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第二十一部・フェルナンド 編
佑さんって不思議
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そのあと、日本語で機内放送が流れた。
機長が挨拶し、天候や温度を知らせたあと、これから飛行機はシャルル・ド・ゴール空港に向かうと告げる。
「一旦、起きようか」
「うん……」
そういえばベッドにいるままで大丈夫なのだろうか? と思った時、佑が枕やクッションをポイポイと足元に投げる。
「ここにシートベルトがあるから」
ベッドのヘッドボードの脇にはシートベルトがあり、枕があったベッド中央にはバックルが埋められてあった。
どれだけイチャイチャしていて、これが佑の飛行機でも、離陸の時はきちんとシートベルトをしなければいけない。
少し冷静になった香澄は、ヘッドボードにもたれ掛かって座り、羽根布団で下半身や胸元を隠した。
シーツの上に何気なく置かれていた香澄の手に、佑の手が重なる。
「もう大丈夫だよ」
「……うん」
ベッドルームの窓はすべて閉じられ、外の景色は見えないが、エンジン音と振動とで飛行機が移動しているのが分かる。
「……香澄」
「ん?」
名前を呼ばれ、彼女は隣に座っている佑を見る。
「世界には、まだまだ美しい所が沢山ある」
「? ……うん」
「イギリスも、アメリカも、どうかこれで嫌な印象を抱かないでほしい。とても素晴らしい場所があるし、きっと香澄も気に入ると思う。勿論、すぐに楽しめなんて言わない。ただ、香澄にこれ以上世界を怖く思ってほしくないんだ」
佑の言いたい事を察し、香澄は笑みを零した。
「大丈夫だよ。子供じゃないもん」
笑いながらも、彼がただ過保護に接するだけでなく、香澄の未来や視野が狭くならないように、きちんと気遣ってくれている事に感謝した。
「佑さんって不思議」
「ん?」
「……私の事になると、視野が狭くなって頭が悪くなる事もあるのに、基本的に物事を長期的に見られて、視野もとても広いもん。ニセコではルカさんを殴ったのに、すぐ仲良くなっちゃうところとか、うまく言えないけど心を開いていて素敵だなと思う」
「そうか?」
ニセコでの事を話した時、佑は少し微妙な顔になったが、微笑するとポンポンと香澄の頭を撫でてくる。
「あのね、怒らないでほしいんだけど、やっぱり佑さんってお父さんみたい」
「んん」
思わず佑が咳払いをする。
「ふふ。おちょくってるとか悪い意味じゃなくて、異性として見ている上で、お父さん属性があるというか……。懐が広いな、って思って。恋人、婚約者として私を甘やかすだけじゃなくて、ちゃんと成長させようとしてくれている」
佑は指で彼女の手をスリ……と撫で、彼女はさらに続ける。
「お互い大人だから、普通ならそのままの相手と付き合っていくんだと思う。でも佑さんは私に色んな〝初めて〟を体験させてくれて、沢山の人に出会わせてくれるし、まだまだ知らない世界があるって教えてくれる。だから私、佑さんと一緒ならもっと変わっていけるって思えるの」
「香澄のためになってるなら良かった
彼女は三角座りをした膝に顔を伏せ、佑の手をギュッと握る。
(大丈夫。私には佑さんがいる)
自分に言い聞かせたあと、香澄はフハッと息を吐いて苦笑いした。
「……私、佑さんにもらってばっかりだな。プレゼントも、色んな体験も、愛情も。それに守ってもってばっかり」
「それでいいんだよ。代わりに俺は、世界一大好きな人を手に入れられた。香澄が笑顔でいてくれる事が、何より嬉しい。香澄は俺の大切な婚約者だから、ピンチになったら必ず駆けつける。ご両親から香澄の事を任されているし、この命に替えても守り切る」
「……秘書だから、社員手当てもあるかな?」
冗談めかして言うと、佑は横を向いて肩を震わせ笑う。
「……元気出てきた?」
ひとしきり笑った佑は、香澄の肩を抱いて尋ねてくる。
香澄は彼の肩に頭を預け、目を閉じた。
機長が挨拶し、天候や温度を知らせたあと、これから飛行機はシャルル・ド・ゴール空港に向かうと告げる。
「一旦、起きようか」
「うん……」
そういえばベッドにいるままで大丈夫なのだろうか? と思った時、佑が枕やクッションをポイポイと足元に投げる。
「ここにシートベルトがあるから」
ベッドのヘッドボードの脇にはシートベルトがあり、枕があったベッド中央にはバックルが埋められてあった。
どれだけイチャイチャしていて、これが佑の飛行機でも、離陸の時はきちんとシートベルトをしなければいけない。
少し冷静になった香澄は、ヘッドボードにもたれ掛かって座り、羽根布団で下半身や胸元を隠した。
シーツの上に何気なく置かれていた香澄の手に、佑の手が重なる。
「もう大丈夫だよ」
「……うん」
ベッドルームの窓はすべて閉じられ、外の景色は見えないが、エンジン音と振動とで飛行機が移動しているのが分かる。
「……香澄」
「ん?」
名前を呼ばれ、彼女は隣に座っている佑を見る。
「世界には、まだまだ美しい所が沢山ある」
「? ……うん」
「イギリスも、アメリカも、どうかこれで嫌な印象を抱かないでほしい。とても素晴らしい場所があるし、きっと香澄も気に入ると思う。勿論、すぐに楽しめなんて言わない。ただ、香澄にこれ以上世界を怖く思ってほしくないんだ」
佑の言いたい事を察し、香澄は笑みを零した。
「大丈夫だよ。子供じゃないもん」
笑いながらも、彼がただ過保護に接するだけでなく、香澄の未来や視野が狭くならないように、きちんと気遣ってくれている事に感謝した。
「佑さんって不思議」
「ん?」
「……私の事になると、視野が狭くなって頭が悪くなる事もあるのに、基本的に物事を長期的に見られて、視野もとても広いもん。ニセコではルカさんを殴ったのに、すぐ仲良くなっちゃうところとか、うまく言えないけど心を開いていて素敵だなと思う」
「そうか?」
ニセコでの事を話した時、佑は少し微妙な顔になったが、微笑するとポンポンと香澄の頭を撫でてくる。
「あのね、怒らないでほしいんだけど、やっぱり佑さんってお父さんみたい」
「んん」
思わず佑が咳払いをする。
「ふふ。おちょくってるとか悪い意味じゃなくて、異性として見ている上で、お父さん属性があるというか……。懐が広いな、って思って。恋人、婚約者として私を甘やかすだけじゃなくて、ちゃんと成長させようとしてくれている」
佑は指で彼女の手をスリ……と撫で、彼女はさらに続ける。
「お互い大人だから、普通ならそのままの相手と付き合っていくんだと思う。でも佑さんは私に色んな〝初めて〟を体験させてくれて、沢山の人に出会わせてくれるし、まだまだ知らない世界があるって教えてくれる。だから私、佑さんと一緒ならもっと変わっていけるって思えるの」
「香澄のためになってるなら良かった
彼女は三角座りをした膝に顔を伏せ、佑の手をギュッと握る。
(大丈夫。私には佑さんがいる)
自分に言い聞かせたあと、香澄はフハッと息を吐いて苦笑いした。
「……私、佑さんにもらってばっかりだな。プレゼントも、色んな体験も、愛情も。それに守ってもってばっかり」
「それでいいんだよ。代わりに俺は、世界一大好きな人を手に入れられた。香澄が笑顔でいてくれる事が、何より嬉しい。香澄は俺の大切な婚約者だから、ピンチになったら必ず駆けつける。ご両親から香澄の事を任されているし、この命に替えても守り切る」
「……秘書だから、社員手当てもあるかな?」
冗談めかして言うと、佑は横を向いて肩を震わせ笑う。
「……元気出てきた?」
ひとしきり笑った佑は、香澄の肩を抱いて尋ねてくる。
香澄は彼の肩に頭を預け、目を閉じた。
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