【R-18】【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました

臣桜

文字の大きさ
上 下
1,478 / 1,559
第二十二部・岐路 編

違和感

しおりを挟む
 だが思いだそうとすると頭が酷く痛み、頭の中も靄が掛かったように白濁してしまう。

 諦めた佑は溜め息をつき、とりあえず美智瑠に返事をする。

「……確かに六年前は悪い事をした。付き合っていたのにろくに恋人を大事にせず、仕事に没頭した挙げ句、忠告を聞かずに体を壊した。美智瑠が呆れて離れていったのは仕方がない。俺が同じ立場ならそうする」

 当時の自分を肯定され、美智瑠は「そうでしょ?」と言わんばかりに微笑む。

「……あのあと、寂しさを紛らわせるために飼った犬も、何者かの悪意で殺されてしまった。……いや、もっと慎重に囲っていなかった俺の落ち度なのかな。……その落ち込みもあって、本当に反省した」

 ――だから、次に大切なものができたら、絶対失わないように囲い込むと決めた。

 心の中でもう一人の佑が呟き、彼は真顔になる。

(……誰に対してだ?)

『失わないようにしたいと思った』結果、〝何か〟をしたはずなのに、心の中にはポッカリと空洞がある。

 そこで彼の言葉が途切れたので、美智瑠は勘違いしたようだった。

「反省して……、私の事をどう思った?」

 思考にふけっていた佑は、彼女に話しかけられて、自分が誤解をさせるところで言葉を切った事に気づいた。

「……いや、……次に女性と付き合う時は同じ過ちを犯さないと誓った」

 望まない答えを聞き、美智瑠は目を微かに眇める。

「……赤松さんを愛してるの?」

 その問いに、佑は答えられなかった。

 彼女の存在はずっと胸の奥に引っ掛かっているものの、今は彼女の事をどう思っているか自分でもよく分からない。

 だからなんと言おうか考えていただけなのだが、美智瑠はまた自分の都合のいいように勘違いする。

「……ねぇ、やり直さない? 私、前よりもっと料理うまくなったし、お互い挫折を知った分、いい夫婦になれると思うの」

(……何言ってるんだこいつは)

 斜め上の事を言われ、佑は微かに瞠目して美智瑠を見る。

 彼女は佑のヘーゼルアイをうっとりとして見つめ、微笑んだ。

「佑の目、もう一回近い距離で見たかった。……本当に綺麗な目」

 褒められているのに、何とも言えない嫌悪感がこみ上げるのはどうしてだろうか。

「……美智瑠は俺の母や妹を嫌っていただろう。クラウザー家が大きすぎて、『そんなものの一員になれない』と言っていた。母や妹のストレートな物言いも好きではないと言っていたし、二人も美智瑠に快く思われていないのは分かっていた。そんな状態で俺と、俺の家族とうまくやっていける訳がない」

「やだ、昔の事じゃない。私だって成長したし、価値観も変わった。お義母さんたちも、みんな昔のままじゃないでしょ」

(……いや、うちの母と妹はいつまで経っても変わらないと思うが……)

 思わず佑は心の中でボソッと呟いた。

(……それに『人は大人になってから大きく変われない』というのが俺の持論だ。口先ではどれだけでも『自分は変わった』と言える人はいるがな)

 元恋人に対し、そう考えてしまうのは悲しい事だ。

 だが今、自分は美智瑠に対して違和感や微かな嫌悪感を得ている。

 今まで佑は、仕事でもプライベートの人付き合いでも、直感を大切にして生きてきた。

 昔は仕事が軌道に乗った時の興奮や期待、過労で正常に頭が働かなかった事で、そこそこ失敗を重ねてきた。

 その失敗の上に今の自分がいる。

 そして失敗する直前は、何かしら兆候や違和感があったものだ。

 NOZOMIにしても、初めて声を掛けられた時『献身的なタイプだな』と感じた。

 だが裏を返せば、彼女はこまごまと尽くす代わりに大きな愛を望んだ。

 繊細で不安になりやすく、頻繁に佑の気持ちを確かめなければ気が済まない人だった。

 佑が海外出張になり長い期間顔を合わせられなくなると、メッセージや電話攻撃、気持ちを測るかのように高額なプレゼントをねだった。

 挙げ句の果て、嫉妬してほしくて浮気した始末だ。

(あれを見抜けなかった俺が悪かったが、初めて食事をした時、言葉の端々に繊細な性格であるというサインは出ていた)

 あとになってから『あの時気づいていれば……』と散々後悔したのだ。

 その時と同じ違和感を、いま美智瑠に抱いている。

 昔は彼女と一緒にいて心地よさを感じていたのに、今は『どこか不愉快、早く帰ってくれないか』という思いを抱いている。

 ハッキリ言えればいいのだが、美智瑠に対する罪悪感があるからか、追い返せずにいる。

 だが、流されて受け入れるつもりはない。

「俺も変わったよ。過去の失敗を反省したから今の俺がいる」

「そうだね。反省したなら同じ過ちを繰り返さないと思うし、今度こそ……」

「俺から見て美智瑠は〝一度俺を捨てた女〟だ」

 佑の言葉を聞き、彼女は静かに息を吸って止めた。
しおりを挟む
感想 560

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない

若松だんご
恋愛
 ――俺には、将来を誓った相手がいるんです。  お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。  ――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。  ほげええっ!?  ちょっ、ちょっと待ってください、課長!  あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?  課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。  ――俺のところに来い。  オオカミ課長に、強引に同居させられた。  ――この方が、恋人らしいだろ。  うん。そうなんだけど。そうなんですけど。  気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。  イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。  (仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???  すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

処理中です...