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第十四部・東京日常 編

久しぶりの三人

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「私、これから女子会をするので、ここで大丈夫ですよ」

 ロビーに入った香澄は、久住と佐野に言う。
 だが彼らは首を横に振った。

「仕事ですから、邪魔にならない所で待機しています」

「そうですよね……」

 マリアが「彼らの仕事だから好きにやらせなさい」と言っていたのを思いだし、大人しく頷く。

 待ち合わせ時間より早めに来てしまったので、またラウンジカフェに入り、カフェオレを注文した。

 スマホの通知をチェックすると、麻衣からメッセージが入っていた。

(お)

『奇跡的に飛行機のチケットが取れた! ちょっと高かったけど、ホテル代が浮くから問題なし』

 予定では十二月二十七日に仕事納めになり、翌日に飛行機に乗るそうだ。

『本当にお世話になるからね? 香澄と東京観光デートしたいから、余計に日程取ったからね?』

 と念を押すメッセージも入っている。

『麻衣さんさえいいなら、何日滞在してもらっても構わないよ』

 佑はそう言っていたので、麻衣はそのつもりでいながら、まだ信じられないでいるのだろう。

 結局、麻衣とは二十八日から一月二日まで一緒にいられる事になる。

(楽しみだな)

 香澄は微笑み、『楽しみにしてるね!』とメッセージを送った。

 出がけに落ち込んでしまったが、楽しい事を考えて必死に気持ちを上げようとする。

 一通りアプリを見たあと、コネクターナウを開いて佑とのトークルームを読み返していた。

 佑からのメッセージは、香澄を想う気持ちで溢れている。
 健二のように投げやりだったり、香澄を軽んじる言葉など一つもない。

(ありがとう)

 心の中でお礼を言うと、フワッと気持ちが軽くなった。

(何もかも佑さんのお陰。彼は私を拾ってくれた、神様みたいな人)

 香澄はフォトアルバムの佑フォルダを開き、彼の写真をスワイプして見ていく。

(彼が私を好きでいてくれるなら、恋に落ちた理由なんてどうでもいい。佑さんの愛情が重たかろうが何だろうが、私だけが受け止められるんだ)

 落ち込んでいるからか、佑を愛しく思う気持ちが余計に募り、泣いてしまいそうだ。

「……会いたいな」

 今朝このホテルで別れたばかりなのに、もう恋しくなってしまう。

(恋をして、どんどん弱くなってしまいそう)

 そう思ったが小さく首を横に振り、アプリを閉じた。

 そのあとは電子書籍アプリを開き、途中まで読んでいた明るい内容の漫画を読み始めた。





 待ち合わせ時間になり、スマホが震える。

『赤松さん、ホテルに着いたよ!』

 通知が入ったのは、成瀬たちとのグループメッセージだ。

『ラウンジカフェにいるので、いま行きます』

 香澄はポンとメッセージを打ち返し、コートを手に立ち上がった。

 清算しようとウロウロしていると、またスタッフに「お会計は後日請求させて頂きます」と言われた。
 ツケ払いをした事がないので、事情は分かっていても気後れする。

 微妙な気まずさを覚えながら、香澄は「ありがとうございます」と会釈をしてロビーに向かった。





「こんばんは」

 カフェを出るとすぐ三人が分かり、香澄は明るく声を掛ける。

「やだー! 赤松さん久しぶり! 何か月ぶり? 元気そうで良かった!」

 成瀬が腕を組んできて、よしよしと頭を撫でてきた。

「そうそう。っていうか、より可愛さが増してない? 見てこの肌のツヤと透明感!」

 水木はしげしげと、香澄のツヤのある頬を感心して見る。

「合コンに赤松さんがいたら、男共は全員赤松さんを狙うんでない? っていうか、社長に瞬殺されるけど」

 そう言って荒野は楽しそうに笑った。
 そんな彼女に、水木が同意する。

「エグい! 笑顔で財力自慢して、男共のプライドをへし折ってほしい」

「いやぁ、社長なら自慢しなくても、スーツや腕時計で勝手に敵が倒れるんじゃない?」

 荒野の言葉のあと、成瀬が親指を立てていい顔で頷いた。

「それより顔面で一発KOじゃん」

 三人とも彼氏持ちで、合コンには行かない。

 結婚する予定の恋人がいるので、他の異性には興味がないので、香澄に嫉妬する事もない。
 カラッとした性格をしているので、香澄に同性として嫉妬する事もなく、可愛がってくれている。

 だからここまでポンポン言えるのだろう。

 彼女たちの会話を聞いて苦笑いしていた香澄は、レストランの予約時間を思いだした。
 そして荒野のコートの袖を、ちょんちょんと引っ張る。

「お、お食事しましょうか」

 食事の話をすると、三人はパァッと表情を明るくする。

「行こう! っていうかこのホテルでの飲食なら、全部社長のおごりなんでしょ? やった!」

「実は私たち、食べたいものがあって社長に予約してもらったんだけど、赤松さん、肉いける?」

「は、はい! お肉大好きです! ……って、予約?」

 きょとんとすると、三人は顔を見合わせてにんまり笑った。
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