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第二十一部・フェルナンド 編

そんな彼女に、何ができただろう ☆

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 真っ赤になって睨んでも、佑は愉悦の籠もった笑みを浮かべているだけだ。

「どんなに可愛い顔で睨んでも無駄だよ。俺にとっては香澄のどんな表情も、ご褒美にしかならないから」

 そう言った佑は、香澄に自身の肉芽を弄らせながら、ぬぷぅ……と蜜孔に指を差し入れた。

「ん……っ、う、……ぁあっ」

 香澄はビクッと体を跳ねさせ、本能的に彼の指を締め付ける。

 さらに佑の指がヌプヌプと前後し始めると、あまりに気持ち良くてボーッとしつつ、無意識に自分で肉芽を転がしてしまった。

 濡れそぼってヌルヌルになった小さな淫玉を、指の腹で優しく撫でていくと、この上なく気持ちよく頭の中がフワフワしてくる。

(気持ちいい……。見られてる……。恥ずかしい……)

 羞恥や悦楽、あらゆる感情が押し寄せてくると、香澄の内部を真っ白な愉悦が満たした。

「ぃ……っ、く……っ」

「達く?」

 佑に尋ねられ、香澄はコクコクと小さく頷いた。

 その直後、フワァッと大きな波が香澄を襲い、彼女は目を閉じて顔をあおのける。

 香澄は膣を引き絞って全身を震わせたあと、艶冶な吐息をついてゆっくり体を弛緩させていった。

(気持ちいい……)

 香澄がハァハァと呼吸を繰り返している間、佑は余裕のない表情で下着ごとズボンを脱ぎ、枕の下から避妊具を取りだすと、すでにそそり立っている自身の屹立に被せた。

「香澄……、大丈夫?」

 彼に尋ねられ、快楽の残滓に浸っていた香澄は、うっとりと微笑んで頷いた。

「大丈夫だよ。……ほしい」

 香澄は絶頂した心地よさに身を任せながら、両手を差しだして彼を求める。

「ん、分かった。ありがとう。……でも無理しないで」

(こんなに興奮しているのに、私の事を心配してくれる佑さん、優しい)

 そう思うと、キューッと愛おしさがこみ上げる。

「抱くよ」

 佑は香澄の唇に優しいキスをし、亀頭を蜜孔に押し当てたかと思うと、ゆっくり挿入してきた。

「ん……っ、あぁ……」

 香澄は微かな声を上げ、大きく息を吸う。

 ――その時、エイデンに犯された瞬間がフラッシュバックしてしまった。

「は……っ、は、ぁ……っ」

 ――乗り越えないと!

 香澄は目を見開き、自分を抱く相手が佑なのだと言い聞かせる。

 美しいヘーゼルの目の色も、柔らかな髪の色も、顔立ちも、体もすべて、愛しい婚約者の御劔佑その人のものだ。

 なのに鼓動がドッドッドッ……と速まり、不安が押し寄せて叫びそうになってしまう。

 ――大丈夫。

 ――大丈夫だよ。

 ――この人は大好きな人なの。だから大丈夫なんだよ。

 香澄は佑に動揺を悟らせないように、ギュッと彼に抱きつく。

 目を閉じて身を任せれば、逞しい一物が自分を貫き、優しい抽送が始ってどんどん気持ちよくなっていく。

 ――だから大丈夫。

 そう考えていた時――。





 ――大丈夫だ。

 香澄に挿入しようとした佑もまた、自分に言い聞かせていた。

 押し倒した香澄を見て脳裏に浮かんだのは、ロサンゼルスのホテルにいた彼女だ。

 頬を腫らし、体に傷を付け、激しい憎悪の籠もった目で自分を睨み付けてきた、誘拐された可哀想な彼女――。

 ――飛行機では挿入できた。

 香澄を救出したあと、彼女は不安に駆られた状態で自分を求めてきた。

 佑も混乱したまま香澄を宥め、望まれるままに〝御劔佑〟が愛しているのだと教えるために、彼女を抱いた。

 しかし、ずっと香澄と一緒にいるから分かってしまう。

 香澄は飛行機で熱を出し、眠っている間に酷くうなされていた。

 呼吸を荒げ、恐怖から逃れようと首を横に振り、何回も「佑さん」と自分の名を呼んでいた。

 そんな彼女に、自分は何ができただろう――。

『俺はここにいるよ。大丈夫だ。傷つけてごめんな』

 役立たずの自分は、傷付いた香澄の手を握り、声を掛けて謝るしかできない。

 ――そう、俺は彼女が眠っている時にしか謝れない。

 起きていても謝る事はできるが、香澄は決して佑を責めない。

 心に深い傷を受けた彼女は、痛みを一人で抱え込み、誰かのせいにせず、自分の中で解決しようとする。
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