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第二十一部・フェルナンド 編
検問
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香澄の隣でフェルナンドはスマホを取りだして息をつき、誰かに電話を掛ける。
ほどなくして相手が電話に出て、彼が話し始めた。
『エイデン、もう指定のホテルにいるか?』
フェルナンドが話しているのは、香澄を買ったエイデンだ。
いよいよホテルに向かっていると痛感し、香澄の心拍数が上がる。
だというのに全身には冷や汗を掻き、顔からは血の気が引いている。
目はキョロキョロと左右を見て、少しでも隙があれば走行中の車から飛び降りようと考えていた。
そんな香澄の蛮勇を察したのか、ボディガードが彼女の腕をグッと掴んでくる。
――と、運転手が『ボス』と声を掛けてきた。
『検問をしています。どうしますか?』
フェルナンドはエイデンに『少し待っていてくれ』と告げ、運転手に答える。
『スペアのウィッグを出せ。茶髪の奴だ』
言われて、ボディガードがトランクルームを探る。
程なくして彼は明るい茶髪のウィッグを出し、香澄に『取り替えろ』と指示してきた。
『嫌です』
言った途端に、フェルナンドにニット帽をむしり取られた。
そして金髪ウィッグを取られ、ボディーガードに体を押さえられたまま、茶髪のウィッグを被せられる。
そのままウィッグを整えられてニット帽を被せられ、サングラスも掛け直させられる。
『片付けておけ』
言われてボディガードは金髪ウィッグをしまう。
『へたな事をしないよう、ナイフでも突きつけておけ』
フェルナンドが告げたあと、ボディガードはブーツの底に隠していたナイフを取りだし、香澄の脇腹に突きつけた。
「!!」
香澄はギクリとして身を強張らせ、とっさにフェルナンドのほうに身を寄せる。
が、左の脇腹がチクッとして、慌てて体を真っ直ぐにした。
「!?」
見ればいつの間に出したのか、フェルナンドの手にも折りたたみ式のナイフが握られている。
彼は脅しでなく、直接ニットワンピースの脇腹に切っ先を押しつけていた。
「いっ、痛……っ」
『こっちは少しぐらい血が出ても構わないんだ。怪我したくなかったら、大人しくしていろ!』
男に怒鳴られ、香澄はすくみ上がる。
結果、喉が干上がるほど緊張して、まっすぐ前を向くしかなかった。
香澄が大人しくなったのを確認し、フェルナンドは電話を続ける。
『予定通り十一時にはホテルに着く。金は確認した。私も君が本人だと確認した上で〝商品〟を渡す』
〝商品〟と言われ、香澄は唇を引き結ぶ。
『あらかじめ言ったように、条件として私が撮影する中、カスミ・アカマツを犯してもらう。君は用意している覆面を着用してくれ。スキンの使用はそちらに任せる。終わったあと、彼女は完全に君のものになり、取り引き成立だ』
その内容を聞いただけで、心臓がキュッと縮み上がった。
(逃げなきゃ……)
そう思うものの、被せられたケープの下で、脇腹にナイフが食い込むだけだった。
やがて警官が運転手にドアを開けるよう伝え、中に座っている者をチェックした。
『……運転手男性一人に、後部座席には男性一人に、ブラウンヘアの女性一人』
警官はチラッと香澄を見て、目的の人物か見定めているように思えた。
(今しかない!)
香澄は体を震わせながら、声を発するために息を吸った。
――が、
「!! ――――っつ…………」
フェルナンドの手が動き、服を突き破って香澄の柔らかな脇腹に、ナイフの切っ先が数ミリ食い込んだ。
本当に傷付けられた痛みとショックで、香澄はサングラスの下で目をまん丸にし、息を止める。
その間に警官は『行っていいですよ』と許可をだし、ドアを閉めた。
車が走りだすまで、誰も何も言わなかった。
が、突然後頭部をバシッと叩かれ、香澄は前につんのめる。
「っ~~~~……っ!」
もう、何度叩かれたか分からない。
容赦なく叩くので、脇腹の痛みも相まって、どこが痛いのか分からないほどだ。
ほどなくして相手が電話に出て、彼が話し始めた。
『エイデン、もう指定のホテルにいるか?』
フェルナンドが話しているのは、香澄を買ったエイデンだ。
いよいよホテルに向かっていると痛感し、香澄の心拍数が上がる。
だというのに全身には冷や汗を掻き、顔からは血の気が引いている。
目はキョロキョロと左右を見て、少しでも隙があれば走行中の車から飛び降りようと考えていた。
そんな香澄の蛮勇を察したのか、ボディガードが彼女の腕をグッと掴んでくる。
――と、運転手が『ボス』と声を掛けてきた。
『検問をしています。どうしますか?』
フェルナンドはエイデンに『少し待っていてくれ』と告げ、運転手に答える。
『スペアのウィッグを出せ。茶髪の奴だ』
言われて、ボディガードがトランクルームを探る。
程なくして彼は明るい茶髪のウィッグを出し、香澄に『取り替えろ』と指示してきた。
『嫌です』
言った途端に、フェルナンドにニット帽をむしり取られた。
そして金髪ウィッグを取られ、ボディーガードに体を押さえられたまま、茶髪のウィッグを被せられる。
そのままウィッグを整えられてニット帽を被せられ、サングラスも掛け直させられる。
『片付けておけ』
言われてボディガードは金髪ウィッグをしまう。
『へたな事をしないよう、ナイフでも突きつけておけ』
フェルナンドが告げたあと、ボディガードはブーツの底に隠していたナイフを取りだし、香澄の脇腹に突きつけた。
「!!」
香澄はギクリとして身を強張らせ、とっさにフェルナンドのほうに身を寄せる。
が、左の脇腹がチクッとして、慌てて体を真っ直ぐにした。
「!?」
見ればいつの間に出したのか、フェルナンドの手にも折りたたみ式のナイフが握られている。
彼は脅しでなく、直接ニットワンピースの脇腹に切っ先を押しつけていた。
「いっ、痛……っ」
『こっちは少しぐらい血が出ても構わないんだ。怪我したくなかったら、大人しくしていろ!』
男に怒鳴られ、香澄はすくみ上がる。
結果、喉が干上がるほど緊張して、まっすぐ前を向くしかなかった。
香澄が大人しくなったのを確認し、フェルナンドは電話を続ける。
『予定通り十一時にはホテルに着く。金は確認した。私も君が本人だと確認した上で〝商品〟を渡す』
〝商品〟と言われ、香澄は唇を引き結ぶ。
『あらかじめ言ったように、条件として私が撮影する中、カスミ・アカマツを犯してもらう。君は用意している覆面を着用してくれ。スキンの使用はそちらに任せる。終わったあと、彼女は完全に君のものになり、取り引き成立だ』
その内容を聞いただけで、心臓がキュッと縮み上がった。
(逃げなきゃ……)
そう思うものの、被せられたケープの下で、脇腹にナイフが食い込むだけだった。
やがて警官が運転手にドアを開けるよう伝え、中に座っている者をチェックした。
『……運転手男性一人に、後部座席には男性一人に、ブラウンヘアの女性一人』
警官はチラッと香澄を見て、目的の人物か見定めているように思えた。
(今しかない!)
香澄は体を震わせながら、声を発するために息を吸った。
――が、
「!! ――――っつ…………」
フェルナンドの手が動き、服を突き破って香澄の柔らかな脇腹に、ナイフの切っ先が数ミリ食い込んだ。
本当に傷付けられた痛みとショックで、香澄はサングラスの下で目をまん丸にし、息を止める。
その間に警官は『行っていいですよ』と許可をだし、ドアを閉めた。
車が走りだすまで、誰も何も言わなかった。
が、突然後頭部をバシッと叩かれ、香澄は前につんのめる。
「っ~~~~……っ!」
もう、何度叩かれたか分からない。
容赦なく叩くので、脇腹の痛みも相まって、どこが痛いのか分からないほどだ。
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