23 / 37
第二章 引きこもりの少女
23 決戦、死の牙 前編
しおりを挟む
「決戦開始といきますか!!」
開戦の矢が放たれる。
死の牙はそれを避けようともせずに近づいてくる。そして矢は見事、奴の核へと命中した。
が、ガキンッ!という音と共に弾き飛ばされていた。
「なんつー硬さだよ……」
ルル姉が引きつった笑い方をする。
全ての魔物達の生命源。魔力の【核】。これを破壊されると魔物達は、一瞬にして生命維持の機能が停止する。その為、核は魔物の弱点と言い換えてもいい。だが、その核には厄介な点もある。それは、その魔物が有する魔力量が多ければ多い程、核の硬度が上昇するのだ。
スライムやサカナンなどの低級魔物ぐらいなら、闘い方を知らなくても核を狙えば倒せる相手だ。しかしこれが上級の魔物になると話が変わってくる。素人同然の僕達が放つ攻撃は、おそらく核に傷一つ残す事なんて出来やしない。
大猪がようやっと広場の中へと足を踏み入れた。太陽の元にさらけ出されたその巨体は、恐怖を煽るには十分すぎる。
何も出来ずに逃げた数日前を思い出す。あの時から、劇的な成長はしていない。けれども、少しは変わっている。スキルを知ってハイスキルを学んだ。何も無抵抗でやられる事は絶対にしない。
僕は大きく息を吸う。
「すぅー………ハァッ!」
そして息を吐くと同時に死の牙めがけて突っ込んで行った。視界の端でルル姉が後方に下がったのを確認する。
今回の戦闘では、ルル姉が重要となる。死の牙の核の位置は、ヤツの目と目の間の少し上、僕が腕を伸ばしてギリギリ届くかもしれない額に埋まっている。だから、ルル姉の遠距離射撃が僕達の有する勝利への道筋だ。
僕が正面から向かって行くとなると、速攻で薙ぎ倒されるだろう。だから僕は今回、囮役だ。大猪の注意がルル姉の方へ行かないように、必死にこちらへ注意を向ける。
正直とても危険な役割だ。でも僕は止めない。
僕が走り出しても【危機予知】は、まだ発動していない。なら、この行動は間違ってないって事だ!
死の牙の前足をすれ違いざまに斬りつける。グッ、と反発してくる肉の感触。短剣が弾き飛ばされそうになるが、僕も力を込めて思い切り振り抜く。
「グゥアアアア!!」
ズパッと鮮血が飛び散る。大猪が堪らず悲鳴を上げた。
僕は攻撃の手を休める事なく、何度も何度も大猪の体に新たな傷跡を創っていく。その度に血が舞い、辺りを赤く染め上げていく。
死の牙がこちらを向いて、数歩下がった。
「ルル姉今どこ!!」
「安心しろ!こっちだ!!」
ルル姉の声は大猪の後方から聞こえた。なら大丈夫だろう。僕はその思考と共に大きく横っ飛びする。
僕が先程まで立っていた場所を抉る、弾丸の如き巨体が通り過ぎていく。大猪は突っ込んで行ったその先の木々を数本破壊してピタリと止まった。
僕は考えていた事が間違っていない事に安堵の溜息をつく。死の牙は、やっぱり見た目通りで猪なのだ。あの巨体に惑わされがちだが、普通の猪と何ら変わりはない。ただ真っ直ぐ突っ込むだけの愚直な弾丸だ。
死の牙が、ゆっくりとこちらを振り向く。その額に再びガキン!と矢が放たれていた。
大猪が矢の飛んできた方向を見ようとする前に僕がその反対側へと周り、奴の体を斬りつける。たちまち大猪の注意は僕を向く。頭を大きく振るって、牙で薙ぎ倒そうとしてくるが、奴の後方に周って何度も斬りつける。それを幾度も繰り返していくと、死の牙からは明らかな苛立ちを感じられた。
大猪が僕めがけて牙を突き上げて来た。ギリギリで避けられる、そう思った時、矢が核へと再び直撃する。死の牙は矢の飛来してきた方へ視線を向ける。だから僕はまた注意を逸らす為に斬りつけた。
だが、死の牙の視線は動かない。自分の核を狙わんとする狙撃手に、その視線は注がれていた。
「………ちょっと待てよ」
僅かな焦りが僕を動かす。これまで以上の速度をもって、奴を斬りつける。まさかやめろそうはさせない。嫌な予感が僕の頭を埋め尽くす。
大猪が数歩下がる。突進攻撃だ。狙いは僕じゃなく、確実にルル姉だ。
「くっそ!!」
僕は短剣を巨体の横腹へと突き刺す。噴水の様に吹き出す鮮血。しかし奴はそれを気にも留めない。おそらく、脅威度が僕よりルル姉の方が高いと理解したのだろう。核を破壊しない限り、魔物は生命が止まる事がない。体を流れる血液はただの飾り、いくら流れようと生命の危険には至らない。
「こっちだ!こっちを向け!!」
何度も何度も短剣を突き刺す。しかし死の牙の狙いは変わらない。
僕は彼女のいる方向へと思い切り声を上げた。
「ルル姉ぇぇぇぇ!!!!避けろぉぉぉおお!!」
無慈悲な弾丸は、勇者を殺さんとする為にその身を放った。
開戦の矢が放たれる。
死の牙はそれを避けようともせずに近づいてくる。そして矢は見事、奴の核へと命中した。
が、ガキンッ!という音と共に弾き飛ばされていた。
「なんつー硬さだよ……」
ルル姉が引きつった笑い方をする。
全ての魔物達の生命源。魔力の【核】。これを破壊されると魔物達は、一瞬にして生命維持の機能が停止する。その為、核は魔物の弱点と言い換えてもいい。だが、その核には厄介な点もある。それは、その魔物が有する魔力量が多ければ多い程、核の硬度が上昇するのだ。
スライムやサカナンなどの低級魔物ぐらいなら、闘い方を知らなくても核を狙えば倒せる相手だ。しかしこれが上級の魔物になると話が変わってくる。素人同然の僕達が放つ攻撃は、おそらく核に傷一つ残す事なんて出来やしない。
大猪がようやっと広場の中へと足を踏み入れた。太陽の元にさらけ出されたその巨体は、恐怖を煽るには十分すぎる。
何も出来ずに逃げた数日前を思い出す。あの時から、劇的な成長はしていない。けれども、少しは変わっている。スキルを知ってハイスキルを学んだ。何も無抵抗でやられる事は絶対にしない。
僕は大きく息を吸う。
「すぅー………ハァッ!」
そして息を吐くと同時に死の牙めがけて突っ込んで行った。視界の端でルル姉が後方に下がったのを確認する。
今回の戦闘では、ルル姉が重要となる。死の牙の核の位置は、ヤツの目と目の間の少し上、僕が腕を伸ばしてギリギリ届くかもしれない額に埋まっている。だから、ルル姉の遠距離射撃が僕達の有する勝利への道筋だ。
僕が正面から向かって行くとなると、速攻で薙ぎ倒されるだろう。だから僕は今回、囮役だ。大猪の注意がルル姉の方へ行かないように、必死にこちらへ注意を向ける。
正直とても危険な役割だ。でも僕は止めない。
僕が走り出しても【危機予知】は、まだ発動していない。なら、この行動は間違ってないって事だ!
死の牙の前足をすれ違いざまに斬りつける。グッ、と反発してくる肉の感触。短剣が弾き飛ばされそうになるが、僕も力を込めて思い切り振り抜く。
「グゥアアアア!!」
ズパッと鮮血が飛び散る。大猪が堪らず悲鳴を上げた。
僕は攻撃の手を休める事なく、何度も何度も大猪の体に新たな傷跡を創っていく。その度に血が舞い、辺りを赤く染め上げていく。
死の牙がこちらを向いて、数歩下がった。
「ルル姉今どこ!!」
「安心しろ!こっちだ!!」
ルル姉の声は大猪の後方から聞こえた。なら大丈夫だろう。僕はその思考と共に大きく横っ飛びする。
僕が先程まで立っていた場所を抉る、弾丸の如き巨体が通り過ぎていく。大猪は突っ込んで行ったその先の木々を数本破壊してピタリと止まった。
僕は考えていた事が間違っていない事に安堵の溜息をつく。死の牙は、やっぱり見た目通りで猪なのだ。あの巨体に惑わされがちだが、普通の猪と何ら変わりはない。ただ真っ直ぐ突っ込むだけの愚直な弾丸だ。
死の牙が、ゆっくりとこちらを振り向く。その額に再びガキン!と矢が放たれていた。
大猪が矢の飛んできた方向を見ようとする前に僕がその反対側へと周り、奴の体を斬りつける。たちまち大猪の注意は僕を向く。頭を大きく振るって、牙で薙ぎ倒そうとしてくるが、奴の後方に周って何度も斬りつける。それを幾度も繰り返していくと、死の牙からは明らかな苛立ちを感じられた。
大猪が僕めがけて牙を突き上げて来た。ギリギリで避けられる、そう思った時、矢が核へと再び直撃する。死の牙は矢の飛来してきた方へ視線を向ける。だから僕はまた注意を逸らす為に斬りつけた。
だが、死の牙の視線は動かない。自分の核を狙わんとする狙撃手に、その視線は注がれていた。
「………ちょっと待てよ」
僅かな焦りが僕を動かす。これまで以上の速度をもって、奴を斬りつける。まさかやめろそうはさせない。嫌な予感が僕の頭を埋め尽くす。
大猪が数歩下がる。突進攻撃だ。狙いは僕じゃなく、確実にルル姉だ。
「くっそ!!」
僕は短剣を巨体の横腹へと突き刺す。噴水の様に吹き出す鮮血。しかし奴はそれを気にも留めない。おそらく、脅威度が僕よりルル姉の方が高いと理解したのだろう。核を破壊しない限り、魔物は生命が止まる事がない。体を流れる血液はただの飾り、いくら流れようと生命の危険には至らない。
「こっちだ!こっちを向け!!」
何度も何度も短剣を突き刺す。しかし死の牙の狙いは変わらない。
僕は彼女のいる方向へと思い切り声を上げた。
「ルル姉ぇぇぇぇ!!!!避けろぉぉぉおお!!」
無慈悲な弾丸は、勇者を殺さんとする為にその身を放った。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる