく設立した委員会の委員長になって欲しいんです」
「………………………………………………は?」
何を言われているのかさっぱりわからなかった。会長は今なんと……?
そんな俺の反応を楽しむかのように、会長はクスクスと笑っていた。そして、もう一度、今度はゆっくりと『それ』を告げてくれる。
「君に、新たな委員会の委員長になって欲しいのです」
「………………………」
移動時間中、終始カズミネが無言で怖かった。何でそんなにピリピリしてるんだろ?会長となんかあったのか。痴情のもつれとか。
そんな軽いノリで尋ねたらギロッと睨まれちゃったよぉ。会長良い人そうじゃん。何でそんなに嫌がるのやら。
途中から佐藤先生と俺だけの会話が続いた。おかげで佐藤先生に詳しくなってしまった。誕生日だとか、血液型とか、星座干支好きな食べ物嫌いな食べ物好みのタイプetc……。どうしてくれんだよ。
「さて、ここで私は戻らせてもらうよ」
「佐藤先生も一緒に来てくれるんじゃないんですか?」
「私も清掃活動に励まなければね。それにあの子から頼まれてたのは、連れてくる事だけでついてくる事じゃない」
「そうなんですか」
佐藤先生は自分の見た目に頓着は全然していないし、初対面では大雑把に見られてしまう事が多いのかもしれないが、その実内面はとても几帳面であり律儀だ。たまに悪ノリは酷くなるが、そこも先生の良い所と言えよう。
頼まれた事をきっかり守って去っていく佐藤先生に、手を振って別れを告げる。そして俺は目の前の扉に向き直った。
扉の上には、勿論『生徒会室』と書かれたプレートがある。普段立ち寄らない、高等部校舎の4階にこの生徒会室は存在している。上級生の集う4階の空気に少し緊張しながら、扉へと手を伸ばす。しかし、その前にカズミネが割り込んできた。
「え?え?どうしたカズミネ」
「………僕が開けるよ」
「真っ先にお前が会長の顔を拝みたいって事なのか」
「捻り潰すよ」
「ごめんなさい」
ガチトーンだ。これは触れちゃいけない奴だ。絶望と希望のパンドラボックスより質が悪いぞ。中身、破壊限定じゃんよ。
少しばかり殺気だった様子のカズミネは、ドアノブへを握る。そしてそのまま勢い良く扉を開け放った。バン!とかなりの音が響いた。しかし部屋の中央にいた女性はそれに驚いた様子もなく、こちらの姿を認めると微笑みを返してきた。
「一体何の用なんですか」
「私が用を持っているのは和嶺君じゃなくて、田中君なんですけどね」
「じゃあ言い直します。シュウヤに一体何の用なんですか」
「ふふふ、内緒です」
「シュウヤにも手を出すって言うのなら━━━━」
「いやですねー。そんな事はしませんよ。以前に話し合ったじゃないですか」
そう言って笑みを深める生徒会長。花咲くような笑顔はこちらの気分を明るくしてくれる不思議な力がある。こんな笑顔を毎日見られるカズミネはなんて幸せな奴なんだ。
しかし、二人の会話内容はさっぱりと理解出来ない。カズミネが「シュウヤに手を出すってんなら」って言ったのはわかった。出来れば止めずにガンガン手を出して欲しい。年上美人の会長ならいつでもウェルカムです。
カズミネの表情は未だに固いままだ。なんでこんな暗い表情をしているのかがわからない。この時のカズミネは警戒している顔だぞ。あんな可憐な会長に警戒する理由なんてあるのか?
「話し合いの内容通り、私は暫く大人しくしてますよ。だから田中君と話をしても良いですか?」
「………わかりました」
カズミネが渋々と言った風に俺の隣にまで下がってきた。会長が俺に向かってチョイチョイと手招きしてきたので、反対に俺は会長の前まで歩み寄る。会長席に座っている彼女から見上げられると、より一層美しさが際立つ。顔が赤くならないよう抑えるのに精一杯だ。顔には一切の感情を出すこと無く会話する。俺の得意技だ。
「それで俺に用事とは……?」
「田中君にお願いしたい事があるんです」
「お願い、ですか」
「はい、田中君。君には生徒会が新しく設立した委員会の委員長になって欲しいんです」
「………………………………………………は?」
何を言われているのかさっぱりわからなかった。会長は今なんと……?
そんな俺の反応を楽しむかのように、会長はクスクスと笑っていた。そして、もう一度、今度はゆっくりと『それ』を告げてくれる。
「君に、新たな委員会の委員長になって欲しいのです」
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