55 / 61
叶えられた想い1
しおりを挟む
リリアンナは母の夢を見ていた。
記憶の中の優しく美しい母は、光に包まれていい香りをさせていた。柔らかな母の胸に抱かれ、リリアンナは素直に甘える。
「お母様……いい匂い。ずっとこうしていたいです」
母の温もりに包まれ、リリアンナは少女に戻っていた。
「リリアンナ。いい子ね。あなたはお母様の誇りだわ」
髪を撫でてくれる手はとても優しく、自分の髪と母の髪の色が同じだということが、とても嬉しい。
「お母様も、私の誇りです」
「ふふ、ありがとう。リリアンナ。……あなたにもリオンにも、寂しい思いばかりさせてしまったわね」
「お家に戻って来るんですか?」
期待する少女に、リーズベットは困ったような表情で微笑む。
「お母様は……、まだ陛下をお守りしなければならないの」
顔を上げると、隣にウィリアが座っていた。
若い姿をしている彼は、とても美しい青年だ。同時にリリアンナは「誰かに似ている」と思った。
「リリアンナ、いつもお母様を独り占めしてしまってすまないな」
ウィリアが大きな手でリリアンナを撫で、その手を彼女は「知っている」と感じる。
「……いいえ。陛下はウィンドミドルの大切な王様ですもの。リリィは立派なレディですから、我慢できます」
言葉とは裏腹に、少女のリリアンナはギュウとリーズベットにしがみついている。
「ふふ、リリアンナは甘えん坊ね」
母リーズベットも、そういえば声が若い。
リリアンナがまだ物心ついた頃――二十代後半の姿をしている。
「あなたには沢山我慢させてしまったわね。三歳の時は、リオンが生まれてお姉ちゃんになって。甘えたい盛りの時に我慢して、聞き分けのいい子になってしまって……。こうやってお母様にたっぷり甘えるということ、ほとんどなかったものね」
「いいんです。リリィもいつまでも子供ではありませんから」
「リリアンナは頼もしいな。――のこともいつも守ってくれて、本当に感謝している」
ウィリアの言葉の一部が、どうも上手く聞こえなかった。
リリアンナは顔を上げ、『陛下』の顔をじっと見る。
「陛下? いま何て仰ったのですか?」
「――のこと、大事にしてくれているだろう? あの子もリリアンナを好いているじゃないか」
やはり、誰かの名前の部分だけよく聞こえない。
まるでその部分だけ、強い風がビュウッと吹いているようだった。
キョトンとしているリリアンナに、リーズベットが優しく微笑んでくる。
「あなたはいつだって――様のことを考えていたでしょう? そのためにお母様の真似をして騎士に混じって強くなって……。本当はお母様の意志など継がなくても、あなたが幸せに生きてくれれば、それで良かったのよ?」
母の手が、またリリアンナを甘やかす。
「私……そんな大切な人、いたかしら?」
リリアンナの幼い声に、ウィリアとリーズベットが笑う。
「忘れてしまったの? あなたは――様のことを忘れて、一人の女の子として生きていくの? お父様がいい縁談を探してくださったら、素直にその方の奥さんになれる?」
「私……は……」
ジリッと記憶の向こうが焼けつき、誰かの面影が揺れる。
「お母様は、あなたが幸せならどんな道を歩んでもいいの。『お母様がきっとこう望んでいるから』と、無理に自分を縛らなくていいのよ?」
「……お母様?」
「あなたはあなたの好きなように生きなさい。好きな人を自分で決めて、自分がしたいように行動すればいいわ。幸い、シアナ様もカダン様も、皆さんお優しいもの」
リーズベットとウィリア以外の人間の名前が出て、リリアンナはノロノロと思考を動かす。
「シアナ様……。カダン……様。……あぁ、陛下の……」
二人の名前が『誰』なのかを理解した時、そこに深く関わる『誰か』の存在が色濃くなり、またリリアンナの記憶が強く揺れる。
「あの方……、あの方……は」
「自分に素直になりなさい。リリアンナ」
フワリと母の気配が遠ざかり、優しい手が頭を撫でてゆく。
「――を頼むぞ、リリアンナ」
ウィリアの手も、最後にポンポンとあやすようにリリアンナを撫でていった。
「……だってあの方は、もう立派な王様になる方だわ」
ミルク色の空間の中、リリアンナは一人呟く。
自分の存在はもう要らないかもしれないと、何度思ったか分からない。気がつけば頼れる背中を見せるようになっていて、追いつこうと必死だった。
宮中の様々な声が気にならないように、『あの人』の隣に立っていて恥ずかしくないように、日々自分に厳しくしてきた。
「……そう。あの方は私の――」
スッとリリアンナの目から涙が零れ、ふっくらとした唇が喘ぐように開かれる。
「……でん、か」
スンと鼻で息を吸うと、夏の夕暮れの匂いがした。
大気が少し湿っていて、庭の木々の緑や庭園の花の香りが濃厚になる時期。
薄く目を開くと、よく見知った部屋に夕方の茜色が入り込んでいた。白い壁に木々の葉陰が映り、風に吹かれてチラチラと木漏れ日を動かしている。
「……何だい? リリィ」
また風が吹き込んで大好きな人の匂いを、リリアンナの鼻腔に届けた。
夢の中で撫でてくれたウィリアより少し大きい、無骨な手。それが毛布の上のリリアンナの手に重なり、優しく撫でてくる。
「……夢を、……見ていました。お母様と、陛下が出てくる優しい夢を」
言葉の最後は、喉が渇いていて少し声がかすれてしまった。
「水、飲めるか?」
「……はい」
リリアンナが起き上がろうとすると、彼が体を支えて手伝ってくれた。
久しぶりに彼――ディアルトの顔を見るような気がして、リリアンナは至近距離で彼をじっと見る。
「……ん?」
髪の毛は記憶にある通りの長さで、金色の目もそのまま。顔色も健康そうで、その輪郭も体つきもいつも通りだ。
「……良かった」
リリアンナがもたれかかれるように、ディアルトはクッションを集める。
安堵した様子のリリアンナの頭を撫で、彼はベッドサイドにあるデキャンタからグラスに水を注いだ。
「最近は暑さも和らいできていてね。時々秋の気配を感じる日もある」
「今……何月ですか?」
「八月の下旬だよ。君は三か月ほど眠っていた」
手にグラスを持たされると、いつもなら何も思わず持っていたそれがやけに重たく感じる。
縁に唇をつけ、静かに水を飲む。
久しぶりに口にした水は、やけに甘く感じた。
「……美味しい」
「こっちも味見するかい?」
リリアンナの手からグラスを取り、ディアルトは彼女に唇を重ねた。
水を飲んだばかりのしっとりと冷たい唇を味わい、何度もその感触を確かめるように味わう。
「……ん、……ん、ぅ」
いつもなら執拗に続けられるはずのキスは、リリアンナが緩く首を振っただけで終わってしまった。
「苦しかった?」
ベッドに座り覗き込んでくるディアルトを見て、リリアンナはかぶりを振りながら横を向く。その顔は、耳まで真っ赤になっていた。
「いえ……その。よく分からないのですが……、すごく。恥ずかしくて」
「寝ている間、俺が足りてなかったのかな?」
ディアルトの変わらない軽口に、リリアンナは思わず半眼になって彼を睨む。
「何ですか、その『足りてなかった』というのは」
「俺は毎日、君を見ていても君が足りなかった。目の前にいて触れられても、君が起きて俺を見て、いつものように叱ってくれないと物足りない」
「殿下は……被虐趣味でもあるのですか?」
ハァ、と溜め息をついて呆れるリリアンナを、ディアルトは嬉しそうに見つめる。
「こんな気持ちになるのは、君だけだよ」
コトンとグラスがベッドサイドに置かれる音がしたと思うと、リリアンナはまた抱き締められていた。
「リリィ。君の声が聞きたかった」
ぎゅう、と愛しい人を抱き締める腕に力が入り、ディアルトの声は熱く震える。
記憶の中の優しく美しい母は、光に包まれていい香りをさせていた。柔らかな母の胸に抱かれ、リリアンナは素直に甘える。
「お母様……いい匂い。ずっとこうしていたいです」
母の温もりに包まれ、リリアンナは少女に戻っていた。
「リリアンナ。いい子ね。あなたはお母様の誇りだわ」
髪を撫でてくれる手はとても優しく、自分の髪と母の髪の色が同じだということが、とても嬉しい。
「お母様も、私の誇りです」
「ふふ、ありがとう。リリアンナ。……あなたにもリオンにも、寂しい思いばかりさせてしまったわね」
「お家に戻って来るんですか?」
期待する少女に、リーズベットは困ったような表情で微笑む。
「お母様は……、まだ陛下をお守りしなければならないの」
顔を上げると、隣にウィリアが座っていた。
若い姿をしている彼は、とても美しい青年だ。同時にリリアンナは「誰かに似ている」と思った。
「リリアンナ、いつもお母様を独り占めしてしまってすまないな」
ウィリアが大きな手でリリアンナを撫で、その手を彼女は「知っている」と感じる。
「……いいえ。陛下はウィンドミドルの大切な王様ですもの。リリィは立派なレディですから、我慢できます」
言葉とは裏腹に、少女のリリアンナはギュウとリーズベットにしがみついている。
「ふふ、リリアンナは甘えん坊ね」
母リーズベットも、そういえば声が若い。
リリアンナがまだ物心ついた頃――二十代後半の姿をしている。
「あなたには沢山我慢させてしまったわね。三歳の時は、リオンが生まれてお姉ちゃんになって。甘えたい盛りの時に我慢して、聞き分けのいい子になってしまって……。こうやってお母様にたっぷり甘えるということ、ほとんどなかったものね」
「いいんです。リリィもいつまでも子供ではありませんから」
「リリアンナは頼もしいな。――のこともいつも守ってくれて、本当に感謝している」
ウィリアの言葉の一部が、どうも上手く聞こえなかった。
リリアンナは顔を上げ、『陛下』の顔をじっと見る。
「陛下? いま何て仰ったのですか?」
「――のこと、大事にしてくれているだろう? あの子もリリアンナを好いているじゃないか」
やはり、誰かの名前の部分だけよく聞こえない。
まるでその部分だけ、強い風がビュウッと吹いているようだった。
キョトンとしているリリアンナに、リーズベットが優しく微笑んでくる。
「あなたはいつだって――様のことを考えていたでしょう? そのためにお母様の真似をして騎士に混じって強くなって……。本当はお母様の意志など継がなくても、あなたが幸せに生きてくれれば、それで良かったのよ?」
母の手が、またリリアンナを甘やかす。
「私……そんな大切な人、いたかしら?」
リリアンナの幼い声に、ウィリアとリーズベットが笑う。
「忘れてしまったの? あなたは――様のことを忘れて、一人の女の子として生きていくの? お父様がいい縁談を探してくださったら、素直にその方の奥さんになれる?」
「私……は……」
ジリッと記憶の向こうが焼けつき、誰かの面影が揺れる。
「お母様は、あなたが幸せならどんな道を歩んでもいいの。『お母様がきっとこう望んでいるから』と、無理に自分を縛らなくていいのよ?」
「……お母様?」
「あなたはあなたの好きなように生きなさい。好きな人を自分で決めて、自分がしたいように行動すればいいわ。幸い、シアナ様もカダン様も、皆さんお優しいもの」
リーズベットとウィリア以外の人間の名前が出て、リリアンナはノロノロと思考を動かす。
「シアナ様……。カダン……様。……あぁ、陛下の……」
二人の名前が『誰』なのかを理解した時、そこに深く関わる『誰か』の存在が色濃くなり、またリリアンナの記憶が強く揺れる。
「あの方……、あの方……は」
「自分に素直になりなさい。リリアンナ」
フワリと母の気配が遠ざかり、優しい手が頭を撫でてゆく。
「――を頼むぞ、リリアンナ」
ウィリアの手も、最後にポンポンとあやすようにリリアンナを撫でていった。
「……だってあの方は、もう立派な王様になる方だわ」
ミルク色の空間の中、リリアンナは一人呟く。
自分の存在はもう要らないかもしれないと、何度思ったか分からない。気がつけば頼れる背中を見せるようになっていて、追いつこうと必死だった。
宮中の様々な声が気にならないように、『あの人』の隣に立っていて恥ずかしくないように、日々自分に厳しくしてきた。
「……そう。あの方は私の――」
スッとリリアンナの目から涙が零れ、ふっくらとした唇が喘ぐように開かれる。
「……でん、か」
スンと鼻で息を吸うと、夏の夕暮れの匂いがした。
大気が少し湿っていて、庭の木々の緑や庭園の花の香りが濃厚になる時期。
薄く目を開くと、よく見知った部屋に夕方の茜色が入り込んでいた。白い壁に木々の葉陰が映り、風に吹かれてチラチラと木漏れ日を動かしている。
「……何だい? リリィ」
また風が吹き込んで大好きな人の匂いを、リリアンナの鼻腔に届けた。
夢の中で撫でてくれたウィリアより少し大きい、無骨な手。それが毛布の上のリリアンナの手に重なり、優しく撫でてくる。
「……夢を、……見ていました。お母様と、陛下が出てくる優しい夢を」
言葉の最後は、喉が渇いていて少し声がかすれてしまった。
「水、飲めるか?」
「……はい」
リリアンナが起き上がろうとすると、彼が体を支えて手伝ってくれた。
久しぶりに彼――ディアルトの顔を見るような気がして、リリアンナは至近距離で彼をじっと見る。
「……ん?」
髪の毛は記憶にある通りの長さで、金色の目もそのまま。顔色も健康そうで、その輪郭も体つきもいつも通りだ。
「……良かった」
リリアンナがもたれかかれるように、ディアルトはクッションを集める。
安堵した様子のリリアンナの頭を撫で、彼はベッドサイドにあるデキャンタからグラスに水を注いだ。
「最近は暑さも和らいできていてね。時々秋の気配を感じる日もある」
「今……何月ですか?」
「八月の下旬だよ。君は三か月ほど眠っていた」
手にグラスを持たされると、いつもなら何も思わず持っていたそれがやけに重たく感じる。
縁に唇をつけ、静かに水を飲む。
久しぶりに口にした水は、やけに甘く感じた。
「……美味しい」
「こっちも味見するかい?」
リリアンナの手からグラスを取り、ディアルトは彼女に唇を重ねた。
水を飲んだばかりのしっとりと冷たい唇を味わい、何度もその感触を確かめるように味わう。
「……ん、……ん、ぅ」
いつもなら執拗に続けられるはずのキスは、リリアンナが緩く首を振っただけで終わってしまった。
「苦しかった?」
ベッドに座り覗き込んでくるディアルトを見て、リリアンナはかぶりを振りながら横を向く。その顔は、耳まで真っ赤になっていた。
「いえ……その。よく分からないのですが……、すごく。恥ずかしくて」
「寝ている間、俺が足りてなかったのかな?」
ディアルトの変わらない軽口に、リリアンナは思わず半眼になって彼を睨む。
「何ですか、その『足りてなかった』というのは」
「俺は毎日、君を見ていても君が足りなかった。目の前にいて触れられても、君が起きて俺を見て、いつものように叱ってくれないと物足りない」
「殿下は……被虐趣味でもあるのですか?」
ハァ、と溜め息をついて呆れるリリアンナを、ディアルトは嬉しそうに見つめる。
「こんな気持ちになるのは、君だけだよ」
コトンとグラスがベッドサイドに置かれる音がしたと思うと、リリアンナはまた抱き締められていた。
「リリィ。君の声が聞きたかった」
ぎゅう、と愛しい人を抱き締める腕に力が入り、ディアルトの声は熱く震える。
0
お気に入りに追加
241
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
領地経営で忙しい私に、第三王子が自由すぎる理由を教えてください
ねむたん
恋愛
領地経営に奔走する伯爵令嬢エリナ。毎日忙しく過ごす彼女の元に、突然ふらりと現れたのは、自由気ままな第三王子アレクシス。どうやら領地に興味を持ったらしいけれど、それを口実に毎日のように居座る彼に、エリナは振り回されっぱなし!
領地を守りたい令嬢と、なんとなく興味本位で動く王子。全く噛み合わない二人のやりとりは、笑いあり、すれ違いあり、ちょっぴりときめきも──?
くすっと気軽に読める貴族ラブコメディ!
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
子ども扱いしないでください! 幼女化しちゃった完璧淑女は、騎士団長に甘やかされる
佐崎咲
恋愛
旧題:完璧すぎる君は一人でも生きていけると婚約破棄されたけど、騎士団長が即日プロポーズに来た上に甘やかしてきます
「君は完璧だ。一人でも生きていける。でも、彼女には私が必要なんだ」
なんだか聞いたことのある台詞だけれど、まさか現実で、しかも貴族社会に生きる人間からそれを聞くことになるとは思ってもいなかった。
彼の言う通り、私ロゼ=リンゼンハイムは『完璧な淑女』などと称されているけれど、それは努力のたまものであって、本質ではない。
私は幼い時に我儘な姉に追い出され、開き直って自然溢れる領地でそれはもうのびのびと、野を駆け山を駆け回っていたのだから。
それが、今度は跡継ぎ教育に嫌気がさした姉が自称病弱設定を作り出し、代わりに私がこの家を継ぐことになったから、王都に移って血反吐を吐くような努力を重ねたのだ。
そして今度は腐れ縁ともいうべき幼馴染みの友人に婚約者を横取りされたわけだけれど、それはまあ別にどうぞ差し上げますよというところなのだが。
ただ。
婚約破棄を告げられたばかりの私をその日訪ねた人が、もう一人いた。
切れ長の紺色の瞳に、長い金髪を一つに束ね、男女問わず目をひく美しい彼は、『微笑みの貴公子』と呼ばれる第二騎士団長のユアン=クラディス様。
彼はいつもとは違う、改まった口調で言った。
「どうか、私と結婚してください」
「お返事は急ぎません。先程リンゼンハイム伯爵には手紙を出させていただきました。許可が得られましたらまた改めさせていただきますが、まずはロゼ嬢に私の気持ちを知っておいていただきたかったのです」
私の戸惑いたるや、婚約破棄を告げられた時の比ではなかった。
彼のことはよく知っている。
彼もまた、私のことをよく知っている。
でも彼は『それ』が私だとは知らない。
まったくの別人に見えているはずなのだから。
なのに、何故私にプロポーズを?
しかもやたらと甘やかそうとしてくるんですけど。
どういうこと?
============
番外編は思いついたら追加していく予定です。
<レジーナ公式サイト番外編>
「番外編 相変わらずな日常」
レジーナ公式サイトにてアンケートに答えていただくと、書き下ろしweb番外編をお読みいただけます。
いつも攻め込まれてばかりのロゼが居眠り中のユアンを見つけ、この機会に……という話です。
※転載・複写はお断りいたします。
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる