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第二十三部・幸せへ 編
幸せな朝
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「そうだ、提案なんだけど、少しワシントンDCに滞在したあと、またNYに戻ろうか。マティアスと麻衣さんが日本からこっちに来るらしくて」
「本当!?」
香澄はガバッと起き上がり、目を輝かせる。
「行く!!」
その反応を見て、佑はクシャッと破顔した。
「相変わらず、麻衣さんが相手だと目の輝きが違うな」
「んふふ、ドックフードのCMみたいな言い方やめて」
香澄がクスクス笑うと、佑もつられて笑う。
「朝飯、行ける? それとも部屋でゆっくりとろうか?」
言われて、ようやく香澄は自分が双子たちと同じホテル、しかも同じフロアにあるスイートにいると思い出し、目をまん丸にしたあと赤面していった。
(き……っ!? 聞かれてた!? 昨晩!? 結構、声出しちゃった! 澪さんだって兄と兄嫁になる人が励んでる声なんて聞きたくないはず!)
香澄は両手で頭を抱えて、声なき声で「ああああああああ!!」と叫び、佑はそんな彼女を見て悩みの種に気づいたようだ。
「部屋は広いし、大丈夫じゃないかな。隣の部屋ではなかったし、隣だとしてもベッドルームから隣室のベッドルームまでは距離があるし、ショーンのホテルだから防音もしっかりしてる」
そう言われ、香澄は少しずつ落ち着きを取り戻していく。
「……だ、大丈夫かな?」
「だと思うけど。双子に下世話な事を言われても、適当にあしらっておけよ。そうやっていじられるのだって、初めてじゃないだろ?」
「……そうだけど……」
香澄は「はぁ……」と溜め息をつく。
「……それに澪さんも、大好きなお兄さんのそういう面って見たくないよね」
「確かに澪はブラコンだけど、香澄の事をとても気に入っているし、わきまえてくれていると思う。俺たちの仲を応援してくれているから、いま同じホテルにいるんだろ? これから結婚して子供も作っていくんだから、これぐらいの事で茶々を入れたりしないって」
「……うん」
自分も澪とリカルドの事をそれほど茶化してはいなかったので、彼女も相応の態度をとってくれると信じたい。
「……じゃあ、ビュッフェに行きたい。きっと皆さんも行ってるだろうし、報告がてら皆でご飯食べない?」
皆でと言われて佑は一瞬笑顔を固まらせたものの、すぐに「いいよ」と快諾した。
時刻は七時半で、ゆっくり支度をしても充分間に合う。
「いてて……」
起き上がろうとした香澄は、脚の付け根や腰に痛みを感じて小さくうめく。
「大丈夫か?」
「うん」
愛し合った翌朝、こうやって佑に心配されると、改めてありがたい事と思える。
(贅沢だなぁ……)
香澄はニマニマしながら起き上がり、いつの間にかベッド横のソファに畳んで置かれている衣類に向かって手を延ばす。
「バスローブ持ってこようか? ……っていうか、着替えがいるか。キーをくれたら部屋から服を持ってくるけど」
「うん。お願いします。……そ、その前に、おぱんつください!」
真っ赤になって言うと、佑は声もなく笑い崩れた。
佑に服を持ってきてもらった香澄は、フワッと柔らかなヒヤシンスブルーのニットに、マルチカラーのスリットスカートを穿き、スニーカーを履いて部屋を出た。
髪は以前に佑がパリで買ってくれたクリップで留め、可愛くて気に入っているので、つい彼の顔を見て「えへへ」と笑ってしまう。
佑は白いTシャツの上にライトグレーのカットソーを着て、黒いテーパードパンツを穿いている。
(……佑さんがカッコイイ……)
香澄はロビーを歩きながらニヤニヤし、チラッと横を向いて自分の婚約者を確認し、また少し俯き気味になってニヤニヤする。
あまりに幸せで、口角が上がったまま戻ってくれず、表情筋もおかしな事になりそうで顔面が大変だ。
やがて一階にあるレストランに着くと、佑はスタッフに朝食カードを見せ、英語で何か言う。
するとスタッフは『ご案内します』と言って、美しい庭を望む解放感溢れるレストランを先導していった。
「本当!?」
香澄はガバッと起き上がり、目を輝かせる。
「行く!!」
その反応を見て、佑はクシャッと破顔した。
「相変わらず、麻衣さんが相手だと目の輝きが違うな」
「んふふ、ドックフードのCMみたいな言い方やめて」
香澄がクスクス笑うと、佑もつられて笑う。
「朝飯、行ける? それとも部屋でゆっくりとろうか?」
言われて、ようやく香澄は自分が双子たちと同じホテル、しかも同じフロアにあるスイートにいると思い出し、目をまん丸にしたあと赤面していった。
(き……っ!? 聞かれてた!? 昨晩!? 結構、声出しちゃった! 澪さんだって兄と兄嫁になる人が励んでる声なんて聞きたくないはず!)
香澄は両手で頭を抱えて、声なき声で「ああああああああ!!」と叫び、佑はそんな彼女を見て悩みの種に気づいたようだ。
「部屋は広いし、大丈夫じゃないかな。隣の部屋ではなかったし、隣だとしてもベッドルームから隣室のベッドルームまでは距離があるし、ショーンのホテルだから防音もしっかりしてる」
そう言われ、香澄は少しずつ落ち着きを取り戻していく。
「……だ、大丈夫かな?」
「だと思うけど。双子に下世話な事を言われても、適当にあしらっておけよ。そうやっていじられるのだって、初めてじゃないだろ?」
「……そうだけど……」
香澄は「はぁ……」と溜め息をつく。
「……それに澪さんも、大好きなお兄さんのそういう面って見たくないよね」
「確かに澪はブラコンだけど、香澄の事をとても気に入っているし、わきまえてくれていると思う。俺たちの仲を応援してくれているから、いま同じホテルにいるんだろ? これから結婚して子供も作っていくんだから、これぐらいの事で茶々を入れたりしないって」
「……うん」
自分も澪とリカルドの事をそれほど茶化してはいなかったので、彼女も相応の態度をとってくれると信じたい。
「……じゃあ、ビュッフェに行きたい。きっと皆さんも行ってるだろうし、報告がてら皆でご飯食べない?」
皆でと言われて佑は一瞬笑顔を固まらせたものの、すぐに「いいよ」と快諾した。
時刻は七時半で、ゆっくり支度をしても充分間に合う。
「いてて……」
起き上がろうとした香澄は、脚の付け根や腰に痛みを感じて小さくうめく。
「大丈夫か?」
「うん」
愛し合った翌朝、こうやって佑に心配されると、改めてありがたい事と思える。
(贅沢だなぁ……)
香澄はニマニマしながら起き上がり、いつの間にかベッド横のソファに畳んで置かれている衣類に向かって手を延ばす。
「バスローブ持ってこようか? ……っていうか、着替えがいるか。キーをくれたら部屋から服を持ってくるけど」
「うん。お願いします。……そ、その前に、おぱんつください!」
真っ赤になって言うと、佑は声もなく笑い崩れた。
佑に服を持ってきてもらった香澄は、フワッと柔らかなヒヤシンスブルーのニットに、マルチカラーのスリットスカートを穿き、スニーカーを履いて部屋を出た。
髪は以前に佑がパリで買ってくれたクリップで留め、可愛くて気に入っているので、つい彼の顔を見て「えへへ」と笑ってしまう。
佑は白いTシャツの上にライトグレーのカットソーを着て、黒いテーパードパンツを穿いている。
(……佑さんがカッコイイ……)
香澄はロビーを歩きながらニヤニヤし、チラッと横を向いて自分の婚約者を確認し、また少し俯き気味になってニヤニヤする。
あまりに幸せで、口角が上がったまま戻ってくれず、表情筋もおかしな事になりそうで顔面が大変だ。
やがて一階にあるレストランに着くと、佑はスタッフに朝食カードを見せ、英語で何か言う。
するとスタッフは『ご案内します』と言って、美しい庭を望む解放感溢れるレストランを先導していった。
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