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第二十二部・岐路 編

双子のいじり

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(何だかんだ、凄いところに泊まるのはお決まりなんだな……)

 香澄は感心し、小さく溜め息をつく。

 今になって『高価なところはいいです』なんて遠慮はできない。

 双子の世話になると決めた時点で、彼らが決めたところに同行すべきだ。

 加えて、海外事情に詳しくない自分がでしゃばって、また危険な目にでも遭ったら双子に申し訳がつかない。

(お姫様扱いされても、大人しくしておこう)

 自分に言い聞かせて「うん」と頷いた香澄は、家族や麻衣へのお土産になりそうな物をスマホで検索し始めた。





 羽田を離陸したのが昼過ぎで、ジョン・F・ケネディ国際空港に着陸したのも、現地時間の昼過ぎだった。

 いつものように飛行機の側まで車が迎えに来て、簡易的にパスポートチェックをしたのち、車はNYシティに向かって走り出す。

 車は勿論クラウザー社の物で、大人数での移動なので七人乗りの車を出したそうだ。

 後部座席に三人が乗っているほか、ベルタと久住、運転手にサブの運転手として瀬尾が乗っていた。勿論、後続車もある。

 大きな車体なので後部座席に三人乗ってもゆったりとしていて、おまけに前のシートの後ろに液晶テレビがついていたり、足元からレッグレストが出てくる物凄い仕様だ。

(高いんだろうなぁ……)

 ぼんやりと思っていたが、正確な値段など分からない。

 車体そのものが三千万円近くし、その上カスタムしているので目玉が飛び出るような価格だと知るのは、もう少しあとの話だ。

 そんな香澄は双子に挟まれて座っているのだが、物珍しさで窓の外を気にしては、彼らにクスクス笑われている。

「市内まで一時間弱は掛かるから、ゆっくりしてなよ」

「はい」

 キョロキョロしていたのを笑われ、香澄は照れて俯く。

「カスミのアメリカのイメージってどんな感じ?」

「えーと……、ピザとポップコーン?」

 とりあえず即答すると、双子が手を打ち鳴らして笑った。

「食いもんだよ~、この子は……」

「それだけじゃないですよ。もう。……んーと、自由の女神と、ヤシの木と海岸とローラースケート……?」

 ぼんやりとしたイメージを口にすると、また双子が爆笑する。

「それ、西海岸だわ! 自由の女神はNYだけど」

「えっ? 西……」

 西海岸、東海岸という言葉に慣れていないので、香澄は頭の中で世界地図を思い浮かべ、指さし確認をして西を指す。

「あっ……。こっちは東だった。……あ、そっか……ロサンゼルスとかサンフランシスコ……」

 その土地の名前を口にした時、双子がチラッと香澄を見た。

 彼らの心配するような視線を受け、香澄は微笑む。

「大丈夫ですよ。……うん。もう、……大丈夫」

 香澄は双子を安心させるように言い、うんうんと何回も頷く。

 強烈な恐怖が刻まれた土地ではあるが、良い街だと思うので印象だけで嫌いたくない。イギリスと一緒だ。

(それに、覚えてるのは港とあのホテルだけだもんな……)

 ぼんやりと考えていた時、クラウスが急にクイズを出してきた。

「デデンッ、北アメリカ大陸に流れているミシシッピ川は、複数の州を跨いでいます。その州をミシシッピリバーカントリーと言いますが、マサチューセッツ州は含まれているでしょうか?」

「えっ? えっ? みひひっぴ……」

 うろたえた香澄は「ミシシッピ川」と言おうとして盛大に噛む。

「「ぼあっ」」

 その瞬間、双子がそれぞれ横を向いて盛大に噴きだした。

「ちょ……っ、もおお……っ!」

「カスミ、カスミ、マサチューセッツ州って言ってみ」

 涙目になったクラウスに言われ、香澄はいじられていると分かりつつも応じた。

 真剣な顔をしてスッと息を吸ったあと、気合いと同時に噛む。

「ましゃちゅーしぇっちゅしゅー!」

「「ぶははははははははは!!」」

 双子はパンッパンッと手を打ち鳴らして笑い、ダカダカと足踏みをし、さらに自身の太腿を叩いている。

 前の席で久住の肩も震えているように見える。

「もぉぉ……」

 恥ずかしくて堪らないが、笑ってくれるので半ば投げやりにOKとした。

 そのあと、車内で双子からアメリカあるあるや豆知識、彼らの体験談などを教えてもらいながら、NY市内までの道を進んだ。
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