上 下
1,534 / 1,544
第二十三部・幸せへ 編

心も、体も、魂も

しおりを挟む
「今日は沢山いちゃいちゃして、眠るのが怖かったら一緒に夜ふかししよう。甘い物も食べていいよ」

「やだ、誘惑しないで」

 香澄はまだ涙を零したまま、クスクス笑う。

 佑はそんな彼女の髪をそっと耳に掛けて言った。

「先の事は分からないから、不安は多くあるだろう。俺もこの先何が起こるか分からないという意味では、不安がある。また香澄と離ればなれになったら……と思うと、恐ろしくて堪らない。……でも、打てる手はすべて打った。もう二度と香澄の手を放さないようにする。だから、信じてほしい」

 泣きそうな表情で微笑む佑を見て、香澄は涙を流しつつ不器用に笑った。

「信じてるよ。……いつでも信じてる」

 それから両手で佑の頬を包み、そっとキスをした。

「……怖いけど、進まないと。私、佑さんのお嫁さんになりたいの。御劔香澄になって、本当の意味で御劔家、クラウザー家の皆さんと親戚になって、皆に祝福されたい。……それで、佑さんの赤ちゃん、……産みたい」

 香澄は泣きながらクシャッと笑う。

「もうすでに、私の幸せは佑さんと共にある事って決まっちゃってるの。あなたのいない人生なんて考えられない。……っ、どんな事があってもいいの。また怖い事があっても構わない。~~~~っ、私を、側に置いてください……っ」

 どこよりも安全な場所にいるのに、香澄は小さく震えて泣きじゃくりながら、心からの告白をしていた。

 それを聞いた佑もヘーゼルの目から透明な涙を流し、微笑む。

「約束する。もう絶対に離れない。俺の心も、体も、魂も、すべてを香澄に捧げる」

 佑は拳でトントンと自身の胸板を叩き、それを香澄の胸元に押しつけた。

「……っ、約束、…………っ、だよ……っ」

 香澄はいまだ震えたまま、両手を佑の背中に回して彼をかき抱く。

「約束だ」

 佑は彼女の心に刻まれた深い傷ごと、香澄を一生愛すると誓いながら、少し細くなったように思える彼女の体を抱き締めた。





 誓いの抱擁を交わしたあと、佑は香澄を抱き上げてベッドルームに連れて行った。

 彼と愛し合うのは久しぶりな香澄は、緊張して身を小さくしていた。

(……そういえば最後……)

 佑が罪悪感から勃起できなかった事を思いだし、香澄は小さく唇を噛む。

(きっともう大丈夫。できなかったら、私が口とか手でするんだ)

 キッと気合いを入れた時にベッドに下ろされ、佑は彼女の顔を見て小さく笑う。

「そんな勇ましい顔をする事だったかな。久しぶりだから気合い入れてた?」

「あっ、そっ、そうじゃなくて……っ」

 変な顔を見られてしまったと、香澄は両手を顔の前で振って慌てる。

 佑はニットと中のカットソーを脱いでソファに掛けると、ベッドの上に上がった。

 香澄はドキドキしてその姿を見ていたけれど、思った事を口にする。

「……少し痩せた?」

 言われて佑は自分の上半身をペタペタ触った。

「……かな。ここのところバタバタしていて、ジムは旅先のホテルについている所を使う程度、家でも体重を量っていなかったけど、少し痩せたかもしれない」

「じゃあ、沢山食べないと。お付き合いするよ」

 そう言った香澄の言葉に破顔しつつ、佑は四つ這いになると彼女の顎をクイッと上げた。

「まず、香澄を食べさせて」

 目を見つめて優しく言われ、キューッと胸の奥から切なさと愛しさをこみ上げさせた香澄は、真っ赤になって頷いていた。

 佑は優しく香澄のカーディガンを脱がせ、ワンピースの背中のファスナーを下ろす。

(どうしよう……。外出用の下着ではあるけど、佑さんとエッチするなんて思ってなかったから……)

 つけている下着は服に合わせて白地に金糸で刺繍が入っている物で、綺麗なデザインではあるものの、久しぶりに佑に抱かれるいま最適な物か、混乱した頭で悩んでしまう。

「可愛い……」

 佑はセットのスリップを脱がせ、白い下着に包まれた婚約者をうっとりと見る。

 香澄は照れて両手で胸元を覆っているものの、どうしても気になって佑の股間をガン見していた。

「……ん? ……あぁ……」

 その視線に気づいた佑は、香澄が危惧している事に気づいて苦笑する。

「以前は情けない姿を見せてすまなかった。今日は大丈夫だから。……きっと」

「ご、ごめんなさい……っ、あからさまだったよね」

 香澄はパッと横を向き、失礼な事をしてしまったと反省する。

「いや、気になるよな。……でも安心して」

 そこまで言って佑はズボンを脱ぎ、下着姿になる。

 思わずボクサーパンツに包まれた大事な部分を見ると、モリッと硬くなっているのが分かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~

taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。 お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥ えっちめシーンの話には♥マークを付けています。 ミックスド★バスの第5弾です。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜

湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」 30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。 一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。 「ねぇ。酔っちゃったの……… ………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」 一夜のアバンチュールの筈だった。 運命とは時に残酷で甘い……… 羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。 覗いて行きませんか? ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ・R18の話には※をつけます。 ・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。 ・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。

【R18】エリートビジネスマンの裏の顔

白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます​─​──​。 私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。 同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが…… この生活に果たして救いはあるのか。 ※サムネにAI生成画像を使用しています

若妻シリーズ

笹椰かな
恋愛
とある事情により中年男性・飛龍(ひりゅう)の妻となった18歳の愛実(めぐみ)。 気の進まない結婚だったが、優しく接してくれる夫に愛実の気持ちは傾いていく。これはそんな二人の夜(または昼)の営みの話。 乳首責め/クリ責め/潮吹き ※表紙の作成/かんたん表紙メーカー様 ※使用画像/SplitShire様

【R18】鬼上司は今日も私に甘くない

白波瀬 綾音
恋愛
見た目も中身も怖くて、仕事にストイックなハイスペ上司、高濱暁人(35)の右腕として働く私、鈴木梨沙(28)。接待で終電を逃した日から秘密の関係が始まる───。 逆ハーレムのチームで刺激的な日々を過ごすオフィスラブストーリー 法人営業部メンバー 鈴木梨沙:28歳 高濱暁人:35歳、法人営業部部長 相良くん:25歳、唯一の年下くん 久野さん:29歳、一個上の優しい先輩 藍沢さん:31歳、チーフ 武田さん:36歳、課長 加藤さん:30歳、法人営業部事務

処理中です...