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第二十三部・幸せへ 編

ここにいる ☆

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「んっ、うぅうう……っ! あぁああっ、あーっ!」

 香澄は大きく体を震わせると、腰を柳のように反らして絶頂する。

 両手で思いきり佑を抱き締めて痙攣していると、耳元で彼が「は……っ」と色めいた吐息を漏らしたのが聞こえ、愛しさが募って堪らない。

「俺のものだ」

 佑が低い声で呟いたのを聞いた瞬間、香澄はキュンッと蜜壷を締め付けて絶頂の余韻に浸る。

 佑は香澄は紅潮した頬にかかった髪を避け、彼女の体の両側に手をつくと、愛しい女性を見つめて激しく穿ってくる。

「んっ、うぅうっ、う……っ、あぁああ……っ!」

 子宮口をドッドッと突き上げられるたびに、目の前でチカチカと光が瞬く。

(あぁ……、この感じ……)

 絶頂したというのにさらに攻められてつらいぐらいなのに、香澄は佑との交わりを思い出して懐かしさを覚えていた。

 ――気持ちいい……っ、

 ――気持ちいい……っ!

 全身で佑を迎え入れた香澄は、細胞の一つ一つが生まれ変わり、歓喜に満ちていくのを感じる。

 ――もう悲しまなくていいの?

 ――もう離れないって思ってもいい?

 佑に尋ねたいのに、口からは甘ったるい嬌声が迸るのみ。

 その代わりに香澄は大きな目からポロポロと涙を零し、閉じてしまいそうになる目で必死に佑を見つめた。

 視線が絡み合い、口に出さずとも互いの想いが伝わっていく。

 けれどあまたの困難を乗り越えた二人は、思っているだけでは伝わらないと分かっていた。だから――。

「「愛してる……っ」」

 図らずも、二人とも同じタイミングで同じ言葉を口にし、直後、幸せそうな顔で破顔する。

 佑は香澄をきつく抱き締め、自身の腕に閉じ込めたままガツガツと腰を振り立てた。

 香澄は佑という、自分を搦め捕る肉の檻に悦んで捕まえられ、しっかりとした腕を掴んで体をくねらせ、快楽を表現する。

 ――あぁ、ここにいる。

 ――佑さんがここにいて、私を愛してくれている。

 ――もう、一人で我慢して、怯えなくていいんだ。

 香澄の中で硬く凝っていたものが、ゆっくりと溶けていこうとしている。

 すぐにすべて溶ける事はないだろうが、これから佑と平穏な生活を送っていけるなら、きっといつか元の自分を取り戻せる。

 ――佑さんとなら、何回だってやり直せる。

 香澄は涙を流しながら佑に両手を差し伸べ、彼は微笑んでその手を恋人繋ぎで握ってくれた。

「あ……っ、――――ぁっ」

 佑はシーツの上に香澄の手を縫い止め、グッと腰を突き入れて胴震いする。

 そのあと、睨むような激しい目で香澄を見つめながら、ドクッドクッと肉棒を震わせて吐精していった。

「――――ぁ、……あぁ、…………あ……」

 香澄はヒクヒクと蜜壷を震わせ、力の入らない手脚でギュッと佑を抱き締める。

 彼女の肩口に顔を埋めていた佑は、緩慢な動作で自身の前髪を掻き上げ、気怠そうに溜め息をつく。

(……カッコイイ……)

 どの角度から見てもこの世で一番美しい男性を見て、香澄はポーッとしながら溜め息をつき、クタ……と脱力する。





 佑はそんな香澄の髪を優しく撫で、閉じられた睫毛の長さを観賞した。

 紅潮した頬に浮かんだ汗も、微かに開いた柔らかそうな唇の赤さも、何もかも愛おしい。

(取り戻したと思っていいのか?)

 いまだ自問してしまうぐらい、佑自身、今の幸せに自信を持てていない。

「……香澄……」

 彼は愛しい女性の名前を呟き、そっとキスをして唇を食むと、少し勢いを失った肉槍を抜いて溜め息をつく。

 本当はもっと抱きたい。

 何回も抱いて、抱き潰したい。

(でも今は、精神的な充足感のほうが強い。また愛し合いたいと思うなら、香澄の体調が整った時にゆっくり過ごせばいい)

 佑は「もう焦る事はない」と自分に言い聞かせ、香澄を優しく抱き締めた。

「安心して眠っていいよ。もう怖い事は起こらないから」

 ――俺が、絶対に起こさせないから。

 心の中で呟いた佑は洗面所に行き、タオルを濡らすと丁寧に香澄の体を清拭していった。
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